まずはVlogの基礎知識からご紹介します。
Vlogとは、「Video Blog(ビデオ・ブログ)」の略です。一言で説明するならば、「日記的な動画」。
日記とは、日常の出来事やそこから派生した自身の考え・思いなどをノートにつづるもの。そんな日記がデジタル化し、「ブログ」という形態への進化をとげて久しく経ちますが、近年そのブログに続く次世代型ダイアリーとして注目を集めているのが「Vlog」です。Vlogは日本語では「ブイログ」、英語では「ヴィーログ」と発音します。
Vlogの投稿先は主にYouTube。それをふまえると、VlogもYouTube内の動画コンテンツの一種と言えるのですが、実際には一般的なYouTube動画とは独立した1つのジャンルとして認知されています。VlogとYouTube、その違いについては後ほど詳しく解説します。
数年前からアメリカやアジアを筆頭に、加速度的な盛り上がりを見せているVlog。主に若い世代を中心に、ワールドワイドに市民権を獲得し続けています。
最近では、YouTuber を一つの人気職として耳にする機会が増えましたが、Vlogを発信する人「Vlogger(ブイロガー/ヴロガー)」も劣らずその地位を確立しつつあります。Vlogの火付け役として知られ世界的な人気を得ているVlogger、Casey Neistat(ケイシー・ネイスタット)もその一人です。
ケイシーのYouTubeチャンネルの登録者数はなんと1,200万人。日本一有名なYouTuber、ヒカキンのチャンネル登録者数は現在約830万人ですので、ケイシーのフォロワーはその約1.5倍ということになります。
ケイシー以外にも、数万回から数十万回の再生回数を叩きあげるようなVloggerは多数存在します。今後はそのような人気Vloggerがマイクロインフルエンサーとして、世界的に存在感を増していくことが予測されるでしょう。
日本では2019年の5月に、元AKB48の「こじはる」こと小嶋陽菜さんがVlogを始めたことでVlogの知名度が一気に上昇しました。その約1ヶ月後にあたる2019年6月にソフトウェア開発会社ジャストシステムが行った、17歳から69歳の男女1,100名を対象にしたリサーチでは、10代から30代の回答者のうち約4割がVlogを「知っている」または「試聴したことがある」と答えたとのこと。さらに、Vlog視聴経験者のうちの約3割が「ほぼ毎日観る」、約5割が「自らも日常的に発信をしている」と回答したそうです。 ※
このデータが示唆するように、Vlogは日本の若者のライフスタイルの一部として、今後さらに普及することが期待されています。
Vlogは動画ブログと説明しましたが、実はVlogについての明確なルールや定義はほとんどありません。今は成長期に当たるので、そのような概念はまだ流動的な状態にあるようです。
現在投稿されているVlogは、ありふれた日常の一コマを切り取ったもの(モーニングルーティーン、夜食作り、近所の散歩風景など)から、イベントを特別な思い出として残したもの(旅行、友達の結婚式、音楽フェスなど)まで、とても幅広いジャンルのものを見かけます。クオリティーもスマホで撮影したラフなものから、専用機材とソフトを使ってシネマティックに作り込んだものまで実にさまざまです。
「こうでなくてはいけない」という決まりはなく、自分を表現することを「自由に楽しむ」ということが大切と言えるでしょう。
Vlogの特徴はご理解いただけたと思います。それではここからは、そんなVloogの良さについて解説します。
映画、TVショー、ミュージックビデオ、プロスポーツ中継など……これまで私たちが画面を通して観てきた人物たちには、どこか自分とは一線を画す卓越した存在感がありました。それは便宜上、評価やマネタイズのために「感情を動かすコンテンツ」が優先的に世に生み出された結果とも言えます。
しかし、そうした感動的なコンテンツも今ではありふれたものとなっています。そんなコンテキストへの退屈感が、Vlogの「ありふれたものを提供する」というニッチなコンセプトの価値を強め、世のムードへの親和性を高めたようです。同じ世代や似たような生活環境の人が投稿するVlogには、共感できるポイントが多く、そのような親近感が楽しさにつながっていると考えられます。
友達の家に初めて行く時、少しドキドキした経験はありませんか?なんとなく想像はつくけれど、実際に見る機会はなかなか無い他人のプライベート。Vlogはそんな「プライベート」と「パブリック」という背反する2つの要素をジョイントすることで「特別感」という魅力をつくりだしています。
芸能人Vloggerの私生活でのたたずまいや、海外Vloggerの子守の様子、一般Vloggerの野菜の切り方など……Vlogでは、自由な視点でさまざまな特別感を味わうことができます。
ここまでは視聴する側の楽しみについてご紹介しましたが、もちろん発信する側にとっても得られるものはたくさんあります。その一つは「思い出の可視化」です。どんなに忘れたくない素敵な思い出でも、時間が経てば色あせてしまうもの。しかし、そんな貴重な一瞬一瞬をVlogというライフログに残しておけば、いつでも好きな時にリアルな感情を思い起こすことや、それを誰かと共有することができるでしょう。
ポイントは、編集するということ。フォトライブラリーに溜まった写真や動画から素材を選び、音楽などの演出を加わえていく作業は、撮り溜まった写真を一つずつ丁寧にアルバムに入れるような感覚に似ています。この編集するという過程を経ることによって、思い出はより色濃く残るでしょう。プロフェッショナルなクオリティである必要はないので、無料アプリなどを利用して気軽に楽しんでやることをおすすめします。
Vlogには、映像はもちろん、音楽やイラストなどの多くの情報が詰まっています。これはつまり、言語の壁を超えた意思の疎通を行いやすいということです。
今はSNSという世界規模のプラットフォームが準備されています。これまではつながることができなかった遠い国の人々と、同じ感覚を共有したり情報交換をするチャンスが格段と広がりました。Vlogを通して好きなことを発信することは、同じ趣味や価値観を持ったまだ見ぬ友とのコネクションを築く、新しいキッカケづくりと言えるでしょう。
ここまで読んで、Vlogを制作してみたくなった方もいるのではないでしょうか。制作時に気をつけるポイントをご紹介します。
「まずは楽しむ!」これがVlogのモットーです。「気張らず自然体であること」が、見る側にとっても、見せる側にとっても欠かせないVlogの魅力の一つ。
気負い過ぎて表情がこわばってしまったり、撮影や編集を行うことに億劫になってしまっては元も子もないでしょう。全体的な質は慣れてきてから上げれば良いですし、シェアも好きなタイミングで始めれば良い。まずは自分の好きなこと、魅力を感じることを、Vlogという自分のための作品にしてみると良いと思います。
リアリティーが魅力とは言え、プライバシーを全てさらけ出す必要はありません。顔を写すことにためらいを感じる場合は、もちろん写さなくても良いですし、自身の部屋や家族構成といった私的情報に関しても公開する必要はありません。現に、顔をフレームアウトした状態で撮影しているVloggerもいますし、ぼかしを入れているVloggerもたくさんいます。
個人情報という観点から見えるリスクをきちんと踏まえた上で、見られたくないものが写ってしまっていないか、Vlog公開前にダブルチェックを行うと安心でしょう。
Vlogは撮影から編集まで、全ての作業をスマートフォン1台で行うことができます。スマホを使うメリットはなんと言ってもその手軽さ。「撮りたい!」と感じた時にポケットから取り出し、その瞬間を映像や写真としておさめることができますし、移動中などの空いた時間にもアプリを起動して片手だけで編集することが可能です。
スマートフォンでVlog撮影をする際のコツはこちらの動画がとても参考になります。
プロフェッショナルな映像を撮りたいという場合は、コンパクトデジタルカメラやデジタル一眼カメラという選択肢もあります。スマートフォンはあくまでも通信機なので、データ管理や充電の面でどうしても難がありますが、専用機を使用すれば質も扱いやすさもぐんと上がります。
使い分けの例としては、映像美や作品性を徹底的に追求する場合はデジタル一眼カメラ(軽量タイプ)、手軽さとクオリティーの両方を求めるのであればコンパクトデジタルカメラが適切とされています。特に、移動や荷物がネックになる旅行中においては、コンパクトデジタルカメラの方がスペックのバランスがちょうど良いようです。
他にはGoProやドローンを愛用しているVloggerもいます。
Vlogのメイン素材は動画ですが、「音」も同じく重要な要素です。例えば、料理風景を伝えるVlogの場合は、まな板で具材を刻む音や揚げ物をする際に油が跳ねる音、バケーションで訪れたビーチの情景を伝えるVlogであれば、波や風の音など……。
これは全てのシチェーションにおいて言えることですが、「話し手の声」も大切なマテリアルです。音をしっかりとキャッチできるよう、必要に応じて外部マイクとシューティンググリップを準備しましょう。
Vlogは手持ちで撮影されるシーンが多めです。スマホにしても専用機にしても、手持ちで撮影する際には「手ブレ」と「顔との距離」に気を付けましょう。
手ブレは、撮影者にとっては無意識で起こってしまうことですが、画面で観ている人にとっては気分が悪くなるとても不快な動きです。顔の距離に関しても同様で、どアップの時間が長く続くと、相手に圧迫感を与えてしまいます。自撮りをする際はカメラの位置や高さによって自分がどのように写るのか、事前に確認して知っておくと良いでしょう。
また、自撮りばかりでなく、風景などの別カットもバランス良く撮影するようにしましょう。ポイントは、その人がどういう場所にいるのかを、観る側が感じ取りやすいように工夫すること。風景と自撮りのバランスがとれたVlogは感情移入を生みやすく、観ている人を飽きさせない効果があります。
Vlogと、いわゆる通常のYouTuberの動画には違いがあります。ポイントをおさえておきましょう。
日本の2大YouTuberといえば、言わずと知れたヒカキンさんとはじめしゃちょーさんでしょう。彼らの番組を観ればわかるように、一般的なYouTuberの動画は台本ありきの企画ものがスタンダードとなっています。「過激さ」や「恐いもの見たさ」を追求し、過度な演出を加えたバラエティー色を出すことで、いわゆる「バズる(再生回数を稼ぐ)」ことを目標にしています。
一方、Vlogの基本スタイルは、変哲もない日常の生活の投影と、その時に思いついた言葉による自然な話りかけ。もちろん、台本や企画書はありません。演出にも素朴さや心地良さなどが感じられるものが多いです。一言にすると、「非日常がYouTube」、「日常がVlog」ということです。
YouTuberは再生回数を稼ぐことを目的にしているので、見てもらうことを強く意識し、「視聴者のため」のコンテンツを提供しています。対して、Vlogは何度もお伝えしたとおりその本質はビデオブログ。パブリックに公開するものなので、多少なりとも観られることへの意識はありますが、ベースにある概念は「自分のため」です。
もちろん、作品として見てもらうことを目的に含んでいるVloggerもいます。しかし、そのようなVloggerに関しては、映像の彩度やテロップのフォント、バックミュージックなどの細かなところまでを丁寧に作り込み、クリエーティブ活動の一環としてコンテンツを提供しているので、一般的なYouTubeとは一線が引かれています。
それでは、実際に活躍しているVlog動画を紹介します。
前の章でも紹介したフォロワー1,200万人を抱えるVlogger、Casey Neistat(ケイシー・ネイスタット)は、NY在住のVlog第一人者です。
ケイシーのVlogの中でもっとも再生された作品、「THE $21,000 FIRST CLASS AIRPLANE SEAT(210万円のファーストクラス体験)」の再生回数はなんと、7,200万回。
内容的には、YouTubeの「〜してみた!」に近いものがありますが、そのような類いとの圧倒的な違いは、観ているときの心地よさ。音楽や編集のセンスは言うまでもなく、ユーモアを交えながら余裕を感じる語り口調でゆっくりと話してくれるので、英語が母国語でない人にも理解しやすいようになっています。
ケイシーのVlogはお勧めが多いので、もう一つご紹介します。タイトル「DO WHAT YOU CAN’T(やれないことをやろう)」というVlogは、メッセージ性の強いコンセプトを編集技術を駆使してよりエモーショナルに仕上げており、観る人をモチベートしてくれる素晴らしい作品です。約4分弱の映像ですが、それ以上の試聴価値を与えてくれるので、何度でも観たくなります。
Vlogには「Cinematic(シネマティック)」という1つのジャンルがありますが、Andy To(アンディー・トウ)が生み出すVlogはまさに映画のよう。この作品はトルコでの旅をiPhone 11 Proで撮影したものですが、本物の映画も顔負けのクオリティーです。
現役女子大生Vloggerとして活躍する「まこち」。彼女がこのVlogでやっている「モーニングルーティン」は、自身の朝の身支度の様子を紹介するというもの。韓国の20代女性の間で流行したジャンルです。
癒し系Vlogger、in living(インリビング)はVlogを知っている人なら一度は見たことがあるかもしれません。まさしく日記のような彼女のVlogは、内容も編集もとてもシンプルでVlogの原形とも言えるスタイルです。その親近感から、不思議と応援したくなるような気持ちになります。
5G導入やスマホカメラのハイクオリティ化によって、今後Vlogはより多くの人の生活の一部となりそうです。日々の生活で感じたことや忘れたくない瞬間をVlogに残すことは、物理的な時間や空間を超えたつながりを実現するでしょう。新しいコミュニケーションツールとして、まずは気軽な気持ちで始めてみるのも手だと思います。
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