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タイムラプスは、時間の経過を短時間で表現する映像手法で、一定間隔で撮影した静止画をつなぎ合わせることで動画として再生されます。数分、数時間、あるいは数日かけて変化する被写体を、わずか数秒〜数十秒で見せることができるため、雲の動きや街の風景の変化、建築現場の進行などを印象的に伝えたい場面で活用されます。
現在では、専用機材を使わなくてもスマートフォンやアクションカメラなどで簡単に撮影できるようになっており、企業のPRやSNS動画、Vlogなどにも活用されています。
タイムラプスとよく混同されがちな「早送り動画」には、撮影方法とデータ処理の面で明確な違いがあります。
早送り動画は、通常の動画(例:30fpsでリアルタイム撮影)をそのまま高速で再生する手法です。録画データ自体はすべてのフレームが連続的に収められており、後から再生スピードだけを変更する形で時間を短縮します。そのため、ファイルサイズは通常の動画と変わらず大きくなります。
一方、タイムラプス動画は「インターバル撮影」とも呼ばれ、数秒〜数分に1回といった間隔で静止画を連続撮影し、それらを1秒あたり数コマ(例:24fpsや30fps)でつなぎ合わせて動画化する手法です。撮影時点からフレーム数を間引くことで、記録する情報を圧縮しつつ、長時間の変化を短時間で見せられる特徴があります。
このように、タイムラプスは時間の経過そのものを圧縮する記録手法であり、早送りは時間の流れを再現したデータを単に速く再生する手法である点が大きな違いです。撮影方法・ファイル容量・視覚的効果のいずれにおいても、異なるアプローチの映像表現といえるでしょう。

タイムラプスは、自然の美しい移ろいや日常の工程、さらにはビジネスの現場まで、幅広いシーンで活用されています。視覚的なインパクトを与え、時間の流れを印象的に演出できるため、撮影の目的に応じた活用方法を知っておくことで、映像の表現力が大きく広がります。
自然現象の変化を美しく記録するのは、タイムラプスの最も基本的な用途です。時間の経過による光の変化や空模様の移り変わりなど、人の目では捉えきれない動きをドラマチックに映像化できます。ここでは、タイムラプスが最も効果を発揮する自然・風景ジャンルの活用例をご紹介します。
時間の流れとともに星が移動する様子を捉えることで、幻想的でインパクトのある映像が完成します。特に星の軌道を捉える星景タイムラプスは、初心者にも人気の高い表現方法です。
太陽の位置とともに変化する空の色や景色の明暗が、美しいグラデーションとして収められます。静かな動きの中にドラマ性が生まれるため、旅の記録や風景コンテンツに最適です。
雲の形や動きがダイナミックに変化する様子は、タイムラプスならではの魅力を感じさせます。ビル群の背景に浮かぶ雲や山並みを越えて流れる雲など、様々な構図で撮影が可能です。
タイムラプスは自然風景だけでなく、日常的な記録やビジネスシーンでも活用されています。作業の流れを分かりやすく見せたいときや、商品・ブランドの魅力を伝えるときに、時間の凝縮という特性が有効に働きます。ここでは、実用性の高い応用シーンを紹介します。
レシピ動画やDIYの作業工程などをテンポよく見せることで、視聴者に分かりやすく伝えることができます。調理の進行やクラフトの手順を簡潔に映せるため、SNSでの共有にも適しています。
長期間かかる工事や改装の全体像を短時間で振り返ることができ、クライアントへの報告やプロモーションにも活用されます。作業の進捗が一目でわかるため、企業の実績紹介にも効果的です。
展示会やライブイベントの準備・片付けといった裏側を記録することで、ドキュメント性とエンタメ性を両立できます。舞台設営やブース設計の工程なども映像化すれば、次回以降の記録資料としても活用できます。
製品の組み立て過程や使用シーンをタイムラプスで流れがわかるため、製品の使い方や雰囲気を直感的に理解してもらいやすくなります短尺で多くの情報を伝えられるため、広告動画との相性も抜群です。

タイムラプスは「ただの記録映像」を「魅せる映像」に変える力を持っています。ここでは、タイムラプスならではの効果や活用メリットを紹介します。
普段見慣れた風景や作業工程も、タイムラプスで撮影することで非日常的なテンポ感が加わり、視覚的なインパクトが増します。特別な演出を加えなくても、“映える”動画に仕上がるため、SNS映えやブランディングにも最適です。
工事現場の変化や季節の移り変わり、イベントの準備過程など、通常は長時間を要する動きを数秒〜数分に圧縮できるのがタイムラプスの大きな利点です。時間軸の短縮によって、ストーリー性や伝達力が高まります。
タイムラプスは撮影の時点で「間引き」が行われているため、後から再生速度を変更したり編集でテンポを調整したりする必要がありません。撮影したままで完成度の高い映像になりやすく、初心者にも扱いやすいのが魅力です。

タイムラプスは操作がシンプルな一方で、仕上がりのクオリティは「事前準備」と「撮影環境」に大きく左右されます。初心者でもスムーズに撮影できるよう、必要な設定や道具をここで整理しておきましょう。
タイムラプス撮影は、カメラやスマートフォンのモード設定から始まります。
適切な撮影間隔や設定を押さえることで、映像の滑らかさや演出効果が大きく変わります。ここではスマホとカメラそれぞれの設定方法と、撮影時に意識すべきポイントを解説します。
タイムラプス撮影の基本は、カメラやスマートフォンの撮影モードを「タイムラプス」に設定することから始まります。スマートフォンでは、標準カメラアプリに「タイムラプス」モードが搭載されている場合が多く、ワンタップで切り替え可能です。見当たらない場合は、お使いの機種が非対応の可能性もあるため、公式情報を確認しましょう。
一眼レフやミラーレスカメラでは、メニュー内の「インターバル撮影」や「タイムラプス動画」機能を選択します。撮影間隔や撮影時間、撮影コマ数などを手動で細かく設定することができ、より高度な表現も可能になります。
タイムラプスでは「どれだけの時間を、どのくらいのスピードで見せたいか」によって設定を調整します。代表的な目安は以下の通りです:
撮影間隔を狭くすると滑らかに、広くするとダイナミックな動きになります。目的に応じてバランスを見極めましょう。

タイムラプスを安定して撮影するには、機材の準備が不可欠です。
映像のクオリティを保つための基本アイテムや、屋外撮影でも安心して運用できるための備えを紹介します。初心者でも揃えやすい道具ばかりなので、事前に確認しておきましょう。
タイムラプスでは長時間にわたり同じ画角を保つ必要があるため、カメラの固定が必須です。三脚はブレを防ぎ、安定した映像を撮影するうえで欠かせません。アングルにこだわりたい場合は、上下・左右の調整がしやすい雲台付きの三脚が便利です。
また、料理・工作・イラスト制作など、真上から撮影したい場合にはアームスタンドの導入がおすすめです。スマートフォンを天井にテープで貼るなどの方法もありますが、安全性や画角の自由度を考えると、しっかりしたスタンドの使用が望ましいでしょう。
タイムラプス撮影は長時間にわたるため、バッテリー切れは最大のリスクです。とくにスマートフォンやミラーレスカメラは、カメラ起動中の電力消費が大きく、夜間や寒冷地ではバッテリーの消耗も早まります。
予備バッテリーやモバイルバッテリーを必ず用意し、撮影中に電源が落ちないよう備えましょう。屋外での撮影時は、あらかじめ満充電にした上で、撮影ポイントに電源が確保できるかも確認しておくと安心です。

タイムラプス撮影を魅力的に仕上げるためには、撮影時と編集時の両方に工夫が求められます。ちょっとした意識の違いが、作品の印象を大きく左右するため、以下のポイントを意識してみましょう。
長時間撮影するタイムラプスでは、わずかな揺れも映像の品質を損ねます。三脚やアームスタンドなどでしっかりと固定し、風のある場所では重しを使うなどの対策も有効です。
自然光の変化を捉えるなら朝夕が狙い目です。人通りのある場所で撮る場合は、時間帯をずらすことで不要な映り込みを防げます。
画面の中心に動きの主役が来るように構図を意識しましょう。上下左右の余白を計算することで、後の編集作業でも画が使いやすくなります。
撮影後は、再生速度の調整や逆再生、通常動画との切り替えを加えると映像に変化をつけられます。視聴者の印象に残る映像に仕上げやすくなるため、場面に応じて活用しましょう。
縦型表示や短尺に対応するため、文字やテロップの位置には注意が必要です。構図の中央に主役が来るよう編集し、再生時間に応じたテンポも調整しましょう。フォーマットを投稿先に最適化することで、視聴維持率も向上します。

タイムラプスの基本を覚えたところで、実際にどういった動画が撮影できるのか見ていきましょう。ここではタイプラプスの使用例を紹介していきます。
タイムラプスでは定番の星空を映した動画です。動画では中央に富士山を置く演出をしています。動画が進むに連れて、富士山のバックに星の軌道が描かれ、幻想的な世界観が完成しています。定番の景色でも、制作者の一工夫で何倍にもクオリティが上がることがわかる事例です。
動画では、ずっと同じ場所から撮影するのではなく、構図はそのままに撮影場所を変えて違った印象になる工夫もされています。視聴者に飽きさせないための動画制作テクニックです。同じ景色でも工夫次第でバリエーション豊富な動画が撮影できるのが、タイプラプスの魅力といえるでしょう。
大都市である大阪の中心部をタイムラプスを使って撮影した動画です。同じ場所でも人や道路の移り変わりがわかりやすく記録されています。
注目すべきは冒頭0:08~0:15のシーン。先にも解説したように、空の色、雲の形状の変化が美しく描かれています。3:47~3:56のシーンでは、とくに雲の動きがダイナミックに撮影されており、都会の街並みに日差しがよく映えています。
単純に空をタイムラプスで撮影するのではなく、街並みと合わせることで画面の情報量を増やすことに成功した事例です。上記動画のような映像を撮影するには高台に行くなどの手間が必要ですが、タイムラプス初心者でも映像美を表現しやすいので挑戦してみる価値があるでしょう。
たこ焼きを作っている過程をタイムラプスで撮影した動画です。本来は長い時間、変わり映えのしないシーンが続きますが、タイムラプスによってテンポのよい仕上がりになっています。生地を返して丸く形作る様子は見ていて面白みがあります。動画後半では完成したたこ焼きをタイムラプスを使わずに撮影し、出来立ての雰囲気を強調しています。タイムラプスと通常の撮影を組み合わせた演出です。
とくにテロップなどの編集を加えなくても、見ごたえのある動画になるのはタイムラプスの特徴といえます。編集技術がなくても面白い動画を公開したいのであれば、まずは料理などの作業シーンを撮影してみると手軽に面白い動画が撮れるのでおすすめです。
油絵が完成するまでの過程をタイムラプスで撮影した動画です。何時間とかかっている作業をタイムラプスによって圧縮し、より短い時間で視聴者に届けています。真っ白なキャンバスに見る見る壮大な景色が出来上がっていくのは、見ていて圧巻です。 とくに動画後半の木の枝を1本1本描いていく様子は、まるで魔法のように感じられます。単なる作業動画でも、タイプラプスを使うだけで印象深いものになる証拠です。
撮影した動画が単調すぎて面白くないと感じる人は、試しにタイムラプスで撮影してみてはいかがでしょうか。
いち髪のCM「日本の四季」篇では、日本各地の美しい風景をタイムラプス映像で切り取っています。桜の開花、夏の入道雲、紅葉、雪景色といった季節の移ろいが、自然の息吹を感じさせるようなテンポで展開され、商品イメージと絶妙に調和しています。タイムラプスならではの時間圧縮により、日本の四季をわずか数十秒で濃密に伝えることができ、ブランドの世界観に深みを与える演出となっています。
岡山県が制作した観光プロモーション映像『タイムラプスおかやま』は、県内の豊かな自然・街並み・歴史的建造物をタイムラプスで表現した映像作品です。朝焼けの空、雲の動き、ライトアップされた城や夜景など、時間の経過とともに変化する美しい岡山の風景が次々と映し出され、視聴者に強い印象を与えます。タイムラプスによって“目に見える時間の流れ”が演出され、観光地としての魅力がダイナミックに伝わる事例です。

タイムラプス動画は、限られた時間の中で印象的なストーリーを伝えることができる、非常に効果的な映像手法です。自然の風景から日常の記録、企業のプロモーションまで、その活用範囲は広がり続けています。撮影方法や編集のコツを押さえることで、誰でも魅力的な映像を手軽に制作することが可能です。
ぜひ本記事を参考に、あなたもタイムラプスの表現力を活かした動画制作にチャレンジしてみてください。