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NDフィルター(Neutral Densityフィルター)は、カメラに入る光量を調整し、露出をコントロールするためのフィルターです。「Neutral」は色味に影響を与えないこと、「Density」は濃度を意味し、光を均一に遮ることで露出を調整する役割を果たします。
明るい環境でも、シャッタースピードや絞りの自由度を保ちながら撮影ができるため、
写真でも動画でも、表現の幅を広げるための基本ツールとして使用されています。
NDフィルターはサングラスのような役割を持ち、レンズの前に装着することで、カメラに届く光を均一に抑制します。その結果、シャッタースピードを遅くしても白飛びせず、絞りを開けたままでも適正露出が保てるようになります。
NDフィルターには「ND8」「ND64」「ND1000」などの数値が記されており、これが光の透過率を表しています。たとえばND8は光量を1/8に、ND1000は光を約1/1000(約10ストップ、理論上は約1/1024)に減光します。
数値が大きくなるほど、より強い減光効果が得られる仕組みです。
NDフィルターには、光量の調整方式や形状によって複数のバリエーションがあります。用途や機材に合わせて選択することで、より効果的に使いこなすことができます。
<調整方式による分類>
| NDフィルターの種類 | 内容 |
|---|---|
| 固定式NDフィルター | 特定のND値に対応し、濃度が固定されているタイプ。必要に応じて複数のフィルターを交換しながら使う。画質が安定しやすい。 |
| 可変式NDフィルター | フィルター前枠を回すことでND値を連続的に調整可能。1枚で複数の濃度に対応でき、携行性と汎用性に優れる。固定式と比較すると価格は高め。 |
<形状による分類>
| NDフィルターの種類 | 内容 |
|---|---|
| 丸型フィルター | レンズの先端に直接ねじ込んで使用。一般的な形式で、サイズはレンズ径に合わせて選ぶ。携帯性に優れており初心者にも扱いやすい。 |
| 角型フィルター | 専用ホルダーを使用して装着。広角レンズでのケラレ防止や、高精度な調整に向いている。プロや風景写真家に人気。 |
| ハーフNDフィルター | フィルターの一部だけが減光されているタイプ。空と地面など明暗差の大きいシーンに適しており、境界が滑らかな「ソフトタイプ」、明確な「ハードタイプ」など、複数のグラデーション形式がある。 |

NDフィルターは、特定の環境や撮影スタイルにおいて必要不可欠になる場面があります。
このセクションでは、「どういう状況でNDフィルターが求められるのか」に焦点を当て、代表的な撮影シーンを整理します。
日中の屋外など、環境光が非常に強い状況では、シャッタースピードを適切な値(例:1/60秒)に設定しようとしても露出オーバーになる場合があります。このような環境では、NDフィルターによる減光が前提になります。
明るい屋外でポートレートや商品撮影などを行う場合、F値を小さくして背景をぼかしたいシーンでも、露出が合わなくなります。このようなとき、NDフィルターを装着することで意図した絞り設定を維持できます。
滝や水流、車の軌跡、街の人の動きなどをスローシャッターで記録したい場合、昼間の明るさが障壁になります。NDフィルターによって光量を抑えることで、長時間露光の条件が整います。
空と地面の明暗差が大きい日の出・夕暮れ・逆光風景などでは、露出のバランスを取るのが難しくなります。ハーフNDフィルターを使用することで、明るすぎる空側の光を抑え、全体を適正露出に近づけることができます。
このように、NDフィルターは「使うと便利」な道具ではなく、「使わないと成立しない」状況が存在するツールです。

NDフィルターは撮影の幅を広げてくれる一方で、使用方法や選び方を誤るとトラブルの原因にもなります。このセクションでは、NDフィルターの導入にあたって把握しておきたい利点と注意点、そして実際に使用する前に確認しておくべきポイントを整理します。
NDフィルターは、明るい環境下でも適正露出を保ちながら、自分の意図した絞りやシャッタースピードを選べるようにする道具です。特に以下のような場面で強力な味方になります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 明るい環境でも適正露出が取れる | 強い日差しの中でもシャッタースピードやF値を自由に設定できる |
| 背景ボケのある写真を昼間でも撮れる | 絞りを開けた状態でも露出オーバーを避けられる |
| モーションブラー表現が可能 | 動画で自然な動きや滑らかなブレを再現できる |
| 長時間露光による演出ができる | 水や雲、車の軌跡など、動きのある被写体を幻想的に描写できる |
| 撮影の幅が広がる | シネマティックな映像制作や風景撮影の自由度が向上する |
一方で、NDフィルターにはいくつかのデメリットも存在します。製品の選び方や使い方によっては、画質の低下や操作上のトラブルを引き起こす原因になり得ます。
| デメリット | 内容 |
|---|---|
| 色かぶりが発生する場合がある | フィルターの質や濃度によっては全体に緑や赤みがかかることがある |
| 画質がわずかに低下することがある | 特に可変NDはコントラストが落ちる傾向がある |
| 可変NDはX状ムラが出ることがある | 可変NDでは、2枚の偏光フィルターを重ねて減光を行うため、最大ND値近辺では光の干渉によりX状のムラ(クロスパターン)が発生しやすくなる |
| 暗すぎて確認が難しくなることもある | 高濃度のNDではEVFやモニターで被写体が見えづらくなる場合がある |
| 高品質な製品は高価 | 安価なNDは問題が起きやすく、一定の予算が必要になることもある |
NDフィルターは、ただ装着するだけでは十分な効果が得られない場合があります。濃度が強すぎると、ピント合わせや構図の確認が難しくなるため、使用環境に応じた調整が必要です。
特に可変NDは便利な一方で、回しすぎると濃度ムラが出ることがあります。また、色かぶりはフィルターの品質に左右されるため、信頼できる製品を選ぶことも重要です。
実際に撮影に入る前には、以下の点をチェックすることで、撮影中のトラブルを回避できます。
これらを事前に確認しておくことで、現場での撮影トラブルを大きく減らすことができます。

NDフィルターは、装着そのものはシンプルですが、「濃度の選定」や「撮影設定」とのバランスを間違えると、かえって思い通りの映像が得られないこともあります。ここでは、NDフィルターの基本的な使い方と、撮影前に設定すべきポイントを整理して解説します。
NDフィルターの多くは、レンズの前面にあるネジ山にねじ込んで装着します。
フィルター径はレンズの口径(例:67mm、77mmなど)に合わせて選ぶ必要があり、サイズが合っていないと装着できない、またはケラレが発生する原因になります。
複数のレンズで共有したい場合は、「一番大きい口径のレンズに合わせたNDフィルター」+「ステップアップリング」で運用するのが一般的です。
角型NDやハーフNDを使う場合は、専用のホルダーをレンズに取り付け、そのホルダーにフィルターをスライドさせて固定します。
NDフィルターを装着したら、まずは露出計を見ながら、シャッタースピードやF値、ISOを調整して適正露出に合わせます。
動画の場合、以下の流れが基本です。
写真の場合は、「シャッタースピードを意図的に遅くしたい」「絞りを開けたい」といった目的があるかを踏まえ、ISOと絞りを先に設定した上で、NDフィルターの濃度を調整するのが基本的な順序になります。
NDフィルターを装着していると、ファインダーやモニターが暗くなり構図の確認やピント合わせがしにくくなることがあります。特にND64やND1000など高濃度フィルターの場合は、先にピントを合わせてからフィルターを装着するなどの工夫が必要です。
また、可変NDを使用する場合、最小・最大付近ではムラが出やすいため、調整幅の中央付近を使うのが基本です。調整中に画面に「X状の影」や「色ずれ」が現れた場合は、可変域を見直すか、濃度が固定されたNDに切り替える判断も必要になります。

NDフィルターは、撮影スタイルや環境に合わせて適切な種類や濃度を選ぶことが重要です。
選び方を誤ると、使い勝手が悪くなったり、画質に影響が出たりすることもあるため、導入前に基本的な判断軸を把握しておきましょう。
NDフィルターには、あらかじめ濃度が決まっている「固定式」と、濃度を連続的に調整できる「可変式」の2種類があります。
それぞれにメリット・デメリットがあり、使用目的に応じて適したタイプを選ぶことが大切です。
NDフィルターの濃度は、「ND8」「ND64」「ND1000」などの数字で表されます。
数値が大きくなるほど光を強く抑えられるため、用途に応じて適切なND値を選ぶ必要があります。以下は、代表的な濃度とその用途の目安です。

NDフィルターは、使用目的や撮影スタイルによって選ぶべき製品が大きく異なります。動画撮影ではND値を柔軟に調整できる「可変NDフィルター」が重宝され、写真撮影では画質の安定性を重視して「固定NDフィルター」が選ばれる傾向にあります。
このセクションでは、2025年時点で信頼性が高く、撮影者からの評価も高いNDフィルター製品を、「可変ND」「固定ND」に分けて紹介します。
各製品の特徴や使用シーン、注意点などを踏まえて、自分に合った一本を選ぶ参考にしてください。
長時間露光や風景撮影に適した、画質重視のNDフィルターです。
ND2〜ND400の範囲を1枚でカバーする高コスパの可変NDフィルターです。28層ナノコーティングにより、反射やゴーストを抑えながらクリアな描写を実現します。
可変NDとしては軽量かつ操作性も良く、動画・風景・日中スナップまで幅広い用途に対応します。フィルター径は52mmから82mmまで複数ラインナップを揃えています。劣化による色ムラやガタつきが出た場合は、交換を検討するタイミングです。
NiSi独自のTRUE COLOR技術により、可変NDにありがちな色かぶりを最小限に抑えた高品質モデルです。ND2〜ND32の間をスムーズに調整でき、フレアやムラを極力排除した設計です。カラーグレーディング前提の映像制作や色再現にシビアな撮影現場で特に有効です。
サイズ展開は67mm〜82mm、スイフトシステム対応で着脱もスムーズです。ムラが出始めたら早めの交換を推奨します。
エントリーユーザー向けの可変NDフィルターで、ND3〜ND450相当まで広範囲をカバーできます。
外枠に調整目盛りがついており、直感的に濃度調整が可能。軽量かつ携帯しやすいため、日常の撮影やVlog用途に向いています。
コスパに優れており、NDフィルターを初めて使う方にもおすすめです。経年劣化による濃度ムラが生じた場合は買い替えを検討してください。
濃度を自在に調整でき、動画や明るい環境下での撮影に便利です。
MARUMIが展開するNDフィルターシリーズで、風景撮影や動画撮影での使用実績も多く、精度と耐久性に定評があります。撥水・防汚・帯電防止機能を備えた多層コーティングが特徴で、クリアな描写と高い耐久性を両立します。
ND8〜ND32までを個別に揃えるタイプで、目的に応じて使い分けできます。高い解像度と正確な色再現を求める風景写真や長秒露光に最適です。フィルター面の傷やコーティング劣化が目立ったタイミングが交換の目安です。
真空蒸着コーティングにより、均一で安定した減光を実現した高精度固定NDシリーズです。ND1000は特に白昼の長時間露光やバルブ撮影に適しており、水の流れや雲の動きを滑らかに表現したいシーンで活躍します。
高精度な色再現が求められるRAW撮影でも、色ズレが起きにくく、信頼性の高い設計です。コーティング剥がれや透過ムラが確認された場合は、早めの交換が望ましいです。

NDフィルターは、露出をコントロールすることで表現の自由度を大きく広げる撮影ツールです。
動画では自然な動き、写真ではボケや長時間露光といった表現が可能になります。可変NDは1枚で幅広く調整でき、屋外や動画に便利です。固定NDは安定した画質で、風景や商品撮影に向いています。
目的や使い方に合った1枚を選べば、撮影の幅が大きく広がります。
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