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著作権と言う言葉は聞いたことがあっても、いまいちよくわからない、気にしたことがないと言う方も多いのではないでしょうか。まずは著作権の基礎知識から紹介していきます。
動画を制作しようと思ったとき、あなたはどのようにしてBGMを選んでいますか? 音楽配信サービスや無料配布サイトから、お気に入りの音楽を選び、BGMとして使用することが一般的だと思います。一見何気ない行為に見えますが、その時に選んだBGMについて、著作権は確認していますか? 実はBGMには、一部の完全に権利を手放したものや、保護期間が完了していないものなどすべてに、自動的に著作権が発生します。
さらにBGMの中には、改変や一切の無断利用を禁じているものもあります。知らないうちにちょっとだけだから、と利用することや、勝手に一部を切り貼りして使ってしまうことは特に危険です。故意の過失ではなかったとしても、BGMの作者が権利の侵害とみなせば、重い罰を受けることもあります。
少しだけなら良いだろうという気持ちが、損害賠償請求を求められることや、刑事罰を受けるといった事態になってしまう可能性もあるのです。そのくらい著作権には、BGMの作者や権利者を守る、強い効力があります。
また作った本人が著作権の放棄を明言していたとしても、実はレコード製作者や放送事業者など、別の人が権利を持っていることもあります。それらを知らず、正当な手続きを踏まずに、BGMをそのまま無断で使用してしまった場合には、著作権の侵害となることがあります。
ここまで著作権のこわい側面を説明してきましたが、正しい知識を持てば、実はそんなに難しい内容ではありません。少しの油断が大きなトラブルとなってしまうことを避けるためにも、日ごろから著作権を意識して、BGMを選ぶようにしてみませんか?
それではまずは著作権について、どんな権利なのかを学んでいきましょう。
著作権とは知的財産権という権利の一部です。知的財産権は、創作活動によって何かを創り出した人に対して与えられる、「他人に無断で利用されない」といった権利のことを指します。知的財産権には大まかに「著作権」、「産業財産権」、「そのほか」の3つの権利が入っていますが、今回はその中の「著作権」を解説していきます。
著作者(=製作者)が創作したものを、総称として著作物と呼びます。
例として、小説、講演、音楽(今回の場合はBGM)、美術、映画、コンピューター・プログラム、データベースなどが当てはまります。また著作物を創作した人物のことを、著作者と呼びます。そして著作者は著作物に権利を持っています。これが「著作権」です。
しかし、著作権を行使できるのは、実は著作者だけではありません。それではどのような権利とその権利者がいるのか、もっと詳しく解説していきます。
著作物を創作した、著作者に自動的に与えられる権利です。自身が創作したBGMを、他人が無断で利用することを、制限できる権利となります。同時に許諾権というものもあり、著作者が自由にBGMの権利の売買・譲渡をすることも可能です。
しかし著作者による著作権は、保護期間が定められています。原則として,創作のときから著作者の死後70年間までを基本とし、例外として、無名・変名の著作物及び団体名義の著作物については、公表後50 年が定められています。
よく「著作権は死後70年まで」と言われますが、場合によっては公表から70年が経っておらず、まだ権利が消滅していないことも多々あります。
著作権にはBGMを創作した著作者ではなく、BGMを伝えるために関わった人々にも、同じように権利が発生します。BGMを演奏・歌唱する人、レコードを製作した人、放送事業者、有線放送事業者などがこれに当たります。著作隣接権は著作権と同じく、実演や放送を行った時点で自動的に与えられます。
著作隣接権も保護期間が定められており、こちらは原則として、初めてその行為を行ったときから70年とされています。例えばレコード製作者なら、初めてBGMをCDに焼いた、その瞬間ということになります。
さらにこの著作権ですが、著作者が他人に譲渡することも可能です。ただし一括での譲渡の他、分割譲渡をすることがあります。そして分割譲渡した場合には、支分権が発生します。例えば、著作物のコピーをすることができる「複製権」、期間を固定しての権利の譲渡、海外など地域を限定しての譲渡などが考えられます。そのため海外では複製や演奏ができても、日本では権利者が違うために、同じ行為ができない……というようなことが起こります。
これらはごく一部ですが、著作権のなかでも重要な用語となります。著作権についてさらに知りたい方は、下記のページを参考にしてみてください。
個人での利用と比べて、より厳格な規定が発生する場合が多くあるため、BGMを動画に商用利用する場合は特に注意が必要です。
商用利用の動画でBGMを使う場合は、私的利用に比べて特に気を付けましょう。ビジネス上で誤って利用してしまうと、事業の信頼を落とすことにも繋がりかねません。さらにあなたが法人として著作権を侵害した場合、民事ではなく刑事罰として、罪に問われてしまうことがあります。規約は必ず隅々まで確認してから利用することをおすすめします。また無料、著作権フリーを謳っていても、実際は権利を侵害してしまう場合もあります。以下の用語を参考に、それぞれの権利を確認しましょう。
無料配布サイトでも、中には「非商用であれば許諾するが、商用利用は禁止」としているものもあります。権利者によって商用利用の定義が変わってきます。
「アダルトコンテンツでは商用利用禁止」といった規約や、「特定の個人、団体への誹謗中傷目的での利用禁止」などの規約が挙げられます。またあなたにとっては該当のコンテンツではないと感じていても、第三者からは該当することもあります。決して自分の尺度で判断せず、様々な視点から検証することをおすすめします。 どこまでが許可されているのかを必ず確認し、理解した上で、規約範囲外の利用をしないように注意しましょう。
また、無料配布に似たものに、ロイヤリティフリーがあります。 これはあらかじめ、著作者が決めた範囲内での利用であれば、著作権利用料(ロイヤリティ)をその都度必要としない、というものです。この場合のフリーは、自由ではなく無料という意味なので、ご注意ください。
さらに、ロイヤリティフリーのBGMは、すべてが無料で利用できるわけではありません。中には有料のものも存在し、あらかじめ決められた範囲内で利用するのであれば、追加の著作権使用料を払う必要はない(追加の使用料が無料)といった意味合いのものも含まれます。
日本では著作者の死後70年と説明しましたが、実は国によって基準は違います。1番長い国ですと、メキシコの100年となります。
もしあなたが制作した動画を、ホームページやWeb動画として、インターネット上で不特定多数の国へ配信する場合には、1番長い100年を基準として選べば、トラブルを回避できる可能性が高いでしょう。
ここまで読んでみて、動画のBGMはすべて許諾を得る必要があるのか? 利用料として、お金を払う必要があるのでは? と感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。公的に著作権が消滅しているものや、無料で利用できるように、あらかじめ分かりやすく、規約を掲げているものもあります。
では無料で利用できるBGMには、どのような種類があるのでしょうか?
著作物は基本的に、作者の死後70年まで法律によって保護されています。保護期間が消滅すると、著作権がなくなり、著作物は誰もが自由に利用することが可能となります。このような権利が完全に消滅した著作物を、パブリックドメインといいます。
インターネット上にはこのパブリックドメインとなったBGMを集めたサイトも存在します。これらは自由にコピー・利用をすることができるので、問題なく無料で使用することができます。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは、著作者が自身の著作物をより利用してもらうための許可となります。インターネット時代のための、新しい著作権ルールとされています。ライセンスには以下のような種類と、いくつかの組み合わせがあります。
作品を利用する場合に著作者の氏名の表示要求
非営利目的での使用に限定する
いっさいの改変の禁止
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの作品を利用して作られた新たな作品について、元作品のライセンスをそのまま継承することで配布を認める
これらを組み合わせた6つのパターンにより、著作者が著作権を放棄することなく、作品を自由に流通させることができる仕組みです。
例えばこの中にある、「表示 + 継承」を提示したBGMを利用した場合、原作者名のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示することを主な条件として、元のBGMの改変や商用利用をすることが可能となります。
詳しくは下記サイトを確認してください。
動画配信サイトによっては、著作権の管理事業者と、BGMの権利について包括契約を結んでいることがあります。そういったサイトでは、個別に楽曲を利用するために手続きを行わなくとも、管理している楽曲を利用した動画をアップロードすることができます。
ただし管理を委託していないアーティストのBGMの場合には、著作者の利用許諾が必要となりますので、あなたが選んだBGMは委託されているのか、注意しましょう。
さらに著作権管理事業者は、著作権の管理のみをしています。原盤権(レコード製作者の権利となり、著作隣接権の1つ)については管理していません。CDや有料配信サイトで購入した音源を、BGMとして扱う場合には、原盤権を管理しているレコード会社の許諾を得る必要があります。まずは使用している動画配信サイトの規約や、利用予定のBGMの権利は誰が持っているのか、きちんと調べてから利用しましょう。
そもそも著作権を侵害してしまった場合、どうなるのでしょうか。利用許諾を得ずに利用してしまった、規約を逸脱した利用をしてしまった場合は、誤って利用したとしても、いずれも著作権の侵害となってしまいます。
その場合の罰則には、「民事」と「刑事」の2つのパターンがあります。
民事上の請求としては、以下の4つが挙げられます。
これらは1つだけ求められることもあれば、すべてを求められることもあります。
著作権の侵害は一般的には「犯罪行為」とされています。権利者が告訴した場合には、逮捕・起訴されて刑事裁判を受けることになるのです。そこで有罪と判断されると、「10年以下の懲役」または「1,000万円以下の罰金」、もしくは併用が可能となるため、その両方が課せられます。なお、法人として著作権を侵害した場合には、上記よりもさらに罪が重くなり、「3億円以下の罰金」となります。
いかがでしたでしょうか? 著作権と一口に言っても、様々な権利があります。複雑ですが、著作者が作品を創作し続けるために必要かつ大切な権利です。あなたが動画を制作するのに時間をかけるように、BGMを作る人たちもアイディアを考え、時間をかけて作品を仕上げています。 BGMを作る人たちが創作を続けられるよう、同じ創作者として、利用しようとしているBGMの権利を侵害せず、正しく使えているかを日々意識するようにしましょう。
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