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2022年動画広告の市場規模は、2021年対比で133.2%成長し5,601億円となりました。今後もさらに成長を続け、2026年には1兆2,451億円に達すると予想されています。動画広告の需要が増えている理由としては、以下の4点が挙げられます。
参照元:サイバーエージェント、2022年国内動画広告の市場調査を実施
スマートフォンが普及し、4Gや5Gなどの通信システムが発展したことで、YouTubeなどの動画視聴サービスが充実しました。そのため、ユーザーは動画コンテンツを消費することが多くなっています。
動画コンテンツを消費するユーザーが増加したことで、ユーザーに商品やサービスをプロモーションするためのタッチポイントは、テレビからインターネットにシフトしています。その結果、動画広告の需要が増え、市場が拡大したのです。
静止画や文字とは異なり、動画では音声を用いることが可能です。ユーザーに届けられる情報量が多く表現の幅も広いため、印象に残りやすいでしょう。
動画を用いることで、商品やサービスを実際に利用する場面を再現できます。ユーザー自身が利用しているイメージがつきやすく、購入促進に繋がるのです。
動画広告では、年齢・性別・地域・時間帯・コンテンツなどによってターゲティングできます。テレビCMではテレビを見ているすべての人に視聴されますが、動画広告ではターゲットユーザーに絞ることができるため、効率的に広告を配信できるのです。
動画広告の主要媒体をご紹介します。
YouTubeは、世界で最もユーザー数の多い動画配信サイトです。
YouTube広告では、TrueViewとよばれるインストリーム広告が最も主流でしょう。動画コンテンツの再生前・再生中・再生後に表示される広告です。
再生方式は、強制的に完全視聴させるものと「5秒後スキップする」というボタンを表示するスキップが可能なものがあります。確実に見てもらえる点がメリットですが、ユーザーに不快感を与えるリスクがあるでしょう。
YouTube広告には、検索結果・動画プレイヤー下部・おすすめ欄などに表示させられる「インフィード広告」もあります。
TrueViewとは異なり、ユーザーが動画を視聴する際に表示されるものではありません。不快感を与えにくいでしょう。ユーザーがクリックすることで始めて動画が再生されるため、関心度の高いユーザーに見てもらいやすいです。
年齢・性別・地域・動画コンテンツのカテゴリなど、詳細にターゲティングすることも可能です。
CPC課金・CPM課金・CPV課金から選択できます。
CPC課金はクリック単価、CPM課金は1,000再生単価、CPV課金は再生回数単価です。CPC課金は1クリックあたり3~20円、CPM課金は1,000再生あたり400~600円、CPV課金は1再生あたり5~10円となっています。
世界最大のSNSであるFacebookにも、動画広告を掲載できます。
Facebookは、ビジネスパーソンから学生まで幅広い層のリーチを獲得することが可能です。動画広告は、各ユーザーのニュースフィードや動画再生ページに掲載されます。Facebookのユーザーアカウント情報を用いた精度の高いターゲティング技術で、ターゲットのユーザーに動画広告を届けられるでしょう。
インパクトのある広告や印象的な広告などはシェアされるため、副次的な効果も期待できます。
CPV課金・CPM課金・CPC課金から選択できます。CPV課金での課金ポイントは10秒です。価格は任意で、最低出稿金額はありません。CPC課金は、リンクがクリックされた回数に応じて料金が発生します。
Instagramは、世界最大の写真SNSです。若年層のユーザーが多く、気になった写真や動画をシェアする活動が盛んです。
Instagramの開発元はFacebookのため、Facebookと共通のプラットフォームから広告を出稿することができます。Instagramのユーザーデータに加えて、Facebookのユーザーデータも用いて精度の高いターゲティングを行うことが可能です。
ビジネスパーソンに強いFacebookと合わせて利用することで、幅広い層のリーチを獲得できるでしょう。
CPV課金・CPM課金・CPC課金・CPI課金から選択できます。CPV課金の課金ポイントは10秒です。価格は任意で、最低出稿金額はありません。
CPV課金は1回4~7円、CPM課金は1クリック500~1,000円、CPC課金は1クリック40~100円、CPI課金は1インストール100~250円ほどが相場です。
Xのタイムラインにも、動画広告を掲載できます。
広告は可視領域に入ったタイミングで自動再生され、音声はデフォルトでOFFとなっています。アカウントの過去のツイートやフォローしているアカウントなどからユーザー属性をセグメント化することで、効果的な広告配信を実現可能です。
Xはリアルタイム性に長けており、ハッシュタグなどを用いてテレビを視聴しながらコンテンツの消費や生成を行っている人も多いです。テレビCMと組み合わせた広告出稿なども見られる点が特徴といえるでしょう。
X(旧:Twitter)には、CPF課金・CPC課金・CPM課金・CPE課金・CPAC課金・OAB課金・CPI課金・CPV課金と、さまざまな課金形態が用意されています。
CPF課金はフォロワー増加数、CPE課金はお気に入りやリツイートなどのエンゲージメント数、CPAC課金はアプリダウンロード画面への遷移数、OAB課金はアプリインストール数に応じて報酬が発生します。
Googleでは、YouTubeだけではなくGoogleが連携するネットワークに動画広告を配信可能です。広告フォーマットとしては、インストリーム広告・アウトストリーム広告・バンパー広告などが挙げられます。
CPV課金とCPM課金から選択できます(広告フォーマットによる)。CPV課金で課金ポイントは30秒です。価格は任意で、最低出稿金額はありません。
Yahoo! JAPANや国内の主要媒体を含むネットワークに、動画広告を配信できます。Yahoo! JAPANトップのタイムライン面や、Yahoo!ニュース、Yahoo!天気など、若年層から高年層まで幅広いユーザーにリーチすることが可能です。
Yahoo! は検索エンジンもあるため、検索データを用いたターゲティングやYahoo! JAPANのユーザーIDを用いたターゲティングによって、精度の高い配信が可能となっています。
CPV課金で、課金ポイントは10秒です。価格は任意で、最低出稿金額はありません。
LINEは、国内で最も利用者の多いメッセンジャーアプリです。タイムラインやLINE NEWSなどに動画広告を掲載できます。幅広いユーザーが利用しているアプリですが、なかでも若年層の利用頻度・滞在時間が長いため、若年層に向けたプロモーションが効果的でしょう。
タイムラインは、FacebookやInstagramと同様にコンテンツのシェアが可能です。印象的な動画を制作し出稿できれば、拡散される可能性もあります。
課金形態は、CPV課金・CPM課金・CPC課金から選択できます。価格は任意で、最低出稿金額はありません。
TikTokは、1分前後の短尺動画が多く投稿されている動画共有プラットフォームです。若年層を中心に高い人気を誇ります。特徴は、短尺動画をワンスワイプで次々に視聴できる点でしょう。
スマートフォンに最適化された縦長動画が中心であることも、これまでの動画共有プラットフォームと大きく異なる点といえます。10〜30代のマーケティングには非常に使いやすいSNSです。
CPC課金・CPM課金・CPV課金・契約期間課金から選択可能です。
ただし、広告の形態によって選択できる課金形態が異なります。CPC課金は1クリック30〜100円、CPM課金は1,000再生につき100〜1,000円、CPV課金は1再生あたり3〜20円です。
動画広告におけるABテストとは、どのような内容の動画がより効果があるかを検証するためのテストです。
AとBの2パターンの動画広告を用意してユーザーにランダムで表示し、どちらがよりよい反応を得られるかを検証します。3パターン以上で検証する場合もありますが、パターンが多すぎると何を変更すると反応がどう変化するかが曖昧になるため、2〜3パターン程度でテストするのが一般的です。
動画広告のABテストを行うメリット・デメリットを解説します。
動画広告においてABテストを行うメリットは、広告クリエイティブの改善を行える点です。テストを継続すれば、今後のクリエイティブ制作に活かせるノウハウも蓄積されるでしょう。フォントサイズや配色、構図などに関するノウハウが蓄積されれば、よりよい広告を作りやすくなります。
季節要因やアルゴリズム変動などによる影響を受けにくいこともメリットです。「広告A→広告A’」と差し替えて反応を検証した場合、差し替え前後で季節やアルゴリズムなどに変化があると、何が原因で反応が変化したのかがわかりません。
ABテストでは同時に2つの広告を出して反応を比較するので、外的要因の影響を受けにくいです。よりクリエイティブの単純比較がしやすくなるでしょう。
ABテストを行うデメリットは、効果の薄い広告でも一定期間は出稿しないといけない点です。広告費の費用対効果や、マーケティング施策のスピード感などを考慮すると、効果の薄い広告を残すことは大きなデメリットになるでしょう。
結果に有意差がないケースがあることもデメリットの一つです。AとBで反応に差がない場合や、正しいクリエイティブ制作ができておらず適切な反応がない場合など、意味のある結果が得られない可能性があります。
動画広告におけるABテストのやり方は、以下のとおりです。
まずは、動画広告出稿の目的を明確にしましょう。ブランディング・認知拡大・購入促進など、広告の目的を再確認します。追うべき指標(Impression数・View数・視聴完了率・クリック数など)も明確にすることで、テスト結果の分析を正確に行えます。
動画広告におけるABテストは、以下の2つの要素で行うと効果的です。テストを正確に行うためには、一度のテストで比較する要素は一つにしましょう。
動画広告のストーリーやBGM、字幕などのABテストを行います。
ユーザーが視聴するクリエイティブは、最も優先的にテストを行うべき要素です。クリエイティブのなかでも、複数の要素を同時に変えると要因の分析が難しくなるでしょう。比較を行う要素は一つにする必要があります。
選定したメディアやターゲティングが最適な状態になっているか、ABテストを行います。
メディアやターゲティングセグメントを変更して、指標の変動を確認しましょう。商品やサービスについて定義したターゲットと実際の効果が連動しているか、すなわちターゲットの設定が適切であるかも評価可能です。
テストや結果の分析を行うためのツールを選定します。掲載メディアや掲載方法に合ったツールを選ぶことが重要です。
テスト結果を分析し、ターゲット設定の適切さや相性のよいメディア、ターゲティングセグメント、効果のあるクリエイティブを明らかにします。分析結果は、今後の広告制作や配信に活用しましょう。
動画広告のABテストで成果を出すコツは、以下の3点です。
テスト結果を正しく分析するために、比較する要素、すなわち変更する要素は一つに固定しましょう。複数の要素を変更してテストを行うと、変化があった数値に寄与した要素の特定ができません。有益なテストにならない可能性があります。
ABテストをする際は、トラフィックを平等に分割してください。トラフィックの意味合いが曖昧な場合は「ユーザーを平等に分割する」と考えても問題ないでしょう。
例えば、商品のプロモーション動画についてABテストを行うとき、興味を示しそうなWeb行動を行っているユーザー群とそれ以外の群など、AとBそれぞれのユーザー群に偏りがあると、純粋な比較結果を得られません。そのため、それぞれの群でテストユーザーの属性を揃えるか、完全にランダムトラフィックとする必要があります。
動画広告は、静止画の広告と比べてユーザーに届けられる情報量が多く、ユーザーに印象を与えやすいです。
一方、同じクリエイティブを繰り返し配信することによってユーザーに飽きられ、広告効果が落ちる可能性があります。そのため、常に新しいクリエイティブを用意し、ABテストを走らせて効果が見込めるクリエイティブを配信し続けることが重要です。
効果のあるクリエイティブを配信し続けることで、広告効果の低迷を軽減できます。
動画広告のABテストを行うイメージが湧かない方は、よくある事例を調べましょう。以下、動画広告ABテストでよく行われる事例や勝ちパターンをご紹介します。
動画媒体によって、CTAを選べます。CTA(Call To Action)ボタンを押すことで、外部Webサイトなどへ誘導・遷移させることが可能です。
例えばTikTokの場合、ディスプレイカードとよばれるポップアップを出すパターンや、ボタンリンクのみを表示するパターンなどがあります。ディスプレイカードを表示させる場合は、動画より目立つようにすることと、TikTok体験を引き上げる色を使用することが推奨されています。
ディスプレイカードのABテストや、ボタンテキストのABテストなどを行い、勝ちパターンを見つけましょう。
カットの数は、動画広告の印象を大きく左右します。カットが多く場面が頻繁に切り変わる動画は、テンポ感のよさが表現できるでしょう。ワンカットを長くすると、じっくりと魅せるような動画になります。
動画広告の場合、短い時間で視聴者に見入ってもらう必要があるため、カット数を増やして引き込まれるように制作するケースが少なくありません。お茶のCMなどはワンカットを長めにし、落ち着きや余裕を演出するケースもあります。
カット数は、製品やサービスがもつ印象によって勝ちパターンが変わるといえるでしょう。
動画尺を変えてABテストを行うケースもあります。動画広告の尺を変えるだけでなく、広告の出稿設定を変えて、スキッパブル(スキップ可能)とノンスキッパブル(スキップ不可)で比較するケースもあるでしょう。
ノンスキッパブル広告の場合、視聴者の心を掴めればしっかりと情報を伝えられますが、不快感を与えるリスクもあります。スキッパブル広告は不快感を与えにくいものの、そもそも見てもらえないことがあるでしょう。
動画の内容によって適切な動画尺を考えることも、勝ちパターンを見つけるために重要といえます。
テーマカラーの変更も、ABテストにおいてよく使われる手法です。「青と赤」のように極端なものだけでなく「青と水色」などの微妙な違いで変化を確認するケースも少なくありません。テーマカラーの変更によって広告の印象は大きく変わり、反応がまったく異なる事例も多いです。
テーマカラー選定では、目立つかどうかで判断しないことが重要です。カラーはブランディングにおいて重要な意味をもちます。製品やサービスの特徴に合った色なのかを軸として、パターンを作成しましょう。
テーマカラーをほんの少し明るくして印象に残る色合いにする、暗くシックな雰囲気にしてターゲットの琴線に触れる雰囲気作りをするなどの勝ちパターンがあります。
キャッチコピーを2パターン用意し、どちらのほうがCV率が高いかを調査した事例もあります。
キャッチコピーは、一流のプロでも必ず最適な文章を作れるわけではありません。ほんの些細なニュアンスの違いでも反応が変わるので、ABテストで最適なコピーを探るケースが多いです。
キャッチコピーに関しては明確な勝ちパターンはありませんが、基本的に文章を短くすることが大切とされています。特に、動画広告はながら見が基本なので、長く難解な文章は聞き入れてもらえません。短く印象に残り、かつ特色をしっかりと表した文章となるようブラッシュアップしましょう。
動画広告は、最初の3〜5秒でどのくらい興味をもってもらえるかが勝負です。導入部分の内容を2パターン作成し、反応を見るケースも多いです。具体的には、セリフを変える、カット数を変える、動画素材を差し替えるなどして、テストを行います。
よりターゲットが共感しやすい内容になれば、導入以降の部分も見てもらえます。「自分も同じことに悩んでいるな」「このサービスはよさそうだな」と思ってもらえるよう、情報の入れ方や素材の使い方を工夫しましょう。
数年前から勝ちパターンとして広く活用されているのは、俳優・女優が「スキップせず見てね!」と問いかける手法です。
今回は、動画広告のABテストが重要な理由と、成果を出すためのポイントについて解説しました。動画広告は、映像と音声を用いて一度に多くの情報量をユーザーに届けられるため、ブランディングや販売促進に高い効果が期待できるでしょう。
一方で、受け取る情報量が多い分、短期間で広告に飽きて広告効果が薄れる傾向にあります。広告効果が薄れないようにする方法が、ABテストです。
短いスパンでABテストを行って複数のクリエイティブをユーザーに届けることで、ユーザーに飽きさせない広告配信を実現します。効果の高いクリエイティブを配信し続けることで、高い広告効果を維持できるでしょう。
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