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デザイン業界では「何を」デザインするかによって、さまざまな呼び方が普及しています。そのなかでグラフィックデザインと言えば、基本的には大量の印刷物に施すデザインのことを指します。例えば、ポスター・商品のパッケージ・広告のデザインをまとめてグラフィックデザインと呼びます。
ただし、ゲーム業界でグラフィックデザインという言葉を用いる時は、ゲームのキャラクターや背景のデザインを指しています。つまり、グラフィックデザインという言葉には「印刷物のデザイン」という意味と「ゲームのビジュアルデザイン」という2つの意味があるということです。
デザインにはほかにも、Webサイトのデザインを指す「Webデザイン」、コンピューターを使って作られる2次元・3次元のデザインを指す「CGデザイン」などがあります。また、Webサイトやアプリなどでユーザーの操作を快適にするデザイン設計を「UI(ユーザーインターフェイス)デザイン」と呼びます。
この記事では主に「印刷物のデザイン」に関する学習方法について解説していきます。
グラフィックデザイナーに必要なスキルを3つ紹介します。
デザイン力=天性のセンスと捉えられがちですが、必ずしもそうではありません。人の目にとって心地よいデザインには一定の法則があり、これを学ぶことでデザイン力はぐっと向上します。配色・余白の取り方・字体が与える印象などは、参考書や動画でも学ぶことができます。
これに加え、基礎画力はもちろん、トレンド調査能力もデザイン力の一種といえます。トレンド調査能力は、現在どんなデザインが流行しているのかを把握する力です。SNS・ニュースサイト・アート関連の最新記事をチェックすることもデザイン力に関連してきます。
昔は紙と鉛筆で行っていたデザインも、現代はパソコンのデザインソフトを用いて作成するのが主流です。クライアントが望む納品形式に合ったデザインソフトを使いこなせるスキルはぜひ持っておきたいところです。
グラフィックデザインによく使われるソフトには、以下のようなものがあります。
Photoshopは、ラスター画像と呼ばれるファイルを扱うのに適したデザインソフトです。ラスター画像はこまやかな色彩を表現できる点が特徴です。写真ファイルなど色の多いデータを使ってデザインするには、Photoshopは欠かせない存在です。
Photoshopが扱うラスター画像は、拡大すると品質が低下してしまうという欠点があります。それに対し、拡大縮小に強い画像形式がベクター画像です。
Illustratorはベクター画像を作成、編集できるソフトです。シンプルな色合いのロゴやアイコンを作成するのに最適なソフトで、レイアウトや文字の設定もこなします。PhotoshopとIllustratorを組み合わせることで、高度なデザインデータを作り出すことができます。
InDesignは、カタログのような複数ページに渡るデザインを行うときに重宝するソフトです。マスターページを1つ設定することで、複数のページに同じようなデザインを適用することができます。また、画像やテキストを多用しても、操作性が落ちることはありません。
1枚のデザインはPhotoshopやIllustrator、複数ページのデザインはInDesignが得意とするところです。
Photoshop・Illustrator・InDesignはサブスクリプション形式で提供されている有料ソフトです。この3つのソフトを使おうとすれば、月額数千円の出費になります。初心者のうちはこの出費がかなりの負担に感じられるかもしれません。それぞれのソフトには類似のフリーソフトもありますが、操作方法はかなり違います。
グラフィックデザイナーを本気で目指すなら、本物のPhotoshop・Illustrator・InDesignを使って学習する方が近道です。
グラフィックデザイナーは、芸術家のように自分の感性で好きなものを作っていく職業ではありません。クライアントから依頼を受けてデザインを行うのがグラフィックデザイナーの仕事です。そのため、クライアントからデザインの目的や要望などを細かく聞き出す必要があります。また、自分がどんな意図でどんなデザインをしていくのか(あるいはしたのか)を説明する能力も大事です。クライアントの修正に粘り強く付き合い、時には自分のデザインをプレゼンテーションでアピールすることもあります。
クライアントあってのグラフィックデザイナーなので、コミュニケーション能力はとても重要なスキルといえるでしょう。
グラフィックデザインの入門として、初心者から無理なく読めるグラフィックデザインのおすすめ本を5冊紹介します。
『素人ですが、デザインしてみました プロのきほんが学べる14のストーリー』(作:京田クリエーション、まんが:原あいみ)は、漫画を読みながらデザインの勉強ができる楽しい本です。
主人公は、イラストを描くのが好きなカフェ店員で、カフェの常連であるグラフィックデザイナーにデザインのコツを学びながら、主人公がデザイン能力を向上させていくというストーリーです。素人がやってしまいがちなデザインの間違いポイントを適確に指摘し、デザインのコツを教えてくれる構成が分かりやすいです。ストーリー形式なのでサクサク読めるにも関わらず「余白」「フォント」「配色」などデザインの基礎知識が詰め込まれています。
肩ひじを張らずに読めるので、デザイン勉強の入り口に最適です。
『はじめて学ぶデザインの基礎』(著;小島トシノブ)は、タイトル通り、初めてデザインを学ぶ人にも分かりやすいように書かれたデザインの参考書です。
見開き2ページで各テーマが簡潔に解説されているので、サクサク読めるのが魅力です。また文字も解説図も大きいので、読んでいてストレスがありません。よいデザインを「Before→After」の事例で解説しているので、とても分かりやすいです。
各章の最後には、2つのデザインから適切なものを選ぶ2択クイズが載っています。正解の解説も見やすく、デザイン初心者でも挫折せずに最後まで読めるのではないでしょうか。
『ノンデザイナーズ・デザインブック』(Robin Williams著)は、デザインの参考書と言えば必ず名前が上がるほどの有名な本です。原書が英語なのでデザインの事例が英語だったり、翻訳にところどころ不自然な日本語があったりというデメリットはありますが、デザイン学習初心者なら一度は手に取りたい本といえます。
ノンデザイナーズというタイトルながらデザインの原則が体系的にまとめられており、これからデザイナーを志す人にとっては非常にありがたい一冊と言えるでしょう。
『素人ですが、デザインしてみました』や『初めて学ぶデザインの基礎』でスポット的に学んできた知識を、『ノンデザイナーズ・デザインブック』でまとめてみてはいかがでしょうか。
『なるほどデザイン』(著:筒井美紀)は、見て楽しいデザインの本です。写真とイラスト多用したカラフルなページは、絵本や写真集を読むようなわくわくする感覚を与えてくれます。パラパラめくって好きなところを読むだけでも、新しい発見があるのではないでしょうか。
また、著者独特のキャッチコピーセンスが各章の内容を印象深くしてくれます。例えば、デザインの基礎原則の中には「コントラスト」という概念があります。簡単に言えば目立たせたいところの色を変えたり、サイズを変えたりすることで読者の視線を誘導する方法です。この本では「コントラスト」ではなく、「スポットライト」という言葉を使ってより原則をイメージしやすくしています。
『けっきょく、よはく』(著:ingectar-e)は、デザインに重要な各要素の中でも「余白」にポイントを絞った本です。本書ではフォントや配色などにも触れているのですが、必ずどの事例でも「余白」がデザインのカギを握っています。事例にあげられているのは・ポスター・DM・パンフレットなどの紙媒体がほとんどなので、グラフィックデザインの参考書に適しているといえます。
この本では、新米デザイナーとベテランデザイナーの事例が比較されています。新米デザイナーのNG事例もさほど悪くないように見えるのですが、ベテランデザイナーのOK事例は非常に洗練されており、レベルの高さがうかがえます。ある程度デザインの基礎知識を学んだ後、もっとレベルアップしたい人にはとても参考になるのではないでしょうか。
なお姉妹本には、フォント選びに焦点を当てた『ほんとに、フォント。』があります。
先にグラフィックデザインの参考書を紹介しましたが、グラフィックデザインは動画でも学ぶことができます。最近はさまざまなオンライン学習サービスが利用できるので、比較しながら自分にあった物を探していきましょう。
YouTubeには、たくさんのグラフィックデザイン関連動画がアップロードされています。デザインの学習法・デザインの基礎理論・各種デザインツールの使い方まで、YouTubeを使って学ぶことができます。
ただし、YouTubeはあくまで動画共有サイトです。だれでも動画投稿が可能な分、動画のクオリティは玉石混合で、目的に合った動画を見つけるのはなかなか難しいというデメリットがあります。視聴後に、期待外れだと感じてしまう中身のない動画を見てしまうこともあるでしょう。
一方、無料で利用できるのはYouTubeのメリットです。時間があるなら、根気よく目的の動画を探してみるのもよいでしょう。
グラフィックデザイナーに必須のPhotoshop・Illustrator・InDesignは、すべてAdobe社の商品です。Adobe社は、各種ソフトの使い方を動画で解説した「チュートリアル」を公式サイトにアップロードしています。動画には、初心者向けの「ことはじめ」シリーズのほかに、中級者以上向けのものもあります。公式サイトの解説動画ならではのクオリティで、初めてAdobeソフトを扱うなら見ておいて損はありません。
なお、Adobe公式の無料オンライン動画講座も開かれています。チュートリアルはだれでも視聴できますが、オンライン動画講座はAdobe製品を購入した有償メンバー向けのプログラムです。ライブ授業には、チャット形式でリアルタイムに質問ができたり、練習用ファイルで実際の操作方法が学べたりと有償メンバーならではの特典が付いています。
Schooは動画形式の学習サービスです。Schooの無料会員は生放送授業と録画授業の一部が視聴できます。さらに月額980円の有料会員になると、過去すべての録画授業や有料会員限定の生放送授業を視聴できます。
Schooでは、配信動画を経済・資格・プログラミングなど19のカテゴリーに分けています。この中には「グラフィック・視覚デザイン」というカテゴリーもあります。デザイナーやアートディレクターが担当するデザインの授業がたくさん配信されており、プロからデザインを学びたいという人にはお勧めの動画サービスです。
例えば以下のような授業動画を視聴することができます(2021年10月現在)。
Udemyは、主に社会人を対象とした学習サービスプラットフォームです。教えたい人が自分で学習動画を作成し、教えてもらいたい人に販売することができます。
さまざまな人たちが自分の学習動画を販売しているので、その数は膨大です。グラフィックデザインというキーワードで検索すると、2021年10月段階で5000以上の学習動画がヒットします。動画の数が多くて選べないときは、レビューや評価を参考にしましょう。有料のものが多数を占めますが、無料の動画も400本以上公開されています。
グラフィックデザインを行うには、センスだけでなくデザインの基礎知識やデザインソフトの操作技術も必要とされます。現在は、初心者からでも学びやすいグラフィックデザインの参考書がたくさん発売されています。また、動画講座を利用してグラフィックデザインを学ぶこともできます。
さまざまなツールを活用して、グラフィックデザインの学習をスタートさせてみてください。
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