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動画広告とは、映像と音声からなる動画形式で制作された広告物全般を指します。
動画広告が普及する以前は、テキストや画像などの静止画で広告物が制作されていましたが、昨今では動画の制作コスト削減やインターネット回線の速度向上などの理由から、広告物において動画広告が占める割合が年々増加してきています。
2022年1月に株式会社サイバーエージェントが発表した『2021年動画広告市場規模推計・予測』によると、2020年から2021年で約1.4倍の4,205億円、2025年には021年と比べると約2.5倍の1兆円を超える市場規模になることが予想されています。
動画広告には大きく分けて以下の2種類があります。
インストリーム広告とは、動画プレイヤーの中で再生される動画広告のことです。代表的なのはYouTubeのプレイヤー内に流れる広告です。
通常のバナー広告より大きなサイズで配信できるため、ブランディング力があります。動画を見る行為の一環として流れる広告のため、基本的に音声もデフォルトでONとなっています。
また、インストリーム広告の中でもコンテンツが再生される前に流れる広告をプリロール広告といいます。インストリーム広告が始まった当初はプリロール広告が大半を占めていましたが、いまではコンテンツ再生中(ミッドロール)や再生後に流れる広告(ポストロール)も出てきています。
それぞれ、15秒や30秒などの強制視聴型と「5秒後に広告をスキップ」などと表示されるスキッパブル型とがあります。
なおインストリーム広告は、ユーザーのコンテンツ消費行動の中で強制的に表示される広告のため、コンテンツ消費中のユーザーは必ず訴求が可能ですが、強制的に表示されるという観点でユーザーのストレスとなる恐れもあります。
アウトストリーム広告とは、動画コンテンツ以外の場所で再生される広告のこと、すなわちインストリーム広告以外の広告のことです。
動画コンテンツを視聴しようとするユーザー以外の目にとまるため多くのユーザーへのリーチが期待できます。
アウトストリーム広告は、広告の掲載場所によってインバナー広告とインリード広告に分類されます。
インバナー広告とは、従来のバナー枠で再生される動画広告のことです。DSP経由などのプログラマティック配信に用いられることが多くなっています。
メディア側が動画再生に対応していれば配信が可能なため、日本国内では最も在庫の多いフォーマットとなっています。基本的に音声はデフォルトでOFF、自動再生はONとなっているものが主流です。マウスオンするとエキスパンド表示されるなどリッチなフォーマットも増えてきています。
動画コンテンツ以外の場所で再生されるため、ユーザーへ与えるストレスは少ない点が特徴です。
インリード広告とは、フィード面などでコンテンツとコンテンツの間に表示される動画広告のことです。ユーザーのコンテンツ消費の流れで表示されるため、ビューアブル率が高くなります。
また、音声はデフォルトでOFFとなっており、再生はユーザーのスクロールによって視認領域に入ったタイミングにて開始されるものが多く、動画をはじめから見せることができます。
動画広告を出稿する目的は大きく分けて以下の2つです。
動画広告を出稿する目的のひとつは、商品や企業のブランディング、認知の拡大です。
従来の静止画バナーにはない、動画や音声を用いてリッチな表現ができます。またインパクトのある動画や印象的な動画はSNSなどでシェアされる傾向にあり、副次的な効果も望めます。
テレビCMなどでもよく見られる販売促進の目的でも動画広告は用いられます。
テレビCMでは15秒など短い尺にまとめる必要があるのに対して、動画広告であれば長い時間を確保できストーリー性を持った動画でユーザーに訴求できます。
そのため、商品やサービスの使い方などを解説することで購入後のイメージがつきやすく購入につながることが期待されます。
動画広告のメリット・デメリットについて、テレビCMや従来の静止画バナー広告などと比較しながら解説していきます。
動画広告のメリットは、以下の4つです。
それぞれ詳しく解説していきます。
静止画では視覚のみに訴えかけますが、動画では視覚に加えて音声を通じて聴覚に訴えかけることができます。
視覚に関しても静止画では文字を読んで理解してもらう必要がありますが、動画ではその必要がありません。また、訴求コンセプトにあったBGMを用いることでイメージ付けもおこなえます。
インパクトのあるものや印象的なものなどはSNSなどを通じて拡散されることも多く、想定以上のリーチを獲得することも可能です。
購入促進目的の広告では、商品やサービスを利用する方法や場面を再現することが重要です。その観点で動画広告は効果的です。また、外国人向けのプロモーションとしても重要となっています。
静止画バナーやパンフレットでは文字での表現が不可欠になってしまいますが、動画であれば特徴をわかりやすく伝えることが可能です。
こちらはテレビCMと比較したときのメリットです。テレビCMはテレビを見ているすべての人に視聴される一方で、動画広告ではターゲットユーザーだけに視聴してもらうことが可能です。
年齢、性別、地域、時間帯などを絞った配信ができます。加えて視聴したユーザーを識別し、フリークエンシーのコントロールも可能なためテレビCMと比べた際費用対効果が高くなります。
動画広告は、広告効果の検証がしやすい点もメリットの1つです。動画配信プラットフォームであれば、視聴数とクリック数、購入・契約数といった数値から効果検証が簡単に行えます。
また、多くのプラットフォームで流入経路なども確認できるようになっているため、次回の広告出稿に活かせるデータが手元に残る点も魅力です。
動画広告のデメリットは、以下の3つです。
それぞれ詳しく解説していきます。
動画は、撮影・編集など、静止画バナーに比べると動画の制作コストは非常に高くなります。
インストリームの広告では、コンテンツの前後や途中で強制的に配信されるため、視聴者にストレスを与えてしまい、その結果として悪い印象を与えてしまう可能性があります。
インストリーム広告では、YouTubeなどでもよく見られる「5秒後に広告をスキップ』」どの機能があり、視聴者に動画広告を最後まで見てもらえるという保証はありません。
また、アウトストリーム広告のなかでも、インバナー広告ではページが表示されたタイミングで自動再生となるものが多いため、ユーザーが動画広告枠に気がつく前に動画が始まっている可能性もあります。
従来の静止画バナーやリスティングなどの広告と動画広告の違いについて解説していきます。
大きな違いは、以下の2点です。
それぞれ詳しく解説していきます。
動画広告では動きや音声を用いて商品やサービスについてのプロモーションや説明ができるため、静止画バナーなどに比べて多くの情報量をユーザーに届けることができます。
商品やサービスの良さを文字と画像のみで伝えるのは非常に難しいでしょう。静止画では伝えられる情報量が枠のサイズのみによって決まるのに対し、動画広告は枠のサイズ×時間によって決まるため、より多くの情報量をユーザーに届けることが可能です。
上記はテレビCMに似た特性ですが、動画広告ではさらにターゲティングをかけることができるため、ターゲットのユーザーだけに広告を配信することが可能となっています。テレビCMとの一番大きな違いは、ユーザーの態度にあります。テレビは基本的に家などでくつろぎながら見ることが多い一方で、インターネット上ではユーザーは自ら情報の収集をおこなっています。そのため、動画に対する感度がインターネットユーザーのほうが動画に対する感度が高いといえるでしょう。これらの結果、動画広告があたったユーザーは、商品に対する認知度や理解度が高い傾向にあります。
TwitterやInstagramなどのSNSで『泣けるCM』や『おもしろいCM』などというものを見たことがあるかもしれません。このようにインパクトのあるものや印象的なものが拡散されるというのも動画広告の特徴です。
人々の生活にSNSも浸透し面白いものは拡散されます。これによりブランディングや認知、獲得に至るまでマーケティングのすべてのフェーズに大きな効果をもたらすでしょう。
動画広告のなかには従来の広告と料金体系が異なるものがあります。
主な料金体系は大きく分けて以下の3つで、それぞれの詳細と代表的な掲載枠について解説していきます。
CPV(Cost Per View)課金とは広告1視聴あたりに対して課金をするという方式です。動画広告はユーザーに視聴してもらうことが目的のため、この課金方式が用いられていることが多くなっています。1視聴の基準は3秒視聴から完全視聴まで各事業者や枠によって異なります。
CPV課金の代表的な導入枠としては、YouTubeのインストリーム広告であるTrueView広告などで用いられています。さらにTrueView広告ではCPCV(Cost Per Completed View)と呼ばれる完全視聴課金方式を取っており、広告が最後まで完全に視聴された場合のみ課金されるため、ターゲティングと掛け合わせてターゲットユーザーかつ興味を持ってくれた人にだけ課金するということが実現できます。
CPM(Cost Per Mille)課金とは広告1,000インプレッションに対して課金をするという方式です。従来の広告でも純広告やDSPなどのディスプレイ広告などでよく用いられる課金方式です。
広告をクリックされたかや最後まで視聴されたかなどは課金に加味されないため、ブランディングや多くのリーチを獲得したい場合にはこちらの課金体系が適しています。
CPC(Cost Per Click)課金とは広告1クリックに対して課金をするという方式です。リスティング広告やアドネットワークなどでよく用いられている課金方式です。クリックというユーザーの能動的な行動に対して課金を行うため、購入や問い合わせなどの獲得系の商材との組み合わせが適しています。
いずれの方法にしても、動画広告は従来の静止画バナーやリスティングと比べてユーザーに届けられる情報量が多いため、掲載単価が高く出る傾向にあります。
最近では、動画視聴時に動画広告を見かける機会が増えました。
動画広告と聞くと動画配信プラットフォームを利用した広告を想像される方が多いかもしれませんが、動画広告は、YouTubeのような動画配信プラットフォーム以外にもさまざまなプラットフォームに出稿することができます。
YouTubeは、幅広い年齢層をユーザーに持つ動画配信プラットフォームです。
動画の再生前・再生中・再生後に広告が再生されるインストリーム広告やバンパー広告、YouTube内の検索結果に表示されるTrue Viewディスカバリー広告などさまざまな動画広告を出稿できます。
Twitterは、最新の情報やトレンド情報の収集に使われることも多く、情報の鮮度と拡散力が特徴のプラットフォームです。
動画配信プラットフォームではありませんが、最近では多くの動画広告がTwitter上に掲載されています。ユーザーのタイムラインに表示できるプロモビデオ、クリックすることで別ページへユーザーを遷移させるビデオウェブサイトカードや、クリックすることでアプリのダウンロードページへユーザーを遷移させられるビデオアプリカードといった動画広告も人気です。
TikTokは、若い世代のユーザーに人気のある短尺動画に特化した動画配信中心のプラットフォームです。
動画広告としては、アプリの起動時に動画が再生されるTop View、TakeOverADや、ユーザーのおすすめに表示されるInfeed Adなどがあります。
Instagramは、ユーザー自身が動画を発信することも多いため、動画広告も違和感なく出稿しやすいプラットフォームの1つです。情報の多さよりも、見た目のインパクトが強い構成の動画広告が好まれる傾向がある点はInstagramの特徴といえるでしょう。
タイムラインに表示するフィード広告、ユーザー投稿の間に表示されるストーリーズ広告、短い尺の動画を発信できるリールを利用したリール広告、ユーザーの閲覧履歴などからアプリ側からおすすめコンテンツを表示する発見タブを利用した発見タブ広告など、さまざまな広告出稿が可能です。
Facebookは、TwitterやTikTok、Instagramと比べると、ユーザーの年齢層が高いことが特徴のプラットフォームです。ユーザーは実名での登録ということもあり、詳細なユーザー情報を参照しターゲティングできる点が特徴といえるでしょう。
タイムラインや投稿の間に表示できるフィード広告、ユーザーの画面サイズいっぱいに広告表示ができるストーリーズ広告、動画コンテンツ内に動画広告を挿入できるインストリーム動画広告など複数の出稿形態があります。
LINEは、日本人口の約7割もの人が利用していると言われているSNSです。多くの人が日常的にメッセージのやり取りで利用していることもあり、リーチできるユーザー数の多さが最大の特徴です。
LINEを利用した動画広告では、LINEユーザーの登録情報などを元にターゲティングし広告配信をするLINEデモグラフィック配信、ユーザーのアクションデータなどから既存顧客にリーチした広告配信を行うオーディエンス配信、コンバージョンしたユーザーと類似した属性・行動履歴を持つユーザーに配信する類似配信などがあります。
GDNはGoogleディスプレイネットワーク、YDAはYahoo!広告ディスプレイ広告の略称です。
それぞれのアドネットワークが提携しているWebサイトやアプリなど多くの広告枠を抱えているため、幅広い年齢層・属性のユーザーにリーチできる点が最大の特徴です。
Abema TVは、株式会社Abemaが提供しているインターネットテレビサービスです。
Abema TVは国内初の無料インターネットテレビで、2022年FIFAカタール ワールドカップの生放送では、多くのユーザーが視聴するなど注目を浴びたメディアでもあります。10代後半から30代前半のユーザーが過半数を占めているといわれているため、比較的若年層へのリーチが中心の広告媒体となります。広告枠はAbema TVトップに表示されるもの、テレビCMと同様、15~30秒の動画広告を出稿できるものなどがあります。
インターネットテレビという利点を活かした細かいターゲティングが可能な広告プランもある点もAbema TVの特徴の1つです。
動画広告を用いたマーケティングを効果的に行うために必要なポイントについて制作と運用の観点から解説していきます。
動画広告を制作する際のポイントは、以下の2つです。
それぞれ詳しく解説していきます。
YouTubeのTrueView広告などに代表されるようにインストリーム広告は『5秒後スキップする』という仕様が入っていることがあり、多くの媒体でその時間は5秒となっています。つまり、はじめの5秒間でユーザーが興味を持たないと動画広告はスキップされるということです。はじめにインパクトを残し、かつ続きを見たいと思える動画の制作を心がけることがポイントです。
スマートフォンが普及し、ユーザーは自宅以外の様々なところでコンテンツを消費します。電車やバスなどの交通機関や店内など、音声をOFFにするケースも少なくありません。そのようなときでも、ユーザーが理解できるような動画を制作する必要があります。字幕やテロップを用いることによって音声を文字で補完する方法などが有効です。
動画広告を運用する際のポイントは、以下の2つです。
それぞれ詳しく解説していきます。
何度も説明しているように、テレビCMと比較した際の動画広告における一番大きなメリットは、動画広告では年齢、性別、地域、時間帯などを絞ったり、一度自社サイトを訪れたことのあるユーザーだけに絞ったりすることにより、訴求したい人だけに広告を配信できる点です。
商品やサービスのターゲットであるユーザー層を設定し、企業のデータや配信事業者のデータを用いてセグメントを切り広告配信を行うことで、余剰コストがかかることなく、効率的にブランディングや獲得をおこなうことができます。
動画広告に限らず、広告宣伝において広告を出稿する媒体を選ぶことは広告効果を高めるうえで重要です。若い世代にビジュアルでアピールしたい広告であればTikTokやInstagramに出稿するなど、プラットフォームを利用するユーザー層を正しく把握し、最も広告効果が期待できるプラットフォームに広告を出稿をしましょう。
動画のクリエイティブや出稿先のメディアに対してABテストを行うことで、より良い広告配信を行うことができます。
動画広告のABテストが重要な理由と成果を出すポイントもぜひ参考にしてみてください。
動画はユーザーに与えられる情報量が多い分、ユーザーから飽きられやすいという側面も持っています。そのため複数のクリエイティブを同期間に配信することによって、動画広告に対するユーザーの疲弊度も軽減することが可能です。
これは動画広告に関わらずすべてのWeb広告の運用におけるポイントですが、広告配信後の効果分析をしっかり行うことが重要です。
テレビCMと違い、動画広告では広告表示後のユーザーの行動を追跡することができます。つまり、どのくらいのユーザーにリーチしており、どれくらいクリックやコンバージョンなどの行動が起きているかを把握することができるのです。そのデータを利用し、動画のクリエイティブのテストを行ったりターゲティングセグメントを修正したりするなど、PDCAサイクルを短いスパンで回すことで、より高い広告効果を得ることができるようになります。
最後に動画広告の活用事例をご紹介します。
マクドナルドでは、Twitterの動画広告を頻繁に利用されています。そのほとんどが告知内容をテキストで表示、テキストの下部に動画広告を埋め込むことで動画を通して商品の魅力を伝える内容となっています。
30~40代が主なユーザーである大塚製薬のファイブミニが、インフルエンサーを利用したTikTokの動画広告を配信しました。配信後のコンビニ販売数が2倍になるなど、高い広告効果を発揮しています。
引用元:TikTokで若年層を購買に結び付けた大塚製薬「ファイブミニ」
スターバックスでは、Instagramを利用して、限定された地域にリーチしたクーポン付きの動画広告を配信しています。既に自社のWebページを閲覧したユーザーを除いて配信することで、同じユーザーに繰り返しクーポンの配布を防ぐなど、新規顧客獲得のために最適化した広告配信に成功しています。
引用元:Starbucks Indonesia Instagram成功事例|Meta社
今回は、動画広告の概要と効果を出すためのポイントについて解説しました。
動画広告は静止画バナーと比べて、動きや音声を用いることができるため、伝えられる情報量が多く、特徴的な動画はSNSなどで拡散されることが多いというのが特徴です。まだ動画広告を導入していないマーケティング担当者様は、ぜひ活用することを検討してみてくださいね。
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