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そもそもマーケティングとは「誰に対してどのようにどれだけの商品を販売するか」といったビジネス戦略を立てることです。個別のお客様や企業に対してアプローチをかけるのは営業職のポジションについている者の仕事ですが、マーケティングは商品自体の開発や企画段階から携わり、価格の設定やプロモーション活動の具体的な策定など、根本から戦略を練らなければなりません。そこで役立つのが「マーケティング心理学」です。
マーケティング心理学とは「ターゲットである顧客の心を掴み、商品を手に取っていただき、利益に繋げることが期待できる行動心理学」のことを指します。先述したマーケティングでどれだけ戦略を打ち立てても、顧客の心に響く戦略でなければ利益を生み出すことは難しいといえるでしょう。
一方、マーケティング心理学を活用することで、消費者の心を狙って掴みにいくことができるだけでなく、販売者側の意図を明確に伝えられるといった利点もあります。有形無形問わず商品を販売するためには、ただ闇雲にマーケティングを行うのではなく、人の心理を理解し、的確な策を立てていく必要があります。マーケティングと心理学は一見関係の無いように感じるものです。
しかし、マーケティングは販売者側の一方的な戦略では成功することは極めて難しく、顧客・消費者の心理を理解することは必要不可欠です。当たり前ではありますが、人の心理を理解するために心理学は大いに役立ちます。その点においてマーケティングと心理学は密接に関係しているといえるでしょう。
マーケティング心理学は、実際どのような部分がマーケティングにおいて重要とされているのでしょうか。ここでは、マーケティング心理学の重要性について解説します。
商品を販売するからには利益を出すことが求められます。個人・法人関わず利益をあげることができなければ、事業として成長することは難しく、今後の運営にも大きく影響します。また、せっかく商品を販売するならば、多くの人に商品を手に取って貰いたいと考えるものです。
マーケティング心理学を理解して的確にビジネス戦略に取り入れることで、顧客の心をしっかりと掴むことに繋がり、利益の向上を意図的に狙うことが可能です。マーケティング戦略を立てる際は、つい自社の利益にばかり目が行き、顧客心理を二の次に考えてしまいがちな方も多いものです。
しかし、顧客の心を掴むことができなければ、商品を購入して貰えないだけでなく、認知して貰うことも難しいといえます。マーケティング心理学を学び理解し、実際のマーケティング戦略に活用することで、極めてリアルに顧客の心理を把握できる可能性が高まるだけでなく「自社の商品を手に取って貰える」「リピーターに繋がる」「認知度を高めることができる」といった自社の利益に繋がる効果を期待することができます。
「商品を販売する」ことはつい機械的に捉えがちですが、その先には心を持った人がいます。マーケティング心理学は利益と直結する重要なキーポイントと言っても過言ではない程、重要性は高いといえるでしょう。
「新商品はどのようなものを開発していくのか」「価格はどのくらいが適切か」「販売時期として適しているのはいつか」といった具体的な施策を立てる場合においても、マーケティング心理学は力を発揮します。いくら「自社で販売して世に売り出していきたい」と強く思っても、それが顧客の心に響かなければ手に取って貰うことは難しいでしょう。また、どれだけ素敵な商品だとしても、顧客心理をうまく掴んでいなければ、広く認知されることは期待できません。
マーケティング心理学を取り入れながら施策を検討することで、的外れな施策を生み出してしまうリスクを回避することが期待できます。無駄な施策を立ててしまうことが避けられるため、効率的に案を出して検討することができるので、スピード感を持って事業を進めることができるでしょう。
顧客の求めているモノやサービスと自社で販売していきたいモノやサービスを合致させることは、知識と経験が無ければなかなか難しいといえます。
しかし、マーケティング心理学を知っていれば、顧客ニーズを的確に狙える可能性が高まります。事業をスムーズに進めるといった点においてもマーケティング心理学は極めて重要であるといえるでしょう。
マーケティングの効果を高める心理学は数多くあります。ここでは、代表的な10の心理学を抜粋してご紹介します。
ザイオンス効果とは、接触する頻度が多くあるほど高感度が上昇するといった行動心理学であり「単純接触効果」ともいわれています。
短期間のうちにホームページで同じ広告を何度も目にしたり、同じテレビCMを繰り返し見た経験のある人もいるのではないでしょうか。このように短い間で何度も目につくようにすることで興味をひき、好感を誘発することが期待できます。
とはいえ、ザイオンス効果を得たいばかりにあまりにしつこく接触の機会を設けてしまえば、逆に嫌悪感を抱かせてしまうことも考えられます。広告の表示回数やタイミングは、慎重に検討する必要があるといえるでしょう。
アンカリング効果とは、はじめに受けた印象・情報がその後に行う行動や意思決定に影響を及ぼす効果のことを指します。
例を挙げると「通常価格1万2,000円のコートが特別価格9,000円で販売」という表記をしている場合、はじめに通常価格の1万2,000円を表記することで「9,000円が安い」と顧客は感じやすくなるのです。このように、はじめに値引き前の価格表記をあえてすることにより、アンガリング効果を狙うことができ、顧客の購買意欲を高められる可能性が高まります。
ただし、値引き前の価格を極端に釣り上げるといったことをすれば、景品表示法など法律に違反する危険性もあるので気を付けましょう。
アフォーダンス効果とは、それまでに体験してきたことや経験してきたことによって培われた考え方が、現在の行動に繋がっている心理効果のことを指します。アフォーダンスという言葉は、英語のafford(与える・もたらす・供給)という意味が由来であるとされています。
有名な例として、ウェブサイトのリンク表示があり、ウェブサイトで青色の文字に下線表記がされていると、そこをクリックすれば他のページに遷移できると判断する人がほとんどでしょう。これは、経験していなければそのように判断することができないものです。
また、普段の生活の中で例を挙げるならば、ドアを用いた例が有名でしょう。ただドアがあるだけではどのように開閉したら良いのか判断ができませんが、ドアノブがついていたらどうでしょうか。そのドアノブの形状から「押すか引くかで開閉できる」「スライドさせることで開閉できる」などの判断をするでしょう。
しかし、仮にスライド式のドアに普段押したり引いたりして開けるためのドアノブが付いていた場合、私たちは今までの経験からうっかりドアを押し引きしてしまう可能性が高いのです。
このアフォガード効果を応用することで、顧客に対し意図的に企業側の考えている選択肢をたどらせることが期待できます。
バンドワゴン効果とは、物事を判断するときに、自分の意見だけでなく知人や世間など周囲の意見や評判などに左右される心理学のことを指します。
洋服や雑貨などを購入する際に「SNSで人気!」「店頭売り上げナンバー1」などの宣伝表記を参考にしたり、飲食店を選ぶ時に「行列ができているならきっと美味しいお店だ」と判断した経験がある人も多いのではないでしょうか。
このように、実際の商品だけを見て自分で判断をするのではなく、他のことが要因となって購買意欲が刺激される作用は、商品のジャンルや実店舗・EC問わず、多くの場所で活用されています。
ヴェブレン効果とは、商品自体の性能ではなくその価格が顧客の心を満たし、満足度を上げることに直結する効果を指します。
この効果は、高級ブランド品を例にあげると分かりやすいです。例として、性能やデザインが酷似している商品が高級ブランドと安価のメーカー両方で販売されている場合を考えてみましょう。この場合、高級ブランドの商品はそのブランドというだけで価値が付き、購入者の心を満たすことが期待できます。一方、安価なメーカーの商品は、性能・デザイン共に劣ってはいないものの、価格自体にブランドの価値や認知度を上げる力は期待できず、その点において顧客の満足度を上げることは叶いません。
ヴェブレン効果を得るためには、価格をただ釣り上げれば良いというわけではなく、自己顕示欲を満たし顧客の満足感を与える必要があるため、ブランドまたは商品自体の価値も同時に向上させる必要があります。
スノッブ効果とは「人と同じものは所有したくない」といったような、数量限定品やいわゆる一点ものなどに惹かれることを指します。「季節限定」「あと1点限り」「今だけのタイムセール」といった文言はよく目にするものです。これらはマーケティングにおいてスノッブ効果が活用されている一例といえます。
しかし、これだけではスノッブ効果を大きく得ることは期待できません。これらの文言だけでなく「なぜ限定されているのか」といった理由を説明し、付加価値をつけることが大切です。
カリギュラ効果とは、あえて制限することでその行為をしたい欲求が引き出される現象のことを指します。「このボタンを押してはいけません」「進入禁止」「この書籍は閲覧することが禁じられています」といったように、してはいけないと制限をかけられることにより、逆にそれらをしたいという欲求を刺激されるのです。
WEBサイトや広告で「この商品は〇〇に当てはまる人以外は買わないでください」など、あえて否定的な記載を見たことがある人も少なくないでしょう。このような表記をすることで反発心を煽り、購買意欲を刺激しているのです。
また「〇〇限定」など、制限するだけでなく限定するといった内容でもカリギュラ効果は期待できるとされています。
損失回避の法則とは、一度手に入れたモノ・サービスを手放さないように行動してしまうことを指します。この法則を利用したマーケティングの手法としてわかりやすいのがトライアル期間です。
一部のサブスクリプションサービスなどでは、無料でそのサービス・製品を利用できるトライアル期間を設けています。この期間を提供することで顧客の「このサービスを手放しては惜しい」という心理を刺激することができ、この一連の顧客の行動は損失回避の法則が働いているといえます。
固定客を増やすことは売上の安定や増加を狙うことにも繋がります。損失回避の法則は積極的に取り入れていきたいマーケティング心理学の1つといえるでしょう。
返報性の原則とは、何かしらのきっかけで人に対して恩を感じたり、自分が親切にしてもらうことで、何かしらのお返しをしなければと思う行動心理のことを指します。
例えば、スーパーなどで試食をした際に「食べたからには商品を買わなければいけない」と思い購入してしまうといった人は多いものです。また、ウェブサイトなどでも「このページを見ているそこのあなたに特報です」などの文言で心惹かれた経験がある方もいらっしゃるでしょう。そのほかにも「商品を購入した際に購入者だけが貰える割引券が付いていた」などといった自分が特別であるかのように感じるサービスは、返報性の原則を利用しているといえます。
現状維持バイアスとは、文字通り現状を維持しようとする力がかかることを指します。
例えば、ずっと同じ商品を使用しているなかで、機能性やサービスが同じでありながら安価な商品が新発売されたとします。一見、すぐに安価なサービスに乗り換えてもおかしくないと思われがちですが、現状に変化をもたらしたくないといった心理が働き、新しい商品に切り替えることをためらったり避けたりするときに働くのが、この現状維持バイアスなのです。
新商品を開発する際、多くの競合商品がある場合には、この現状維持バイアスが作用しやすいといえるでしょう。
マーケティングと心理学は、一見関係のないように感じる方も多いでしょう。
しかし、実は双方は密接に関係しており、心理学を取り入れることで利益を向上させ、効率的にマーケティング戦略を立てられることが期待できます。マーケティングにおいて心理学は「事業を成功させるためのキーポイント」と言えるほど、重要であるといえるでしょう。
マーケティングに役立つ心理学は多数ありますが、自社の商品や戦略にあった心理学を利用することが大切です。マーケティング心理学について見識を深め、自社にあった活用方法をしっかりと検討しましょう。適切に取り入れることができれば、きっと利益向上や自社の成長に役立つはずです。
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