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ストップモーションは、写真を一枚ずつ撮影し、それらを連続してつなげることで、動きのある映像に仕上げる映像制作の技法です。静止している人形やモノを少しずつ動かしながら撮影することで、あたかも命が吹き込まれたかのような表現が可能になります。日本では「コマ撮り」と呼ばれることもあります。
この手法は、一見アナログに思えますが、テレビ番組やCM、映画、さらにはSNSでの動画コンテンツなど、意外と多くの場面で使われています。視覚的なインパクトが強く、見る人の印象に残りやすいという点が特徴です。まるで手作業で動かしているような独特のテンポや質感が、他の映像手法とは異なる魅力を生み出します。
ストップモーションにはいくつかのスタイルがあり、通常、キャラクターの作成に使用される素材によってその種類が異なります。紙で作る切り抜きアニメーション、クレイ(粘土)で作るクレイアニメーション、人形(パペット)を使用したパペットアニメーションなどがあります。
ストップモーションの中でも特に人気が高いのが、クレイアニメーションと切り紙アニメーションです。クレイアニメでは、粘土で作られたキャラクターや小道具を少しずつ動かしながら撮影を進めていきます。粘土は造形の自由度が高く、細かい変化をつけやすいため、1コマごとの微細な表現が求められるストップモーションに非常に適した素材とされています。
プロジェクトの規模によっては、同じキャラクターを複数体用意する必要があり、制作の手間はかかりますが、その分完成度の高い作品に仕上がります。代表的な作品には、アカデミー賞候補にもなった『コララインとボタンの魔女』や、ティム・バートンが手がけた『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』があり、シリーズとして愛されている『ウォレスとグルミット』や『ひつじのショーン』もこの手法で制作されています。
一方、切り紙アニメーションは紙で作った平面的なパーツを使って動きを演出するスタイルで、独特のレトロ感や素朴な風合いが魅力です。この手法は、初期の『サウスパーク』のようにテレビアニメでも活用されており、手作業による制作の歴史を感じさせます。また、フランスのアニメーション映画『ファンタスティック・プラネット』のように、アート性の高い作品にも使われてきました。

ストップモーションの概要は大まかに理解いただけたでしょうか。それではここからは、より詳しく活用のメリットについてご紹介します。
ストップモーションは、独特のカクカクとした動きによって、視覚的な違和感や新鮮さを生み出します。見慣れない映像表現であるがゆえに、視聴者の目を引きやすく、SNSや広告などでも一瞬で注目を集めることができます。
その視認性の高さから、企業のブランディング動画や教育向けコンテンツでも効果的に活用されています。
ストップモーションでは、現実では起こり得ないような変化や動きを自由に演出できるのが大きな強みです。たとえば、切った野菜がそのままサイコロに変わる、置物が自ら歩き出すなど、通常の映像では再現しにくいインパクトあるシーンが作れます。
こうした非現実的な演出によって、視聴者の印象に深く残り、訴求したいメッセージをより強く届けることができます。
ストップモーションは、子ども向けアニメや教育番組でも多く使われているため、親しみやすく、幅広い世代に受け入れられやすいという利点もあります。特に年配層にとっては、どこか懐かしさを感じる映像スタイルであり、親子で楽しめるコンテンツとしても活用できます。ターゲットが限定されない映像表現として、あらゆる年齢層へのリーチを可能にするのが魅力です。

ストップモーションの特徴や魅力を理解したところで、実際にどのような場面で使われているのかを見ていきましょう。導入前に活用イメージを具体化することで、より効果的な活用方法が見えてきます。
企業のマーケティング施策において、ストップモーションは特にプロモーション動画と相性が良いとされています。動きのあるユニークな映像は、視聴者の目に留まりやすく、SNSなどでも拡散されやすい傾向があります。認知度の低い新商品であっても、視覚的な面白さによって注目を集めやすく、ブランドや製品の存在を自然に印象づけることが可能です。
また、視聴者に「広告らしさ」を感じさせにくいのも利点です。たとえば、自社キャラクターを登場させた短いアニメーションであれば、ユーザーはストーリーを楽しむ中で、製品やサービスの魅力を自然と受け取ることができます。プロモーションに“親しみ”や“記憶に残る体験”を加えたい場合に、ストップモーションは非常に効果的な表現手法といえるでしょう。
ストップモーションは、教育の現場でも注目されている映像手法です。とくに子ども向けの教材やテレビ番組では、複雑な内容や抽象的なテーマを視覚的にわかりやすく伝える目的で頻繁に利用されています。実際、NHKの教育番組などでもストップモーションが取り入れられており、学習の入り口として有効なアプローチとなっています。
紙芝居のような親しみやすさと、動画ならではの動きのある演出が組み合わさることで、子どもたちの理解や興味を引き出しやすくなるのです。加えて、視覚的な記憶に残りやすいため、学んだ内容が定着しやすいというメリットもあります。

ここからは、ストップモーションの作り方をステップごとに紹介します。
まず最初に取り組むべきは、ストーリーやテーマの設計です。伝えたいメッセージや動画の長さ、ターゲット層などを明確にし、それをもとにシナリオや構成を組み立てていきます。アイデアを頭の中だけでまとめるのではなく、紙に書き出して視覚化することで、構成の整理やブラッシュアップがしやすくなります。
ストップモーションの制作に必要な主な機材と素材は以下のとおりです。
安定性のある三脚や照明があると、作品のクオリティが大きく向上します。
撮影において、カメラの安定性は非常に重要です。少しのブレでも映像の質に影響が出るため、三脚やスマホスタンドなどを使ってしっかりと固定しましょう。特に安価な三脚の場合は徐々にずれる可能性もあるため、信頼性のある器具を選ぶことが望ましいです。
セットアップの際は、撮影中に機材を動かさないよう慎重に配置してください。この段階でのミスは作品全体に影響を及ぼすため、最も注意を払うべき工程です。
撮影前、撮影中共に注意すべきことがあります。
通常の動画は、大体毎秒30〜60フレームで作成されます。このフレームの数が大きいほど滑らかな動きに見えます。ストップモーション動画を作成するときは、見栄えの良いアニメーションを作成するために、少なくとも1秒あたり10フレームが必要です。1秒の再生時間に何フレーム入れるかは、完成度を大きく左右します。ビデオの1秒あたりのフレーム数が多いほど、動画の動きはスムーズになります。
フレーム数に基づいて、ストップモーション動画の長さを見積もることができます。たとえば、100枚の写真を撮影し、1秒あたり10フレームのレートを維持する場合、ビデオの長さは10秒になります。ただし、よりスムーズな25 fpsで動画を作成することにした場合、同じ100枚の写真で4秒のビデオになります。また、10 fpsの動画を作成する場合は、1秒以内に10フレームが必要です。つまり、各フレームの継続時間は1/10秒または0.1秒になります。各フレームの継続時間を0.04秒に設定すると、25fpsのストップモーション動画が完成します。
ここで1つ問題を出すので考えてみましょう。30秒のアニメーションには何フレームあるでしょうか?答えは、選択したフレームレートによって異なります。10fpsを選択すると、30秒のアニメーションで300フレームになります。これが20fpsならば、動画は、はるかにスムーズに見えますが、600フレームが必要になります。簡単ですね。これだけ、分かれば皆さん完璧です。
フレームレートが決定したら、今度は実際に被写体を配置し撮影します。さらにまた被写体を動かし配置して撮影。これをひたすら繰り返し行います。注意点としては、被写体の配置がずれていたりすると後で不自然になるため、こまめに確認を行うことです。
そして理想としては、シャッターボタンに触れないで撮影する事です。カメラのシャッターを押す際に、手ブレを起こす可能性があるためリモコンなどがあると便利です。今のスマートフォンや一眼レフには、Bluetooth機能が搭載されている機種が多くありますのでBluetoothリモコンを使用しシャッターを切れればベストです。
撮影が終わったら、編集ソフトを使って写真をつなぎ合わせ、動画を完成させます。フレームレートの設定をもとにタイムライン上に写真を配置し、テンポやスピードを調整しましょう。動きが速ければより滑らかになり、遅ければスライドショーのような印象になります。
さらに、音楽・効果音・テロップなどを加えることで、作品の完成度やメッセージ性が一段と高まります。自分の表現したい世界観に合わせて編集のスタイルを工夫してみてください。

ストップモーションが実際に使われている動画を紹介します。制作の際の参考にしてみてください。
かまぼこづくりは株式会社鈴廣蒲鉾本店が作成した、かまぼこのつくり方を学ぶストップモーションCMです。かまぼこの主原料の魚や製造工程、1本に約7匹分の魚が使われていることなど、映像を楽しみながら今まで知らなかった事を知る事ができます。
魚肉を小田原の地下水で洗う工程を、魚を洗濯機で洗うというユニークな演出で表現したり、かまぼこがまるで生きているかのように動いたり、次々と繰り広げられる表現が見どころ。かまぼこの魅力を若者視点で発信する映像になっています。
パナソニック コネクトが公開した新CM「かなえよう。つながる現場」篇は、ストップモーション技法を用いた企業プロモーションの好例です。スニーカーのサプライチェーンにおける「造る・運ぶ・売る」の各現場が、データによって最適化されていく様子を、1/16スケールのミニチュアセットとハンドメイドの人形で表現しています。
約1,500枚の写真を用い、1コマごとに位置やポーズを丁寧に調整することで、ミニチュアに命が宿るようなクレイアニメ風の映像に仕上げられています。ストップモーションのもつ温かみや手作業の魅力を活かしつつ、テクノロジーと人の共創による社会の未来像を伝える映像作品となっています。

ストップモーション動画を作ってみたいけれど、難しそうだと感じていませんか?実は最近では、スマートフォンひとつで簡単に始められる編集アプリが登場しており、専門的な知識がなくても気軽に動画制作を楽しめるようになっています。ここでは、初心者にも扱いやすく、操作性と機能性のバランスが取れた編集ツールを一つご紹介します。

Stop Motion Studioは、これからストップモーションを始める方にぴったりのモバイルアプリです。iPhoneやAndroidに対応しており、アプリ内で撮影から編集まで一括して行えるのが大きな特徴です。
Stop Motion Studioは無料でも基本的な撮影・編集・音声挿入・書き出し(最大1080p)まで使えます。ただし、グリーンスクリーン合成、フレームごとのペイント編集、画像や映像の外部取り込み、4K書き出し、リモートカメラ接続など、高度な表現・編集を行いたい場合は有料版($5〜$6、一度の買切り)へのアップグレードがおすすめです。はじめての作品作りに最適なツールとして、多くのユーザーから高い評価を得ています。

Life Lapse Stop Motion Makerは、スマートフォンだけで手軽にストップモーション動画を作れるアプリです。操作は直感的でわかりやすく、初心者でもすぐに使い始められます。写真の取り込みやタイムラインでの編集、速度調整、フィルター、音楽の追加など、幅広い機能が無料で使えるのも魅力です。App Storeでも高評価を獲得しており、多くのユーザーに支持されています。詳しい情報やダウンロードは公式サイトで確認できます。

ストップモーション動画は、一コマ一コマ手作業で作るため手間はかかりますが、その分独特の表現力と印象的な映像を作り出せます。プロモーションや教育など、さまざまな場面での活用が期待されており、日本国内ではまだ競合が少ないため、動画クリエイターにとっては大きなチャンスと言えるでしょう。
ただし、クオリティの高い作品を作るには、細かい作業を根気よく積み重ねる必要があります。まずは簡単な題材から始めて慣れ、徐々に複雑な構成に挑戦していくのがおすすめです。最近はスマホ向けの無料アプリも充実しており、初心者でも気軽に挑戦できる環境が整っています。まずは一歩踏み出して、自分だけのオリジナル作品づくりにチャレンジしてみましょう。
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