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「CG(コンピューターグラフィックス)はよく耳にするけれど、VFXってどう違うの?」と疑問に感じたことはありませんか。VFXとは“Visual Effects(ビジュアル・エフェクツ)”の略称で、日本語では「視覚効果」と訳されます。実在しない風景や、現実では撮影が困難なシーンを映像として表現するための技術です。
現在の映像制作では、3DCGで作成したデジタル素材を実写映像と合成する手法が主流です。これにより、実写とCGが組み合わさったリアルな映像表現が可能になります。撮影時には「グリーンバック」と呼ばれる緑の背景を用い、そこに俳優が立って演技を行います
その後、VFXアーティストたちがCGなどを重ね合わせ、よりリアリティのあるビジュアルに仕上げていきます。
VFXには多くの工程が含まれており、それぞれのパートに特化したクリエイターが存在します。それほどまでに、VFXは高度な専門性が求められる映像表現の分野です。
以下は、代表的な工程の一部です。
これらはあくまで一例にすぎません。VFXにはさらに多くの専門工程が存在し、それぞれに特化した企業やスタッフが分担して制作に携わります。そのため、VFXは個人が気軽に手を出せる領域ではなく、高度な知識と経験が求められる世界であることを理解しておくことが重要です。

「VFXって実際どこで使われているの?」と思う方もいるかもしれません。言葉の知名度はそれほど高くなくても、実は私たちが日常的に見ている映画やテレビ番組には、VFX技術が数多く使われています。現代の映像制作において、VFXはスケール感や視覚的なインパクトを与えるために欠かせない存在となっています。
とくに映画分野ではその活用が顕著です。たとえば『スター・ウォーズ』シリーズでは、ライトセーバーの模型を使って撮影した後、VFXによって剣先をレーザー状に発光させています。また『スパイダーマン』シリーズでは、宙を舞うような映像を実現するため、ワイヤーで吊るして撮影した素材からワイヤー部分をVFXで除去し、自然な浮遊感を演出しています。
このようにVFXは、映像に迫力ある演出を加えたり、現実では再現が難しい世界観を作り上げたりするための強力なツールとして、幅広いジャンルで使われています。

VFXに触れる中でよくある疑問が、「VFXとCGの違いは?」「SFXって何?」というものです。いずれも映像に関連する技術ですが、それぞれの役割や手法にははっきりとした違いがあります。
CGは「コンピューターグラフィックス」の略で、人物や背景、小道具まですべてをフルデジタルで描く技術です。一方、VFXは実写映像をもとに、その上に視覚的効果を加えて完成度を高める手法です。
現在では、VFXとCGの技術が組み合わされることが一般的になっており、CGで作った背景やキャラクターを実写映像と合成する作品が多く見られます。そのため両者の境界は年々あいまいになってきており、技術的にも相互に補完し合う関係にあります。
SFXは「Special Effects」の略で、爆発や煙、着ぐるみの操作、美術セットなど、撮影現場で物理的に行われる特殊効果を指します。『ゴジラ』の着ぐるみや『スター・ウォーズ』のヨーダの人形操作などがその代表例です。
SFXは「特撮」と呼ばれることも多く、日本では戦隊ヒーローシリーズや怪獣映画など、親しみのあるジャンルで使われてきました。SFX → CG → VFX という流れで映像技術が進化してきたと考えると、その関係性も理解しやすくなります。

「VFXってプロの技術だから、自分には無理かも」と思われがちですが、実は個人でもVFX制作に挑戦することは可能です。ただし、前述のとおり、VFXの制作には多くの工程と専門知識が必要となるため、一人で完璧に作り上げるのは簡単ではありません。
それでも、最近では初心者でも扱いやすいVFX編集ソフトが登場しており、学習環境も整いつつあります。難しそうに見えるVFXの世界に、最初の一歩を踏み出すことは十分可能です。
ここでは、初心者向けの使いやすいソフトから、プロも愛用する本格的なツールまで、VFX制作に役立つおすすめソフトを5つ厳選してご紹介します。それぞれの特徴や、メリット・デメリットも併せて解説していきます。
Blenderは、無料で利用できるオープンソースの3DCGソフトウェアであり、日本語にも対応していることから国内外に多くのユーザーを抱えています。ネット上にはチュートリアルや活用事例が豊富に存在するため、学習のしやすさも魅力のひとつです。
一方で、モデリング、アニメーション、シミュレーションなど、3DCGに関するあらゆる機能を網羅しているため、初心者にとっては操作や概念の習得に時間がかかる可能性があります。特に、他のソフトに慣れている人にとっては、Blender独自の操作体系に戸惑うこともあるでしょう。それでも、VFXに限らず多彩な3DCG技術に触れられることから、コストをかけずに本格的な制作を始めたい方には非常に適した選択肢です。
CINEMA 4Dは、モーショングラフィックス制作に特化した3DCGソフトで、直感的なインターフェースと軽快な操作性が特長です。After Effectsとの連携もスムーズに行えるため、映像編集やアニメーション制作の現場で広く活用されています。Redshiftによる高速・高品質なレンダリングが標準搭載されている点も魅力です。
ただし、機能が豊富なぶん、初心者にとっては学習コストがやや高めです。価格は月額36,300円(税込)、または年間契約286,000円(税込)で提供されています。
Wondershare製の動画編集ソフト「Filmora」では、有料のVFXプラグイン「Boris FX Continuum」を追加することで、より高度な映像表現が可能になります。Continuumは本来After EffectsやPremiere Pro向けのプラグインパッケージであり、Filmoraではその一部機能(7ユニット・約91種類のエフェクト)が利用できます。AIによる映像補正やGPUによる高速レンダリング、Mochaを用いた高精度トラッキング機能などを活用することで、プロレベルの編集にも対応できます。
ただし、Filmora単体よりも操作に習熟が必要な点や、個人ユーザーにとっては価格が高めである点には注意が必要です。ライセンスは年間約59,180円、永続プランは198,880円(税込)となっています。
Autodesk Mayaは、プロ向けのVFX制作ソフトとして世界中で広く使われており、豊富なツールセットを備えている点が最大の特長です。高度な3Dモデリングやアニメーション、シミュレーションに対応しており、複雑なVFX処理を行ううえでも十分な機能を持っています。
一方で、スクリプトやカスタムツールの活用には一定のプログラミングスキルが求められるため、初心者にとっては学習ハードルがやや高めといえます。価格は月額36,300円、年間契約では286,000円(税込)で、無料体験版も提供されています。
After Effectsは、Adobeが提供するモーショングラフィックスやVFX(視覚効果)に特化したソフトウェアです。高度なアニメーション制御や合成機能、キーフレームを用いた細かな演出が可能で、映像制作における表現の幅を大きく広げられます。また、Premiere ProやPhotoshopなど他のAdobe製品との連携がスムーズで、制作フロー全体に組み込みやすい点も魅力です。チュートリアルやユーザーコミュニティも充実しており、学習環境は整っています。
一方で、操作体系が独特で初学者にはやや複雑に感じられることもあり、使いこなすには一定の習熟が必要です。サブスクリプション形式での提供となっており、月額3,280円(税込)、または年間一括払い34,680円(税込)で利用できます。7日間の無料体験もあります。

VFX制作ソフトを選ぶ際のポイントは、以下の5つです。
それぞれ詳しく解説していきます。
まず確認しておきたいのは、自分が使用しているパソコンのスペックで動作するかどうかです。VFXはパソコンにかなりの負荷がかかりますので、スペックによってはうまく動作しなかったり、完成に近付くにつれてソフトが落ちやすくなったりします。こうしたことがないよう、推奨している動作環境をしっかりと確認しておきましょう。最低限の動作環境はOSによっても異なりますが、多くのソフトの場合、8〜16GB程度のRAMと8GBのハードディスク空き容量が必要とされています。
ただし、これは動作に必要な最低限のスペックであり、快適に作業するためにはさらに高いスペックが必要です。以下に、今回ご紹介するソフトの動作環境が記載されたページURLをまとめましたので、参考にしてください。
VFXソフトの料金体系はさまざまで、BlenderやFilmoraのように無料または安価で使えるものもあれば、月額1万円前後かかる本格的な有料ソフトもあります。さらに、年契約であれば月額換算は安くなる一方、一度の支払い金額が大きくなってしまうという側面も。
予算に応じて継続的に使えるかどうかを見極め、料金体系やプラン内容をよく確認しておくことが大切です。
ソフトによって得意分野や搭載機能は異なります。たとえば、Filmoraはあらかじめ用意されたエフェクトテンプレートを活用することで簡単にVFX効果を適用できますが、ゼロから自由に演出を作るには不向きです。
一方、BlenderはCGアニメーションやVFXに幅広く対応できる汎用性の高いソフトですが、操作性が独特なため、人によっては扱いづらいと感じることもあるでしょう。
どの作業を重視するかによって適したソフトは異なります。目的に合ったツールを選ぶためにも、それぞれの強み・弱みを把握しておきましょう。
VFX初心者の場合は特に、ネット上の情報やオンライン講座の充実度が重要になります。独学で取り組む場合は、困ったときにすぐに調べられる環境があるかどうかが、学習のスピードや継続のしやすさに直結します。
導入を検討しているソフトについて、チュートリアル動画の有無やQ&A掲示板、ユーザーコミュニティの活発度なども確認しておくと安心です。
VFXソフトは種類によって操作のしやすさが異なります。初心者の方には、まず無料版を使って操作性を確かめてみることをおすすめします。
たとえば、Filmoraは3Dグラフィックス機能を備えていない分、シンプルな操作で動画編集ができ、初めての方でも扱いやすい設計になっています。テンプレートを選ぶだけでVFX効果を映像に反映できるため、スキルがなくてもある程度の表現が可能です。
また、After Effectsも比較的操作しやすく、VFXやアニメーション編集に強いソフトとして知られています。ユーザー数も多く、ネット上に情報が豊富にあるため、わからない点も自力で解決しやすいのが魅力です。Adobe Creative Cloudのプランを活用すれば、他のAdobeソフトとの連携もスムーズに行えます。

どの世界も職人技の世界には圧巻させられます。VFXの世界の作業工程も、調べれば調べるほど膨大かつ骨も精神も折れそうな作業に圧巻させられます。
その一例が、10秒間のカットをレンダリング(なんらかの抽象的なデータ集合を元に、一定の処理や演算を行って画像や映像、音声などを生成すること)しようとしたら、40時間かかるということでしょう。
例えば、VFXといえば『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(2011)が印象的ですが、こちらの映画のとある1シーン1フレームをレンダリングするのに288時間かかったそうです。TVでは1秒を30フレーム、映画では24フレームに分けるので、1フレームというのは1秒にも満たない数字で、考えただけでめまいのしそうなVFXの世界だと感じるのではないでしょうか。
ここでは、そんなVFX映像を活用した作品をご紹介します。
まずご紹介するのは、VFXの初期と言われているのが『ジュラシックパーク』(1993)です。『ジュラシックパーク』(1993)といえば恐竜のイメージが強いですが、この恐竜はCGとSFXを使って作成された映像で、SFXからVFXに大きく移行するきっかけになった作品です。
次にご紹介するのが、先ほどもご紹介した『スター・ウォーズ』シリーズの最後の作品でもある『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)でのVFXの工程の映像です。
『ジュラシックパーク』(1993)と同様に、VFXの歴史を紐解いたときに切ってもきれない『スターウォーズ』シリーズもまた、多種多様な映像制作の場面で使われるようになった基盤を作った映画です。完全デジタルのCG技術を投入したVFXが生まれたのも、『スターウォーズ』の賜物だったことが分かり、これが現在の世界でのVFXの結晶といえるでしょう。
次にご紹介するのは、実際に日本のVFXアーティストが一つの映像を作りあげていく映像です。とても細かく、操作方法を理解するのは勿論ですが、集中力や忍耐力も大切な部分だなと見ていて感じるのではないでしょうか。
そして、この編集工程を元に出来上がった映像がこちらです。
編集工程で作られた映像が使用され、壮大な世界が作り上げられています。莫大な時間と莫大な人数の結晶が詰まった映像は浪漫でいっぱいです。
2021年公開の『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』も、VFXを用いて制作された映画のひとつです。燃えさかる町並みの炎や崩れる瓦、爆風などの迫力ある映像をVFXで制作しています。
また、建物や人物のようなものから鞄などの小道具まで、さまざまな部分でVFXを活用しているのもこの作品の特徴です。例えば、狭い場所で撮影した映像にVFXで町並みを追加することによって、よりスケールの大きな広がりのある映像に仕上げるといった形でVFXを活用しています。特に日本は、広大な草原や砂漠、地平線まで伸びる道など、スケール感のある映像を撮るのが難しいケースが少なくありません。
しかし、VFXの技術を活用することで、こうした制限のある中で撮影した映像でも、スケール感の大きな映像に仕上げることができるのです。
最後に、こちらは1878年から現在までの映像が一本にまとまった作品紹介です。今までの映像技術の発展が分かる作品です。
当たり前に処理されている映像を観るのも楽しいですが、作業工程が観られるのはとてもワクワクしますね。映像技術が進化し、発展していく様子を描いた映像ですが、こうやって古い映像を見ていくと、逆にリアリティさが増すような感覚があります。
YouTubeで「VFX breakdown」と検索すると、非常にたくさんのVFXの工程前の映像が見つかるのでオススメです。
『Dune: Part Two』は、2024年公開のSF超大作で、フランク・ハーバートの名作小説を基にした映画シリーズの続編です。
壮大な砂漠の惑星アラキスを舞台に、主人公ポールの運命と戦いが描かれ、巨大なサンドワームや異星のテクノロジーなどが、VFXによって圧倒的なリアリズムで表現されています。
前作を上回るスケールと映像美で、現代のVFX技術の最前線を体感できる作品として高い評価を得ています。VFXの学習や理解を深めるうえでも非常に参考になる一作です。

VFX(Visual Effects)は、実写映像にリアリティと迫力ある視覚効果を加えることで、映像作品の表現力を大きく高める重要な技術です。
CGやSFXとの違いを理解し、適切なソフトを活用することで、より魅力的な映像制作が可能になります。
近年は、映画やアニメ、CMなど様々なメディアにおいてVFXが日常的に使われており、その存在は私たちの身近な映像体験に深く関わっています。
VRやARなどの表現技術が一般化する中でも、実写とデジタルを融合させたVFXの進化は止まりません。
これからVFXを学びたい方、制作に取り入れたい方にとって、今回ご紹介した基礎知識やソフトの選び方、実例は大きなヒントになるはずです。無限の可能性を秘めた映像表現の世界に、ぜひ一歩踏み出してみてください。
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