目次

縦型動画とは、スマートフォンを縦向きに持ったままフルスクリーンで再生されることを前提とした動画フォーマットです。画面比率は9:16で、SNSや動画プラットフォームではTikTokやYouTubeショート、Instagramリールといった短尺コンテンツで広く採用されています。
従来の横型動画が16:9の比率でテレビやパソコン向けに最適化されてきたのに対し、縦型動画はスマートフォンでの視聴体験に特化しているのが特徴です。ユーザーが端末を回転させる必要がなく、手軽かつスムーズに映像を楽しめることから、モバイルファーストの時代において重要度が増しています。
最大の違いは表示形式です。横型動画(16:9)は横長のデバイスやディスプレイに合わせた映像で、風景や広い構図に適しています。一方で縦型動画(9:16)は縦持ちのスマートフォンにフィットするため、視聴者が端末を傾ける手間がなく、すぐに画面いっぱいに再生される利便性があります。
この視聴環境の違いは、動画の演出や伝え方にも影響を与え、縦型動画ならではの構図やテンポ感が求められるようになっています。

サイバーエージェントが2024年に実施した調査によると、国内の縦型動画広告市場は前年対比171.1%増の900億円に達し、動画広告市場全体に占める割合も12.4%に拡大しました(※)。
この急成長の背景には、以下の要因が挙げられます。
ユーザーの視聴行動の変化:スマートフォンの普及により、縦型動画コンテンツの視聴時間が増加しています(※)。
プラットフォームの対応:主要なSNSや動画配信サイトが縦型動画に最適化されたサービスを強化し、ユーザーと広告主双方の利用を促進しています(※)。
広告主の積極的な活用:大手広告主が縦型動画広告フォーマットへの出稿を進め、クリエイティブ制作の負荷軽減も相まって、縦型動画広告がプロモーションの主流の一つとして定着しています(※)。
これらの要因が相まって、縦型動画広告の市場は今後も拡大が予測されており、2028年には2,088億円に達すると見込まれています(※)。
※参考:サイバーエージェント、2024年「動画広告市場調査」発表

縦型動画はスマートフォンに最適化された動画形式であり、視聴者にとって自然な操作性と高い没入感を提供します。ここでは、縦型動画ならではの利点を整理します。
スマートフォンを縦に持ったまま視聴できるため、端末の持ち替えや画面回転の必要がありません。とくにスキマ時間や移動中の視聴において、ユーザーにとって負担の少ないスタイルが好まれています。
縦長の画面は視界を占める面積が大きく、フルスクリーン表示で映像に集中しやすくなります。人物や文字を大きく映せるため、表情や感情の訴求にも効果的です。短尺でも印象に残りやすい構成が可能です。
TikTok、Instagramリール、YouTubeショートなど主要なSNSは縦型動画を主軸にしており、自然な流れで投稿・拡散ができます。縦型に特化した広告フォーマットも普及し、企業のプロモーション手法としても有効です。

一方で縦型動画には、制作や演出面での制約もあります。以下では、注意すべき点や課題について解説します。
画角が狭くなるため、広大な風景や複数人を同時に収めるような構図は難しくなります。奥行きやスケール感を活かしたい映像表現には不向きな場合もあります。
従来の横型素材を縦型に流用するには画面比率(9:16)の調整が必要であり、再編集に手間がかかります。テロップや構図、被写体の配置なども一から見直す必要があるため、撮影・編集の段階で縦型を前提とした設計が求められます。

スマートフォン利用が前提となる現代の視聴環境では、縦型動画はSNSや動画配信プラットフォームと非常に相性が良く、投稿・拡散・収益化の手段として定着しつつあります。ここでは、とくに縦型動画との親和性が高い3つの主要プラットフォームについて解説します。
TikTokは縦型動画を主軸としたショートムービーアプリとして急成長し、縦型動画の普及を牽引した存在です。もともとは最大60秒の短尺動画が中心でしたが、現在は最大10分までの動画投稿が可能となっており、投稿スタイルの多様化が進んでいます。音楽・エフェクト・テキストなどを直感的に組み合わせられる仕様が、幅広いユーザーに支持されています。
アルゴリズムによるレコメンド機能が優れており、無名のアカウントでも縦型動画一本で一気にバズる可能性があります。若年層を中心に強い訴求力を持つプラットフォームです。
Instagramでは縦型動画の重要性が高まっており、「リール(Reels)」や「ストーリーズ」機能で完全に縦型フォーマットに対応しています。リールは従来90秒まででしたが、2025年1月以降は最大3分に拡張され、より深い内容のシェアが可能になりました。TikTokと並ぶショート動画の定番機能となっています。
フォロワーとの関係性が強いプラットフォームのため、ブランドや個人の世界観を伝える縦型動画に適しており、広告クリエイティブとしても活用されています。
YouTube Shortsは、YouTubeが展開する縦型・短尺動画専用の投稿機能で、最大60秒の動画をスマートフォンから手軽に投稿できます。YouTubeの巨大なユーザー基盤を活かし、既存のチャンネルと連携したコンテンツ展開が可能です。
2023年2月からはYouTubeパートナープログラム(YPP)にShortsの収益分配制度が導入され、縦型ショート動画が収益源として活用され始めています。長尺動画とのハイブリッド運用を行うクリエイターも増えています。

縦型動画は、スマートフォンの画面全体を使って視聴者にダイレクトに情報を届けることができるため、人物中心のコンテンツや生活に密着したテーマと特に相性が良いです。以下は縦型フォーマットでの訴求効果が高い代表的なコンテンツジャンルです。
顔のアップを中心としたメイク動画やスキンケアの紹介は、縦型動画に非常に適しています。スマートフォンを持ちながら鏡を見るような感覚で視聴できるため、視覚的なわかりやすさと親近感を演出できます。
全身を縦長に映すファッション系コンテンツも、縦型フォーマットとの親和性が高いです。立ち姿のまま服装全体が収まりやすく、視聴者がコーディネートのバランスを直感的に把握できます。
料理のクローズアップや一口ずつの食レポなども縦型動画に適しています。視聴者は、まるで隣に座って一緒に食べているような没入感を得ることができ、SNSでもシェアされやすいジャンルです。
Vlogのような日常の切り取りや、Q&A、雑談、ルーティン紹介なども縦型との相性が良好です。親密な距離感を感じさせ、ファンとの関係構築に貢献します。
一方で、広い視野や複数の要素を一度に伝える必要があるコンテンツは、縦型動画では効果が薄れてしまう場合があります。以下のようなジャンルでは、横型や別の表現手法のほうが適していることが多いです。
サッカーや野球など広いフィールドで行われるスポーツは、縦型では画角に収まりきらず、動きの把握がしづらくなります。また、ドローンなどで撮影された絶景映像も、横長のワイドな画面の方が臨場感を表現しやすくなります。
登場人物が多いドラマやトークイベント、大道具を使った演出が特徴の映像なども、縦型では画角が制限され、空間の広がりや構成の魅力を十分に伝えられません。会話のテンポやリアクションを多人数で追う場合は、横型が無難です。

縦型動画は、最初から縦長のフォーマットで撮影・編集するのが理想ですが、既存の横型動画を変換する方法や、モバイルアプリを活用して手軽に編集する方法も多く存在します。ここでは、編集方法の基本とおすすめのツールを紹介します。
横型動画を縦型に変換する場合、編集ソフトでアスペクト比を「9:16」に変更するのが基本です。動画を縦にトリミングしたり、中央の重要部分を切り出す作業が必要になります。
画面比率の変換後は、以下のようなポイントに注意して編集を進めると効果的です。
以下は、初心者から上級者まで使える縦型編集に最適なツールの例です。モバイルアプリとPCソフトの両方を紹介します。
スマートフォン向けの無料動画編集アプリ。縦型テンプレートが豊富で、TikTokやInstagramとの連携にも優れており、SNS運用者に最適です。直感的な操作でテキスト挿入・BGM・トランジションも簡単にできます。
シンプルながら高機能な編集ができるアプリ。PC版も用意されており、アスペクト比の変更や字幕の位置調整などもスムーズ。広告表示がない点も魅力。
プロフェッショナル向けの高機能編集ソフト。縦型動画テンプレートを活用すれば、広告やSNS用動画の制作にも対応可能。細かいエフェクトやカラーグレーディングを加える高度な編集も行えます。

縦型動画をSNSで効果的に拡散させるには、まず視聴者の目を引く「最初の1秒」に注力することが重要です。縦型動画はショート動画としてタイムラインで自動再生されるため、冒頭に強いビジュアルや短いキャッチコピーを配置することで、スクロールを止める効果が期待できます。
また、音声なしでも意味が伝わるよう、字幕やキーワードを要所に配置することもポイントです。SNSごとのユーザー属性やアルゴリズムを意識し、ハッシュタグや投稿時間を最適化することで、さらに拡散性が高まります。コメントを促すテロップや、共感を誘う構成も再生回数の増加につながります。
縦型動画では、左右の画角が狭いため、登場人物や情報要素を中央に寄せた構成が基本となります。また、テロップや字幕は縦画面に適したバランスで配置し、可読性を保つように調整しましょう。情報過多にならないよう、文字数は必要最低限に留めるのが理想です。
さらに、縦型はスマートフォンでの視聴を前提とするため、手ブレや画面の歪みが目立ちやすいという特性もあります。簡易的な撮影であっても、三脚やスタビライザーの使用、自然光の活用など、基本的なクオリティ管理を意識することで、視聴者の没入感を妨げない安定した動画に仕上げることができます。

スマートフォンでの視聴スタイルが主流となった現在、YouTubeショートは縦型動画の代表的なフォーマットとして広く浸透しています。TikTokなどのSNSに比べ、YouTubeは検索性や蓄積性に優れており、広告・収益化手段も多様なため、インフルエンサーや企業がコンテンツ戦略に組み込むケースが増えています。
ここでは、美容・グルメ・ファッションといった各ジャンルで、YouTubeショートを活用して縦型動画の魅力を最大限に引き出しているクリエイターの事例を紹介します。いずれも、縦型動画だからこそ伝わる臨場感・没入感・訴求力が活きた構成となっています。
サラさんは、実用的なメイク術やコスメレビューを軽快かつユーモラスに届ける人気クリエイター。縦型の構図で自分の顔をフレームいっぱいに映しながら、表情やメイクの変化をリアルに伝えています。ショート動画ならではのテンポの良さと編集技術で、視聴者に飽きさせず、試してみたくなるコスメ体験を提供します。縦型で顔まわりのディテールが伝わるため、訴求力と信頼感が格段に高まっています。
のすけさんは、ぼっちで食事を楽しむ等身大のライフスタイルを等身大で発信しています。縦型構図で一人の動作や表情にフォーカスし、視聴者が自分もそこにいるような距離感で共感できます。ショート形式によって冗長にならず、視聴者は気軽に「のぞき見」感覚でリアルな食生活を疑似体験できるのが強みです。
ゆりえさんは、低コストで高見えするコーディネート術を発信する人気クリエイターです。縦型動画では全身コーデをスムーズに見せられるため、ショートの尺でも視覚的に分かりやすく、コーデの変化やアイテムのポイントが伝わりやすくなっています。縦型動画であることで、アイテム紹介→着用イメージ→アドバイスの流れが自然に収まり、日常に活かせる情報が手軽に得られます。

縦型動画は、スマートフォン視聴を前提とした現代の動画フォーマットとして、今後ますます重要性が増していくと考えられます。コンテンツの特性に合わせて縦型・横型を使い分けることが求められる今、縦型動画の編集技術を身につけておくことは、動画制作者やマーケティング担当者にとって大きな武器となります。
プラットフォームやターゲットに応じた最適な形式で、視聴者に伝わる動画を届けていきましょう。
WEBでのお問い合わせはこちら