このセクションでは「3DCGとは何か」ということを解説していきます。
まず3DCGという単語ですが、これは文字通りに『3次元のコンピュータグラフィックス』という意味です。3次元とは、縦と横と奥行きの3つの座標を表す数値で、それぞれx,y,zと表現されることが一般的です。次に、3DCGを構成するいくつかの代表的な要素を解説します。
まずは『モデリング』というCGの物体を作成するステップがあります。家の形や人間の体などの形を作成する段階です。『ポリゴン』という単語を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、これは英語で多角形という意味で、モデリングはこのポリゴンの集合体と考えるのが一番簡単かと思います。
モデリングの次には『テクスチャ』というものを設定します。これは家の壁や屋根の質感であったり、人間の肌などの表現に用いられます。
『ライティング』も3DCGの表現には重要な項目です。風景のCGでは太陽の光であったり、部屋の中では窓から差し込む光であったり、3DCGをよりリアルに見せるために必要なステップです。
さらに、『シーンレイアウト』と呼ばれるステップがあり、これは仮想的にカメラを配置することによりどのようにCGが見えるかを設定する項目です。様々なレンズの設定があり、レンズの画角などを変えることで見え方が変わってきます。アニメーションの現場などでは、実写ではなくてもこのシーンレイアウトを『撮影』と呼ぶことも多いです。
最後のステップは『レンダリング』と呼ばれ、上記のステップが終わった後に最終的な画像や映像データを書き出すための出力処理を行います。処理によっては書き出しの完了まで数日かかることも珍しくありません。
一昔前までは、2Dアニメーションはセル画というシートを使い、背景と動きのあるシーンを1コマずつ撮影することにより制作されていましたが今はほとんどがパソコンのソフトに置き換わり、2DCGと3DCGとの境界線が曖昧になってしまっているのが現状です。
あえて例えるとすれば、2DCGと3DCGの最も大きな違いとしては3DCGには「奥行き」の概念があることです。もちろん2Dのアニメーションにも遠近感はありますが、制作過程において実際に仮想のカメラやレンズを用いるという点ではアプローチが異なります。
背景と登場人物などの画像を合わせていく手法は2DCG、登場人物や周りの背景などをモデリングしてシーンを作成した上で合成するのは3DCGという解釈も出来ます。
また、3DCGの表現技法として『トゥーンシェーディング(トゥーンレンダリング)』と呼ばれる手法があり、これは3DCGをあたかも手書き風のタッチに見せる手法ですが、こちらは見た目の点からたまに2Dととらえられることも少なくありません。
上記のように説明してみましたが、近い将来には2DCGと3DCGの区別がなくなり、両者合わせて単に「CG」と呼ばれるようになる日も近いのではないかと感じています。
このセクションではどのような場面で3DCGのデータが使われているのかを解説していきます。
まず映像に関してですが、現在のアニメーションやハリウッド映画などには、ほぼ全てといっても過言ではないくらい3DCGが使われています。登場人物が実写だとしても、爆発のシーンなどにVFXというCGの効果が使われていることも多いです。また、大量の群衆が登場する戦争のシーンなどはエキストラを全員用意すると莫大な予算がかかってしまうので、1/3くらいを実際に撮影して、残りはCGで処理して人数を増やしている場合もみられます。『パーティクル』と呼ばれますが、雨粒や雪のような表現を3DCGで表現し、合成しているパターンも多いです。
次に、アニメや映画以外に3DCGが利用されている例を紹介していきます。
私たちの生活に身近にある3DCGを活用したサービスの1つとして、家具のコーディネートサービスがあります。例としてニトリが提供しているスマートフォン用のアプリを紹介します。アプリの中にある気になる家具を選んで部屋の好きな場所にカメラをかざすと、そこに家具が実物大で配置され、まるでそこにその家具があるかのような体験をすることが出来ます。
これは導入の部分で少し触れた、『AR(拡張現実)』という技術が使われています。この家具のデータには3DCGのデータが使用されており、カメラの距離センサーに合わせたサイズで自動で拡大縮小して家具が配置される仕組みです。
インテリア試着アプリRoomCoAR
https://www.nitori-net.jp/ec/characteristic/roomco/
まだ一般的に広く浸透しているステージではありませんが、『VR(仮想現実)』という分野でも3DCGの技術が使用されています。ヘッドマウントディスプレイと呼ばれるゴーグルのようなものを目にかけて、投影されたコンテンツを見る仕組みです。ゲームだけではなく、不動産の部屋探しの際の内見に使われ始めていたり、店舗販売員の研修に使われるなど今後の発展に期待できる分野です。
このセクションでは、いくつかの3DCGソフトとその特徴を解説していきます。
まず1つめは無料で使用できる『Blender』というソフトです。無料ということもあり、世界中でユーザーが数多くいるためブログやYoutubeなどで情報を得やすいのがメリットです。3DCGに興味はあるけどいきなり高価なソフトを購入する事が難しい方におすすめなソフトです。
ここ数年で爆発的に有名になっているゲームの開発環境である『Unity』という開発ソフトがあります。これまでスマートフォンゲームとコンシューマーゲームの開発では、それぞれのゲーム用にそれぞれの専用環境で開発していました。しかし、このUnityを使うとゲーム専用機だけではなくスマートフォン向けのゲームなど、複数のプラットフォーム向けに書き出すことができるため開発のコストや労力が大幅に削減されるようになりました。
ゲームを立ち上げる時の画面にこのUnityのロゴが表示されているのを目にしたことがある方も多いと思います。2Dは勿論ですが、3Dに関してもかなり豊富な機能が搭載されており、各3DCGソフトとの連携もスムーズに行うことが出来ます。今後もこのUnityを使用したコンテンツが増えていくことは容易に想像できるでしょう。
次は『Shade3D』という国産のソフトです。2020年12月14日現在ではバージョンが21まで発売されており、かなり歴史のあるソフトです。こちらは機能に応じて3つのラインアップがあり、自分の使いたい機能に応じて購入するパターンとなります。国内で開発されているソフトのため、書籍などの情報が豊富にあり、本格的なソフトを使ってみたい方におすすめできるソフトです。ここ数年で普及している3Dプリンター用のデータも作成できるのがメリットの1つです。
この先は映画やアニメーションのプロの現場で使用されているソフトをご紹介いたします。(ソフトを使用するにあたっては相応のパソコンのスペックが要求されます)
統合的な3DCGソフトの代表格がこちらの3DS MAXです。大量の機能が備わっており、3DCGに関するあらゆる操作が可能です。また、『プラグイン』と呼ばれる拡張機能が数多く用意されており、用途に応じて自分の環境をカスタマイズしていける強みがあります。ただし価格もそれなりにかかるので、本格的な制作を考える場合に導入を検討する方が良いでしょう。
こちらも統合的な3DCGソフトです。以前は別の会社から発売されておりましたが、2005年からは上の3DS MAXの開発会社であるAutodesk社に統合されました。Mayaの特徴としては、VFXというCGエフェクト効果の機能が豊富なことです。水面や爆発などのシュミレーションの圧倒的なリアルさに関しては他のソフトでは再現が難しいのではないかと思うレベルです。この点で上記の3DS MAXとの棲み別けが行われていると考えて良いでしょう。
番外編として『AutoCAD』というソフトを紹介します。『CAD』という単語はどこかしらで聞いたことがある方も多いかもしれませんが、主に建築系の設計図を作成するソフトです。こちらのAutoCADはその図面から3DCGを作成できるソフトです。インターネットや電車内などの不動産の広告で完成前のモデルハウスやタワーマンションの写真を見かけることがありますが、それらはこのようなソフトを使用して作られています。
ソフトの価格ですが、数10万円から100万円近くするものまであり、購入にはかなりハードルが高かったのは事実です。ですが最近は『サブスクリプション』と呼ばれる形式が多く、月額や年額を支払うことでそのソフトを使用する権利を得られるケースが増え、導入に関する敷居はかなり低くなりました。
このセクションでは実際に3DCGがどのように使われているのかを動画のリンクとともに紹介していきます。
日本初のフル3Dアニメーションとして公開された作品で、アクションシーンや主人公の表情などには『モーションキャプチャー』と呼ばれる実際に人間にセンサーのようなものをつけて動きを検出したデータを3DCGに反映させるという高度な技術が使われています。前編CGで作られたアニメは当時としては珍しく、業界内外でも話題になりました。
こちらはこの記事の中盤で紹介したUnityを使用して作られたショートムービーです。本当にUnityで作られたのかと疑ってしまうほどのクオリティです。
TELYUKA(テルユカ)という夫婦のアーティストが生み出した日本の女子高生をイメージしたバーチャルキャラクターです。作品の公開当初は「実写かどうが判別がつかないクオリティ」ということでTwitterをはじめとしたSNSでかなりの反響があり、3DCGの潜在的なポテンシャルを見せつける意味でかなり話題となった作品です。
Pixer(ピクサー)社が制作したこの作品は、世界初のフル3DCGアニメーション映画として今でも色褪せず数多くの人々に愛されています。まさに3DCGアニメーションの金字塔と言っても過言ではないでしょう。
最後に紹介するのは完全に筆者の個人的な好みの作品です。子どもの頃に見たのですが、実写とCGの融合の凄さにショックを受け、VHSのテープがすり切れるほど見返した記憶があります。
駆け足ではありましたが、3DCGとは何かということからそれらがどのように制作されて活用されているのかを解説させていただきました。思ったより3DCGが活躍しているケースが多いと感じた方も多いのではないでしょうか。我々が目にする数多くの映像で使われており、無意識のうちに3DCGと触れ合っているのです。
この記事を通して少しでも3DCGが身近に感じられるようになったのであれば幸いです。もし興味があればフリーの3DCGソフト等を是非とも使ってみていただき、その奥深さに触れていただければと思います。
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