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動画選考とは、企業が応募者に対して「自己紹介」や「設問への回答」などを録画した動画を提出してもらい、それをもとに選考を行う手法です。Web面接とは異なり、あらかじめ録画された動画を企業側が任意のタイミングで視聴する形式で、主に書類選考や一次面接の代替として活用されています。コロナ禍をきっかけに広まり、現在では多くの企業がこの方式を導入しつつあります。
こうした動画選考が就活で広がっている背景には、企業と学生の双方にとって利点があるためです。以下では、それぞれの立場から見たメリットと課題を整理します。
企業側が動画選考を導入する背景には、業務効率や選考の公平性といった観点からの合理性があります。
複数の応募者と一人ずつ面接を行う場合と比べて、録画された動画を確認するだけで済むため、採用担当者の時間や人件費を大きく削減できます。日程調整などの事務負担も軽くなり、全体として業務の効率化につながります。
提出された動画は、担当者の都合に合わせて自由なタイミングで視聴できるため、選考の進行が大幅にスピードアップします。また、スクリーニングツールやAI評価の導入により、初期段階のふるい分けが自動化されている企業も増えています。
録画された動画を複数の面接官で共有・視聴できるため、評価の属人性を抑え、より客観的かつ平準化された判断が可能になります。これは、採用の公正性向上にもつながります。
一方で、動画選考は学生にとっても利便性がありますが、同時に気をつけるべき点も存在します。ここでは、主な利点と注意点を紹介します。
オンライン環境さえ整っていれば、自宅や静かなカフェなど、自分の落ち着ける場所で録画を行うことができます。緊張しやすい対面面接と比べて、安心感のある環境で本来の自分らしさを出しやすいという利点があります。
企業によっては録画を「一発撮り」に限定している場合もあります。何度でも撮り直せると思って油断していると、本番でミスをしても修正ができません。提出前の入念な準備と練習が不可欠です。

動画面接では、準備の質がそのまま評価に直結します。録画だからこそできる工夫と、録画ならではの落とし穴があるため、撮影前に押さえるべきポイントを確認しておきましょう。ここでは、提出前に確認すべき基本事項と、話し始めの印象を左右する冒頭の挨拶、カンペを使う場合の注意点について解説します。
企業によって動画の提出形式は異なります。ファイル形式(mp4やmovなど)、録画時間の上限(例:1分以内/3分以内)、指定されている設問の有無などを必ず確認しましょう。また、提出方法も「応募フォームにアップロード」「専用リンクから提出」「外部ツールで録画」といったパターンがあります。見落としがないよう、募集要項や案内メールを丁寧に読み込むことが重要です。
動画の冒頭は「第一印象」を決める非常に大切な部分です。最初の数秒で印象が大きく左右されることもあるため、明るくはっきりと話すことを意識しましょう。以下のような流れで自己紹介を構成するとスムーズです。
はじめまして。○○大学○○学部○年の○○ ○○と申します。
この度は貴重な機会をいただきありがとうございます。
本日は、自己紹介と志望理由についてお話させていただきます。
挨拶文は企業や設問内容に合わせて調整し、自分の言葉で自然に言えるよう練習しておくことが大切です。
多くの企業では、動画面接でカンペ(原稿)を使うことについて明確に禁止しているわけではないものの、ガイドラインに記載がない場合も多く、判断に迷うケースがあります。
実際には、目線や話し方が不自然だとマイナスの印象を与える可能性があるため、丸ごと読み上げるのではなく、要点を整理して覚えたうえで、補助的に使うのが無難です。

動画面接では、話す内容だけでなく、見た目の印象も評価に大きく影響します。録画である分、準備を徹底することで他の応募者と差をつけやすいパートでもあります。ここでは、撮影時のカメラ位置や背景、服装といった「映り方」に関する工夫を中心に紹介します。
カメラは目の高さに合わせるのが基本です。見下ろす角度や見上げる角度では表情が伝わりづらく、印象が弱くなってしまいます。ノートパソコンを使用する場合は、スタンドや箱などを使ってカメラの位置を調整しましょう。
背景には生活感が出すぎないよう注意が必要です。自宅で撮影する場合は、白壁や棚などシンプルな背景を選び、余計な物が映り込まないよう整理しておきましょう。どうしても避けられない場合は、バーチャル背景の使用も一つの手段ですが、動きや画質の乱れに注意が必要です。
顔が暗く映ると表情が伝わりづらくなるため、自然光の入る日中の時間帯に撮影するのが理想です。補助的にデスクライトなどを使用して、顔全体が均等に明るくなるよう調整しましょう。また、マイク付きイヤホンを使うことで、周囲の雑音を抑えてクリアな音声を届けることができます。
服装は「普段の就活面接と同様」を意識してください。自宅とはいえ、スーツまたはオフィスカジュアルを基本とし、清潔感のある髪型や整った服装を心がけましょう。企業によっては「私服可」としている場合でも、あくまで信頼感を与える装いが無難です。
カメラ目線を維持することで、「相手に向かって話している」印象を与えられます。画面に映る自分の姿を見ながら話すと、どうしても目線が下がってしまいがちなので、意識的にレンズを見ながら話す練習をしておきましょう。
視線が左右に泳いだり、落ち着きがない様子はマイナス評価につながる可能性があります。話す内容を覚えたうえで、安定した目線と穏やかな表情を保てるよう、繰り返し練習することが大切です。

録画型の動画面接では、表情や声のトーン、話すスピードといった「非言語的な要素」も評価対象になります。ここでは、自然で好印象を与える話し方のポイントを紹介します。
動画が始まった直後の表情と声の印象は、合否に大きな影響を与えることがあります。無表情やぼそぼそとした話し方は、それだけで「自信がない」「覇気がない」と見なされかねません。
録画を開始する前に深呼吸をして、笑顔を作る準備をしておきましょう。話す際はややゆっくりめに、明るく張りのある声で話すことを意識すると、安心感や信頼感を与えることができます。
設問に答える際は、結論を最初に述べ、その後に理由や具体的なエピソードを加える「結論ファースト」の構成が効果的です。録画では視聴者が途中で離脱する可能性もあるため、話の核心を先に伝えることで内容が伝わりやすくなります。
ダラダラと話し続けるのではなく、「1設問につき1〜2分で完結させる」意識を持ち、相手に負担をかけないコンパクトな伝え方を心がけましょう。
身振り手振りは控えめに取り入れることで、言葉の説得力を増す効果があります。ただし、動きが多すぎると落ち着きがない印象になるため、要所で使う程度にとどめましょう。
また、語尾を伸ばさず、言い切るように話すことで自信が伝わります。要所で「間(ま)」を取ることで、言葉が整理され、聞き手に余韻や理解の時間を与えることができます。

撮影が終わったら、必ず内容を見直し、音や画質なども確認しましょう。動画提出は撮って終わりではなく、確認して納得してから出すことが非常に重要です。
多くの企業では「過度な編集」は推奨していません。明らかな言い直しやカット割り、テロップの挿入などは避けるべきです。一方で、音量の調整や冒頭の余白カットなど、内容に影響を与えない最低限の編集は許容される場合もあります。
企業によっては「無編集で提出」と明記されているケースもあるため、ガイドラインの確認は必須です。迷った場合は、なるべく編集せず自然な形で提出しましょう。
動画を再生し、声が小さすぎたり、環境音が気になったりしないか確認します。エアコンの音や室外の騒音が入っていないか、イヤホンでチェックするのが効果的です。また、画面が暗すぎないか、顔がはっきり映っているかも必ず確認してください。
以下の項目をチェックし、不安があれば撮り直す勇気も必要です。たとえ時間がかかっても、完成度を高めた一本を提出するほうが後悔のない結果につながります。

録画面接では、ちょっとした見落としが大きな減点対象になることもあります。以下に、特に注意すべき失敗例をまとめます。
内容がダラダラと長くなると、相手の集中力が持ちません。また、感情が伝わらない無表情や、聞き取りづらい小声は大きなマイナスになります。簡潔に、そして明るく話すことを意識しましょう。
視線が下がったままだったり、明らかに文章を読んでいると感じさせてしまうと、「準備不足」「意欲が伝わらない」と受け取られてしまいます。カンペを使う場合は、目線をカメラに近づけ、キーワードだけを補助的に確認する形がおすすめです。
部屋の散らかり、生活感のある背景、カジュアルすぎる服装などは、たとえ話し方が丁寧でも悪印象につながります。背景・服装・髪型は、必ず撮影前に整えておきましょう。

動画面接は、話す内容だけでなく、環境・話し方・映り方まで総合的に判断される選考形式です。事前準備にどれだけ手を抜かず取り組めるかが、合否を左右する大きな分かれ目となります。
「ただ話す」だけでなく、「どう伝わるか」を意識して準備を重ねましょう。
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