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世界的視点で見たYouTubeは今、インドのチャンネルによって市場が激変しています。YouTubeの世界トップはアメリカ、という当たり前が崩壊しました。YouTubeランキングを見ると、トップ10内にインドのチャンネルが3つも存在しています。おまけに1位を獲得したチャンネルもインドなのです!インドに全くなじみのない筆者は驚きを隠せませんでした。
インドのチャンネルは爆速で登録者数・閲覧数を伸ばしています。2年前の情報になりますが、インドの累計チャンネル登録者は10億4,500万人とアメリカ(21億600万人)に次ぐ順位です。また、再生回数はアメリカ9,160億回、インドは5,030憶回と1位・2位で並んでいます。(※1)
インドがチャンネル登録数と再生回数共に、アメリカの半分にとどまっている理由はインフラの整備や経済的な理由が考えられます。しかし、ここで忘れてならないのがアメリカとインドの人口の違いです。インドはアメリカの約4倍の人口がいる事を考えると、登録者数・再生回数共に今以上の伸び率を期待できるのではないでしょうか?次から、インドYouTubeが活発な具体的ケースをご紹介します。
インドの主要言語はヒンディー語です。それ以外に少なくとも100以上の言語があるようです。この多種多様な言語を選択して情報を得られるということにYouTubeを閲覧する理由があるのではないでしょうか。
インドのインターネット使用者のうち80%がYouTubeにアクセスしているとGoogleインドが明らかにしました。これは驚異的な数字です。インターネットの普及が40%程度のインドですが、ネットを利用するとしたら、ほとんどの人がYouTubeを見ているという状況です。
日本ではスマートフォンの普及は順調に進み、今ではガラケー所有者が少数派となりました。しかし、インドの普及率はまだまだ低く、25%しか所有していないというデータがありました。(※2)
インドの人口は約1万3665億人とすると3416憶人がスマートフォンを所有していることになります。逆算で1万249憶人がこれからスマートフォンを持つ可能性があると考えると、市場はまだまだ伸びると予想されます。
(※1)世界最速で伸びる インドYouTube市場の活況
(※2)各国のスマホ保有率 先進国の間でもばらつき
インドでは低価格や中古のスマートフォンの普及が広がっていて、所有者が増加しています。家庭でのWiFi環境はまだ発展途上ですが、空港・ホテル・鉄道の駅などでフリーWiFiが使えるようになったことも、視聴者が増えている要因です。
フリーWiFiを提供しているのがGoogle。インド全域の主要鉄道駅に無料高速WiFiサービスを提供しているのです。(日本の旅行者がWiFiを使っている様子をYouTubeで見ましたが、実際は速さを感じられませんでした)そのような状況下で、多くの人がスマートフォンにバッテリーをつけ、駅のWiFiを使用してYouTubeを閲覧しているようです。また、インドも例にもれず、テレビ離れが進んでいることと、新型コロナウイルス拡散の影響が重なり、YouTubeの視聴回数が爆伸びしているようです。
何度も述べますが、インドとアメリカの人口とスマートフォン普及率の割合の違いに注目しましょう。インドの人口は世界2位でアメリカの4倍ですが、アメリカのスマートフォン普及率は78%・インドの普及率は25%。どう見てもインドのYouTube動画市場は伸びしろがある、依然注目するべきテリトリーと言えます。
インドにおいてもエンタメ・音楽2大ジャンルが割合を多く占めていますが、インドならではの特筆すべきポイントをご紹介します。
インドと言ったらボリウッドでしょう。「ムトゥ恋するマハラジャ」をご存じの方も多いかと思います。ボリウッドとは、ダンス・音楽・情熱的な表現が印象的なインド特有の映画を表します。
インドは年間の映画製作本数、観客総数が世界一の映画大国。そのほとんどが北インドにあるボンベイ(現在はムンバイ)で作られています。世界的映画の聖地ハリウッドと、ボンベイを掛け合わせた造語として“ボリウッド“と呼ばれるようになったカルチャーなのです。
また、クリケットの試合ライブや動画も人気のようです。クリケットは日本でマイナーなスポーツですが、インドを中心に大人気のスポーツです。イギリスが発祥と言われており、植民地時代にインドに広がりました。野球とよく似たプレイスタイルで、もともとはクリケットが原型と言われています。世界の競技人口は野球の3倍以上とも推定されます。子どもから大人まで楽しめるクリケットは日本でいうと野球やサッカー、相撲などと同じように国民的に愛されるスポーツなのです。
少々横道にそれますが、インドのキッズチャンネルがトップ20圏内にないことを不思議に感じました。キッズジャンルは見逃せない分野なので、さらに詳しくリサーチしてみました。なんとT-Seriesなどの大手はチャンネル傘下にジャンル分けされているではありませんか!抜け目ない、組織的ビジョンを感じます。今や子育てに欠かせないアイテムとなったYouTube。インドのキッズジャンルも見逃がせませんね。
さてここからは、そんなインド向けにYouTubeで情報発信してみたい方のためのポイントです。
インド人のスマートフォンは中古・安価型が主流のため、バッテリーや要領に不安があります。インド人が持つ端末を考えて、発信する動画の長さに気を付けましょう。あまり長い動画は好まれないかもしれません。私たちもそうであるように、ちょっとしたストレスが視聴離脱を招くのです。
旅行ができない今、日本の情報をインドの人々に向けて発信してみるのはいかがでしょう?日本からインドに発信できることと言ったら、両国の「違い」ではないでしょうか? 人口・気候・習慣・宗教すべてが違うことに価値があると思うのです。
例えば、細かいことですが食事のシーンです。インド人は箸を持たずに右手で直接口に運んで食事をしますので、日本の箸を紹介するだけでもインド人にとっては興味深く映るのではないでしょうか?
インド人旅行者のデータも参考になります。2015年はインドからの旅行客が年間10万人を超え、それ以降右肩上がりで上昇していた傾向から、日本への関心の高さを感じます。
アンケートデータによると、インド人の日本での消費額内訳は多い順に①宿泊費②飲食費③買い物④交通⑤娯楽等サービス費でした。また、旅行のリピートは少ないということから、1回の旅行で失敗したくないと考えるのではないでしょうか?旅行の下調べでYouTubeを見るということを考えてコンテンツを組み立ててもいいのかもしれませんね。
インド人が興味を寄せる日本のコンテンツについて総務省がデータにまとめています。(※)
上位から①日本の自然②神社・寺院③日本食となっています。これらのことをビジュアルと箇条書きにまとめて発信すれば、ヒンディー語が分からなくともインド人の期待に応える動画になるでしょう。そのためにも解説や説明を、話し言葉や文章ではなく、単語や簡単な箇条書きで表してみてはいかがでしょう。動画であれば情報の大まかなところは伝わるはずです。翻訳サイトの助けを借りつつ、YouTubeの発信をトライしてはいかがでしょうか?
世界規模で考えると、日本語での発信はコンテンツや視聴者に限界があり、これからYouTube発信を頑張るには遠い道のりに感じます。筆者には日本人がインドに向けて発信することがブルーオーシャンに見えてきました。ライバルが少ないし、なんといってもインド人の人口が多い!伸びしろだらけのインド動画市場で、挑戦してみる価値はあると思うのです。
ではインドで人気のYouTubeチャンネルや、インド向けに情報発信している日本人YouTuberをご紹介します。
T-seriesには大量の音楽コンテンツがあります。インド内でトップクラスのシェアを誇るレーベルかつ映画製作会社が運営しています。毎日数多く配信され、視聴者の興味を逃しません。また、このT-seriesはコンテンツを様々な角度から分類して視聴者を楽しませています。2020年のヒットソング、言語ごとのヒットソング、歌詞付きの動画などです。
チャンネルの傘下には子ども向けチャンネル、ボリウッド専門チャンネル、過去の映画コンテンツチャンネル、言語ごとのチャンネルなどインドを包括的に網羅しようとしています。youtube市場を先陣切って進んでいます。
チャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCq-Fj5jknLsUf-MWSy4_brA
SET Indiaはソニーエンターテインメントテレビが運営しています。家族向けエンターテインメントをヒンディー語で発信しています。ドラマ、コメディー、オーディション番組、ダンスショーなど内容は多岐にわたり、T-seriesと比べるとコンテンツがTVに近い存在かもしれません。視聴者ターゲットも幅広い印象です。
チャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCpEhnqL0y41EpW2TvWAHD7Q
Zee Music Companyはインドを代表するテレビメディアでエンターテインメント企業が運営しています。コンテンツとターゲットはT-seriesと大差なく感じます。一つ大きな違いは更新頻度で、Zee Music Companyは一定していません。1日に何度も更新する日もあれば1度も更新がない日もあります。
チャンネル:https://www.youtube.com/user/zeemusiccompany/featured
こちらは、上で紹介したZee Music Companyのグループです。コンテンツはドラマを中心に新しい物から過去のものまで各年代にターゲットを設定しているようです。
チャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCppHT7SZKKvar4Oc9J4oljQ
こちらはボリウッドミュージック動画専門のチャンネルです。ざっと確認しましたが、1970年代からの過去の動画を公開しており、他のチャンネルとの違いは新しいコンテンツが少ないということです。ただしボリウッドミュージックファンが時代を超えて楽しめる、他との差別化を感じるチャンネルです。
チャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCP6uH_XlsxrXwZQ4DlqbqPg
以上、インドYouTube登録者数トップ5をご紹介しました。だんだんインドが身近に感じられてきました。
インド人から支持されている日本人YouTuberを2人確認できました。登録者数も多く、この二人の共通点はヒンディー語が堪能だということです。語学が堪能なのはまぎれもない強みですね!
Mayoさんはヒンディー語でインド人に向けて発信しています。日本の名所紹介、インドが産地の食材・商品レポ、文化の違いをピックアップした内容が多いのですが、Mayoさん自身がインドに行った体験なども配信されています。登録者数90万人。使用言語はほぼヒンディー語ですが題名とテロップに英語表記があるので何となく雰囲気がつかめました。明るくて若くてかわいい!はきはきとした言葉や明るい表情が好印象です。
チャンネル:https://www.youtube.com/c/japan-mayo/featured
KOHEIさんもヒンディー語でインド人に向けて発信しています。登録者数206万人。この方の特徴はバイオリンが弾けるマッチョということです。KOHEIさんは幅広い内容で発信しています。インドでの収録やインド人へのちょっとしたドッキリ企画、バイオリン演奏など、いろんなことにチャレンジしています。内容は日本のヒカキンさんに似ているような気がします。
Mayoさんと KOHEIさんは同じインド人向けジャパニーズYouTuberとして、コラボしています。二人ともこのコロナの影響により、現在は日本から発信しているようです。コロナが終息したら、再びインドと日本を行き来するのでしょうか。今後の更なる躍進が期待されます。
チャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCoFiap7J9HtmcILlLESpW2g/featured
さて、ヒンディー語を理解できない筆者が翻訳サイトに力を借りて、なんとかリサーチしてみましたが、一つインド動画の大きな特徴を述べさせてください。インドのYouTube市場は企業が独占状態です。特有のマンパワーを使って戦略的にマーケットに攻め込んでいます。「個人」を前面に出している他のチャンネルとの大きな違いです。
これからインド市場に食い込んでいくには更新頻度や情報量では到底追いつけないと考察します。そこで、Mayoさん・KOHEIさんのように、個人にしかできないユニークなコンテンツを発信していくのはいかがでしょうか?あなたの個性・得意なことと、インド人が知りたい情報を掛け合わせたところに、発信のヒントがあるのかもしれません。
以上、インドのYouTube、徹底検証でした。これからのYouTubeライフがもっと楽しく、実用的でありますように。
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