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2010年代後半から急速に動画コンテンツが注目されはじめましたが、これには3つの要因があります。
まずは、ネット環境が整備されたことです。これは自宅のネット環境だけでなく、飲食店やショッピングモールなどで無料Wi-Fiを整備している施設が急増したことも影響しています。こうした通信環境が整ったことで、データ量の多い動画コンテンツを、通信費や通信制限など気にせず視聴できるようになったのです。
さらに、年齢層問わず多くの人がスマホを所有するようになったことも、動画コンテンツが注目されはじめた要因です。スマホを持っていれば手軽に高画質で動画を視聴できるため、年齢・性別・職業問わず、多くの人が動画コンテンツを視聴するようになりました。以前は「動画を高画質で見るためには、テレビやパソコンが必要」と考える人が多くいましたが、現代では「スマホやタブレットがあれば、映画でもストレスなく見られる」と考える人が多いでしょう。
そして、動画を視聴・投稿できるプラットフォームが急増したことも、動画コンテンツが注目されるようになった要因といえます。特に、YouTube・TikTok・InstagramをはじめとしたSNSが若年層を中心に普及し、特別な技術がなくてもスマホ一台で動画コンテンツを投稿できるようになったため、膨大な数の動画コンテンツが生み出され続ける時代となりました。
以前は、テレビ・レコーダー・DVD・Blu-ray再生機器が必要だった映画・テレビ番組視聴も、今ではサブスクリプションサービスに加入していればいつでもどこでも視聴可能です。このように、多くの人がどんな動画コンテンツでも場所や時間を選ばず視聴できるようになったこと、つまりコンテンツの消費者が増加したことも、動画コンテンツが注目されるようになった大きな要因でしょう。
企業が動画コンテンツを活用するメリットは多くあります。特にあらゆる業界で共通しているメリットは、次の5つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
動画コンテンツを活用する最大のメリットは、短時間で多くの情報を提供できることです。文章にすると何枚もの紙に及ぶ情報量はユーザーからすると飽きてしまいます。
しかし、動画であれば同じ量の情報量を数秒から数分で届けられます。例えば、新商品を紙媒体で宣伝するときは、無駄な情報を省いたキャッチコピーで魅力を伝えるのが基本です。ただ、それだけでは具体的な商品の魅力までは伝えきれません。そこで動画コンテンツを使って宣伝すれば、商品の魅力をわかりやすく伝えることができます。
また、複雑な操作を要求するような商品であれば、説明を文章ではなく動画にすれば、ユーザーもすぐに理解することができるでしょう。現場への問い合わせを減らし、業務の効率化も行えます。文章やイラストでは不十分だった点を補えるのが動画コンテンツの魅力といえるでしょう。
動画コンテンツはユーザーに強いインパクトを与えることもメリットです。演出次第ではユーザーの脳裏に焼き付き、莫大な宣伝効果を発揮します。
よくある事例としては、動画内で使ったフレーズやキャッチコピーが流行することです。今どきの表現では「バズる」という感じでしょうか。特定の言葉が流行することで、今まで動画に興味を持ってくれなかった人にも宣伝効果を発揮します。想定していたターゲット以外にも宣伝効果があるのが、動画コンテンツの大きな強みです。
動画コンテンツはユーザーに行動を促すことも大きな魅力です。一般的に紙媒体の広告は、多くのユーザーが理解しないまま流し見しているといわれています。そのため、便利な商品も何が便利なのか伝わらず、購買行動につながらいのです。
しかし、動画の場合はあらゆる商品の使い心地などを実演して見せることができます。視覚的に何が便利なのか、何が魅力なのかわかりやすいため、ユーザーが購買行動に出やすいのです。ダイレクトに商品やサービスの魅力を伝えられることは、広告として大きなメリットといえます。
動画コンテンツはSNSで拡散されやすく、例えば、Twitterでのリツイートによって拡散された場合、企業の認知度を効率よく上げられます。また、認知度が向上すれば購買行動につながる可能性も高く、売上に悩む企業にとってはメリットが大きいといえるでしょう。
たとえ投稿当初に動画が拡散されなかったとしても、動画コンテンツをさまざまなかたちで活用していくことが可能です。ショートバージョンを制作するなど、SNSごとの特徴に合わせた形で再編集・再投稿すれば、より費用対効果を高められます。
SEO(検索エンジン最適化)において重要なのは、そのページがユーザーにとって有益かどうかです。ホームページなどに、ユーザーが知りたい情報に一致した動画を掲載しておけば、そのページの情報量が多いと考えられるためGoogleからの評価も上がり、上位表示されやすくなります。
キーワード数や文字数などを気にしてしまいがちですが、どれだけ検索エンジンのアップデートが行われても検索順位が落ちないページは、信頼できる有益なページだといえます。
ホームページなどに、ユーザーが知りたい情報に一致した動画を掲載しておけば、そのページの情報量が多いと考えられるためGoogleからの評価も上がり、上位表示されやすくなります。こうした点も、企業が動画コンテンツを活用するメリットのひとつです。
動画コンテンツは多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。具体的には次のとおりです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まず、動画コンテンツは制作に時間と費用がかかることがデメリットです。動画制作は、企画~構成の作成・実際の撮影~編集と多くの制作工程が必要となります。テキストや画像よりも完成まで時間がかかるため、迅速な情報発信には向いていません。例えば、緊急で社外に情報発信をしなければいけないとき、動画ではスピードに欠けて信用が落ちる可能性があります。無理に制作を急ぐと、内容が不完全で情報が正しく伝わらないこともあるでしょう。
また、動画は工程が多いだけに人件費もかかります。さらに、高性能なカメラや編集用のPCなど高価な機材も必要です。予算に余裕がなければ、継続して動画制作を行うことは難しいといえます。動画コンテンツを活用するためには、スケジュールと予算に余裕をもたせることが重要です。
動画コンテンツは、クオリティを維持しないとイメージダウンにつながることもデメリットです。手間と予算を削って低クオリティな動画を発表すると、お金がない企業という印象を与えてしまいます。
特に気をつけてほしいのは、自分ではクオリティが高いと思っていてもユーザーは同じように思ってくれないことです。昨今はアマチュアでもカンタンに動画編集が行える時代です。一般人のYouTuberでさえ凝った演出を当然のように行っています。つまり、ユーザーが求めているクオリティの水準は昔に比べてはるかに上がっているのです。動画コンテンツを制作するなら、妥協をせずに最高の水準を求める心構えが必要といえます。
動画は情報量が多いメリットある一方で、チェックを怠ると炎上するリスクがあります。表現や演出が不適切だったりすると、瞬く間に批判の対象となります。ときには企業イメージに傷がつき、場合によっては業績が悪化するほどの影響を及ぼすことさえあります。
特に問題なのは、入念なチェックを行っても炎上するリスクが消せない点です。昨今は価値観が多様化しており、思わぬ方面から批判を浴びることもあります。また、動画コンテンツを一度ネット上に公開してしまうと、完全に消すことができないことも忘れてはいけません。ネット上では自分たちが動画を削除しても、一般ユーザーにデータを保存されていることがあります。
もし、公開した動画コンテンツが炎上した場合、収拾をつけるのは容易ではないことを覚えておきましょう。
動画コンテンツを活用するメリット・デメリットを踏まえたうえで、どうすれば上手く活用していけるのでしょうか。ここでは具体的な活用するポイントを解説していきます。
まず、何のために動画コンテンツを作り、どういった成果を期待するのかをハッキリさせましょう。なんとなく流行っているからと動画制作を行っても、企業として大きなメリットは得られません。できれば、作る動画一つひとつに目的を定めてください。
例えば「新商品の売り上げをアップさせたい」「自社への就職希望者を増やしたい」などの目的を設定することで、動画の企画もスムーズに仕上がりアイデアが無数に生まれます。闇雲に作るよりもコンセプトが固まり、自然と動画のクオリティもアップするはずです。動画コンテンツを活用するなら、事前の計画をしっかりと練って行いましょう。
次に、動画のターゲットを明確にしましょう。見込み顧客の年齢層・性別・ライフスタイルなどを分析し、動画の企画や雰囲気に反映させるためです。
もし、10代を中心とした若者向けに動画を作るのなら明るい雰囲気にして、ビジネスをテーマにするなら落ち着いた雰囲気にしましょう。そうすることで動画の方向性を定めることができます。動画に自社の社員を起用するなら、ターゲットに近い年齢の社員を起用するといったこともできるでしょう。動画コンテンツは流行りの一環として行うのではなく、立派な広報戦略の1つとして考えることが重要です。
ターゲットが知りたいこと、つまり「顧客ニーズ」を考えて動画の構成をしないと、誰にとっても有益な動画になりません。ターゲットが知りたい情報を書き出し、その情報をしっかりと動画コンテンツに入れていくことで、最後まで視聴してもらえる動画を制作できるでしょう。
気をつけたいのは、自社の伝えたいことばかり詰め込んだり、勝手なイメージで顧客ニーズを考えたりしないことです。これでは顧客に対して理想の押しつけのような内容になってしまい、まったく響かない動画内容になってしまいますので注意しましょう。
最後に、動画制作で見落としがちなのがテロップをつけることです。テロップは派手な演出や企画よりも重要といっても過言ではありません。
しかし、テロップをつける手間を惜しむと軽く見られることが多々あります。もし、動画にテロップがなかった場合、情報が万人に伝わりません。世の中には音声が聞き取れない人も多くいます。情報を広く届けるつもりなら、どんな人にでも伝わる形を心がけなければいけません。
また、動画を見たユーザーが音声を出せないケースもあることを想定しましょう。公共交通機関内や仕事中に一息入れるときなど、音声を消して動画を見ている人は多くいます。そういったときにも、テロップがあるのとないでは視聴時間に差がつきます。動画を制作するときは、音がなくても伝わるように工夫してみてください。
プラットフォームごとに利用者の年齢層や属性が異なるため、ターゲットに合わせてプラットフォームを使い分ける必要があります。以下では代表的なプラットフォームごとの年齢層などをご紹介しますので、これから動画コンテンツを活用していきたい方は、参考にしてください。
YouTubeは、若年層から中高年層まで幅広いユーザーが利用している動画投稿プラットフォームです。通常の動画に加えて、ライブ配信や、短尺動画専用の『YouTube Shorts』などの機能もあり、用途によってさまざまな活用ができます。
TikTokは、10〜20代の若年層が多く利用している動画投稿プラットフォームです。長尺の動画も投稿できますが、もともと60秒以内の動画のみ投稿できるプラットフォームだったため、現在も短尺の動画が多く投稿されています。
Instagramは、画像や動画が投稿できるプラットフォームです。年齢層は若年層がメインですが、昨今はビジネス利用する企業も増加しており、中高年層の利用者も増加しています。もともと画像投稿に特化したプラットフォームだったこともあり、利用する場合は動画のみでなく、画像も投稿したほうがフォロワーを増やしやすいでしょう。
動画を投稿したら、必ず効果検証を行いましょう。効果検証をしなかった場合、特に効果のない投稿を惰性で続けることにもなりかねず、そうした活動が長期にわたるほど企業にとって悪影響になりかねません。
効果検証では、動画の視聴回数だけでなく、視聴者維持率(YouTubeでは測定可能)なども確認し、より最後まで見てもらいやすい動画が制作できるよう活用します。また、SNS運営も絡めている場合は、フォロワーの増加率やクリック率(動画を目にした人がクリックした率)なども調査し、より拡散されやすい方法を研究するのも必須です。
ここからは、実際に動画コンテンツを活用している例を紹介していきます。先駆者がどのような動画の活用の仕方をしているのかを見て、参考にしてみてください。
株式会社 明治のロングセラー商品「スーパーカップ」のCMです。何の変哲もないように思える本動画ですが、非常に多くの仕組みがほどこされています。
まず、冒頭は「受験生たちの会話」から始まりますが、途中から方言が強くなっていることに気付くでしょう。つまり「ストーリーを冒頭で手短に把握させた後、方言で注意を引く」といった手法を用いています。さらに、年号の語呂合わせを考えるシーンでは「18××年」から「いっぱい〜」といった語呂合わせを連発し、これによって「いっぱい食べられる=スーパーカップ」という製品イメージを想起させます。
登場人物から「スーパーカップ」という単語は一言も出ていませんが、動画やそのほかの発言から商品を想起させる手法により、とても印象に残る動画に仕上がっているのがポイントです。
箱根にある旅館「天悠」の館内案内動画です。
旅館というと、画像での紹介がメインでしたが、このような動画があると宿泊時の利用方法が明確になり、宿泊者も不安なく利用できるでしょう。また、動画冒頭の挨拶からも分かるように、この動画は旅館に訪れた方に視聴してもらうための案内用として制作されています。つまり、本来は宿泊者向けとして制作した動画を、宿泊を検討されている方向けにYouTubeへ投稿して活用しているのです。
この動画からも、動画コンテンツは一度制作すればさまざまなかたちで活用できるのが魅力ということが分かります。
最初に紹介するのは、動画を使った疑似的な会社見学です。公開しているのは、ホビーメーカーの最大手である株式会社バンダイです。
なかなか外出しづらい昨今の情勢を踏まえて、自社の社員による会社案内動画を制作しています。動画内では案内役の社員以外にもバンダイの社員が出演しており、職場の雰囲気や仕事の内容を語っています。これからバンダイに入社したいと考えている若者は、この動画を見ることによって入社後の働く姿をイメージできるはずです。
企業イメージをアップさせる動画コンテンツの活用例として、大変参考になるといえるでしょう。
次にサービスの概要を動画で説明している例です。
実際の製品動画や社員のコメントでサービスの利点をわかりやすく説明しています。これをタブレットなどで商談相手に見せれば、営業用の資料として活用できるでしょう。
動画資料はテキストや営業トーク以上に相手の印象に残るため、自然と売り上げもアップしていきます。同時にYouTubeなどに公開することで、不特定多数の見込み顧客の目に触れる機会が増やせるのも利点です。今後はあらゆる企業の営業活動が動画中心になっていくといっても過言ではありません。
次はサービスを実際に利用した顧客にインタビューをする動画です。
顧客の生の声を動画にして公開することで、ほかの顧客に客観的にサービスの魅力をアピールできます。第三者の視点が入ることで、サービスを使っても大丈夫という安心感が生まれます。
注意点としては、インタビュー場面は過度にカット編集をしすぎないことです。変に編集してしまうと、都合の悪いことはカットされているという不信感を与えます。インタビューする相手には、なるべく簡潔に感想を述べてくれるように依頼すると良いでしょう。
ちなみに、これから提供を開始する新サービスは自社の社員が実際に体験している様子を公開するのも1つの手です。サービスの内容によっては難しいかもしれませんが、社員が実際に行うことでサービスへの自信をアピールできます。
顧客からよくある質問を動画にして回答している例です。
みなさんもWebサービスなどを利用するうえで、サイト内によくある質問という項目を見かけたことがあるでしょう。大手総合電機メーカーの三菱電機の公式サイトでは、テキストベースだった回答を動画にして、疑問点を解消しやすくなるような取り組みをしています。
動画を活用して問い合わせの件数が減れば、現場の電話対応などの負担が減るでしょう。カスタマーサポートへ多くの人員を割いている業種では、大幅な人件費削減にもつながります。動画を使って顧客のサービスの理解度を深めることができれば、長期的なコスト削減にもつながっていくのです。
自社のマニュアルを動画にした例です。
この動画では、Dell製のWindows11パソコンを購入した方向けに、セットアップ方法を解説しています。
従来のマニュアルといえば紙のイメージが根強いですが、昨今はこうした製品マニュアルだけでなく、サービス業を中心に動画でのマニュアルが増えています。動画にすることで、仕事内容が伝わりやすくなり、研修へ割く時間を大きく減らすことが可能です。
仕事を学ぶ新人も動画でマニュアルを与えられることで、場所を選ばずに復習できるメリットがあります。紙のように印刷する手間が省けるのも業務効率として大きいでしょう。デメリットとしては、頻繁にマニュアルの書き換えがある場合、動画ではすぐに対応できないことです。マニュアルを動画化する場合は、変更の予定がない部分だけに絞っていくとよいでしょう。
企業が動画コンテンツを活用するメリットを解説しました。動画コンテンツはもはや企業の戦略において欠かせない存在です。もちろん動画にはデメリットもありますが、それ以上の成果を得ることができるでしょう。
ぜひ、みなさんも本記事で解説した内容を参考に動画コンテンツの制作に取り組んでみてください。動画で情報を公開することがどれだけ有効な手段なのか、実感できるはずです。
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