ユーザビリティテストとは、文字通りusability(使い勝手の良さ)を調べるためのtest(試験)です。
国際標準化機構のISO 9241-11では、ユーザビリティは『有効さ』、『効率』、『満足度』、『利用状況』によって定義されています。
この記事では、サイトの改善のためのユーザビリティテストを中心に考察していますが、ユーザビリティテストは、企業によっていろいろな呼び方があり、『製品テスト』や『設計検証』などもユーザビリティテストの一環です。
また、サイト改善のためのユーザビリティテストには、定量的ユーザビリティテストと定性的ユーザビリティテストがあります。
ユーザーがサイトを利用して特定の動作を行った際の、タスクの達成率やエラーが起きた回数などをもとにサイトの利便性を測るもので、代表的なテスト方法にはアンケートなどがあります。
回答は『はい』、『いいえ』と明確ですが、具体的な問題点を発見しづらいと言う欠点があります。
主に、インタビュー形式やグループディスカッションと言った方法で行われるユーザビリティテストです。実際にサイトを利用している状況を観察できるため、客観的にサイトの問題点を発見することができます。
ユーザビリティテストが必要な理由には以下が挙げられます。
サイトを訪れるユーザーは千差万別です。自社サイトのターゲットによっては、机上の対策だけでは不十分なことも考えられます。
ユーザビリティテストによって、実際にサイトを利用してもらうことで、自社のサイトに必要な具体的な改善点を明らかにすることができます。
実際に、ユーザーがサイトを利用しているところを観察することで、具体的な問題点が判明します。
サイトを利用中、どの部分でユーザーの手が停止してしまうのか、明らかに興味を失ったのはどの部分なのかなどを分析することで、サイトを構築している問題点が具体的に把握できるようになります。
ユーザーの利便性が改善されたサイトでは、コンバージョン率の向上が見込まれます。
サイトの使い勝手が向上することで、ユーザーのストレスが軽減され、サイトからの離脱率減少が見込めます。結果的に、提供するサービスのコンバージョンにも結びつきます。
ユーザビリティテストには、大きく分けて
に分類できます。
もっとも手軽に実施できる定性的ユーザビリティテストです。
社内の人間や家族などに協力してもらうことで費用対効果を高めることができる反面、サービスの概要を知っていたり、親族としての感情が入ったりするため正確な情報が得られにくいこともあります。
メリットとしては、
デメリットとしては、
などが挙げられます。
オンライン環境を利用して実際にサイトを利用してもらい、利用状況やアンケートに答えてもらうテスト方法です。
対象はネット環境さえ整っていれば海外でも可能なため、広い地域、異なった習慣のユーザーにもテストに参加してもらうことができます。多くのデータを効率よく集めるのに適したテスト方法と言えます。
メリットとしては、
デメリットとしては、
などがあげられます。
広く行われている定性的ユーザビリティテストです。
通常、専門のコンサルタントと1対1で行います。ユーザーには、指定したタスクを消化してもらい、その状況を観察し、ポイントごとにヒアリングなどを行っていきます。
高い精度のデータが集められる代わりに費用が高額になりやすいです。
メリットとしては、
デメリットとしては、
と言ったものがあげられます。
ユーザビリティテストを効果的に行うには、しっかりとした手順を踏む必要があります。ここでは対面型のユーザビリティテストの手順を説明していきます。
まずは、なぜユーザビリティテストが必要なのかをしっかり把握することが大切です。
たとえば、すでにサービスを提供しているサイトである場合、データを分析して十分な効果が得られているのかを確認します。その後、ページからの離脱率を加味して、コンバージョン率の底上げが可能なのか判断します。
ユーザーの実際の動向を分析することで、サイト構成の改善点がわかります。あらかじめ予想できる改善点を洗い出し、被験者のタスクに組み込むことで、ユーザーと自社判断の相違点が確認できます。
一方で、これからサービスを始めようと考えている場合は、プロトタイプのサイトを操作してもらい、改善点を発見していきます。
この場合は、複数のプロトタイプを用意し、視認性や操作性、分かりやすさといった項目ごとに比較してもらうことで、さらに情報を絞り込むことも可能です。
実験には、プロタイプ作成時の問題点や予測できる改善点などをピックアップしておくようにしましょう。
事前に提案された問題点について仮説を立てます。
問題のタスクを処理するにあたり、ユーザーがどのように行動するかを予測するのです。タスクを解決するのか、離脱するのか、解決するとしたらその方法はどんなものかなど、ユーザーの行動パターンを予測します。
また、ページに到達するまでの動きをシミュレートし、実際のユーザーの動きとの差を検証することも大切です。自社で設定した導線が使われていない場合、ユーザーライクではなかったと判断できます。
多くの情報を集めるためには、適切なタスクが多数必要です。実際に、サイトに訪れ離脱するまでを想定し、ユーザーが取る可能性のある行動を予測して可能なかぎりのタスクをあげておきます。
ユーザビリティテストは、実際にユーザーがサイトを利用することで、アンケートなどよりも的確で多くの情報を集めることができます。
しかし、そのためには高いスキルを持った観察者と複数の被験者が必要となります。
一般的な対面型テストの場合、5人の被験者がいることでサイトの改善点の85%が判明すると言われています。
また、被験者には自社のサービスにあった人物を用意することも重要です。あまりにサイトのペルソナとかけ離れた人物では、ユーザビリティテストの意味が無くなってしまうためです。
実際、タスクを行ってもらうシチュエーションを構築します。
テスト場所にはできるだけ静かで作業に集中できる環境を選びます。有料のレンタルルームやワーキングスペースなどが適しているでしょう。また、被験者が長い時間ストレスなく作業できるよう、リラックスできる椅子と高さの合った机を用意するようにしましょう。
パソコンやマウス、キーボーと言ったアイテムは、できるだけ被験者が普段使用しているものに近いものを用意します。
インターネットの通信速度は標準で構いませんが、あまりにも通信速度が遅いとそれ自体が強烈なストレスになってしまい、他のデータの信憑性が薄くなってしまいます。
その他には、被験者の承諾を取った上で会話を録音するレコーダーやアクションを残すためのビデオカメラ、タイムを計測するストップウォッチなどが必要です。
個人情報に関わるデータも収集対象になるため、事前に機密保持や個人情報の利用に関する承諾書などの用意しておきましょう。
被験者には、テストの目的と行ってもらうタスクについて説明します。
必要以上の説明は余計な先入観が生じてしまうこともあるため、目的に関してはそれほど神経質になる必要はありません。ただし、被験者からの質問に関しては丁寧に答えるようにしましょう。
被験者が行った過程は、記録者によって細かく記録していきます。
全てのテストが終わったら、今度はテスターや記録者から気になった点についてのインタビューを行います。インタビューは、記録者がチェックしたポイントについて行われますが、その際ビデオや記録を再生しながら確認することで、より高い精度の情報が集められます。
収集したテスト結果は、できるだけ時間をおかずに分析するようにします。
テスターや記録者の記憶だけでなく、テスト後に被験者に確認したいことがあった場合にも、テスト日から近ければ近いほど、記憶が鮮明に残っているからです。
分析は、シミュレーションなどで事前に予測したデータと、実際に収集されたデータを突き合わせ、比較検討する形で行います。
また、テストによって明らかになった問題点をピックアップし、その改善方法を検討することも必要となります。
ユーザビリティテストの結果、判明した問題点を解決するためにサイトを作り直します。
この時に注意するのは、被験者から得られたデータを、有効さ、効率、満足度、利用状況に分けて改善していくことです。
また、定性的テストによって判明した問題点を改善したあとは、定量的にも分析することが大切です。
問題点を改善したサイトを公開し、実際にどのように変化したのかを確認します。
確認には、Googleアナリティクスなどを使うと便利です。Googleアナリティクスは、定量的ユーザビリティを確認することに特化しているため、改善結果を数値として確認することができます。
たとえば、ユーザーサマリーの平均セッション時間は、ユーザーがどれくらいサイト内に滞在してくれるかを確認できますし、目標全体の放棄率では、あらかじめ設定しておいた目標に対し、タスクを開始したのち途中で放棄・離脱してしまった割合を確認することができます。
検証結果を元にして、ユーザビリティテストの結果がどのくらいサイトに反映されているのかを確認し、不十分な点をふたたび洗い出し、実践・検証を繰り返していきます。
その過程で、必要であれば再度ユーザビリティテストを行っていきます。この場合のテストは、必ずしも対面型で行う必要はなく、必要な情報が絞り込めているのなら簡易型でもオンライン型でも可能です。
ユーザビリティテストを行うことで、自社のサイトの利便性が高まり、コンバージョン率など多くの部分で数値の改善が期待できます。また、ユーザーにとってストレスのない使いやすいサイトを提供できるというメリットも生まれます。
ぜひ今回の手順を参考にしていただき、サイトのユーザビリティテストを行ってみてはいかがでしょうか。
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