目次
漫画動画とは、漫画にナレーションをつけて動画にしたもののことです。100万人を超えるチャンネル登録者を抱えるYouTubeチャンネルもあり、YouTubeで近年人気のジャンルの一つです。
漫画といってもコマ割りはあまりなく、イラストをつなげた形式のものが多いため、イラストを用いたスライドショーと説明したほうが近いかもしれません。動画の内容はコントからスカッとする話、雑学、ホラーなどチャンネルによってさまざまです。
では、なぜ今YouTube漫画動画が人気を集めているのでしょうか。ここでは、YouTube漫画動画の人気の理由を解説します。
YouTube漫画動画が人気の理由の一つとして、そもそも漫画自体の人気が高く、幅広い層に受け入れられやすい点があげられます。
NTTレゾナント株式会社の調査によると、15~44歳の男女の約75%が「漫画が好き」と回答しているそうです。漫画動画は、もともと人気の高い漫画という娯楽をさらに見やすくしたものなので、多くのファンがいるのもうなずけます。
YouTubeの漫画動画は、5~10分程度、長くても20分以内のものが多いです。近年は1時間を超える長時間の動画が増えていますが、それに対して漫画動画は短編のものが多く、ちょっとした隙間時間の暇つぶしに最適です。
また、漫画動画は字幕とイラストがついているため、音が出せなくてもストーリーが理解できる点も暇つぶしとして人気の理由の一つです。
漫画動画は、先述したように娯楽目的の動画コンテンツですが、最近では広告で利用されることも増えてきています。
もともと情報量が多い漫画に音声や動きなどを加えた漫画動画は、視聴者への情報伝達力に優れており、認知獲得から商材の理解までをスムーズに行うことができます。結果的にコンバージョンまで至りやすいことから広告手段として、有用であるといえるでしょう。
マンガ動画を広告に利用するメリットは以下のとおりです。
詳しく見ていきましょう。
漫画動画を広告に利用する最大のメリットは、情報伝達量の多さです。漫画は単純な文章よりも情報伝達量が多く、1分間に2,000文字相当の情報を伝えることができるといわれています。文章のみのコンテンツで伝えられる情報が1分あたり300~400文字程度といわれているので、漫画は文章に比べ、5~7倍程度の情報伝達力をもっているわけです。
上記のような性質を持つ漫画に動画を組み合わせると、音声による情報ソースも加わるため、情報伝達力はさらに加速することになります。情報力の掛け算による広告としての効果の高さが、漫画動画のメリットといえるでしょう。
漫画動画は、制作コストが少ないことも大きなメリットといえます。
実写動画の場合は撮影のフローが入る分、キャストの人件費や撮影機材費、撮影場所に関する費用などがかかり、コストが割高になりがちです。また、通常のアニメーション動画の場合、モーショングラフィックスで動かす素材が多くなるので、編集費がかさみます。対して、漫画動画は素材さえ手に入れば、画像の切り替えのみで動画を制作することが可能です。よって、動画編集に特別な技術が必要ないことが多く、編集費が割安になります。
もちろん、予算に余裕があればさらに動きを加えることが可能ですが、最低限のクオリティの動画が割安で制作できるのは、予算を調整する面でも大きなメリットといえるでしょう。
漫画動画は、実写と違い、数値や概念をイラストで視覚化できるため数値や概念といった抽象的なものを説明するのに向いています。よって、口頭や文章ではイメージを伝えづらいサービスや商品の説明をするのに効果的です。
また、色彩表現による強調やブランドカラーの印象付けなどもしやすいので、よりインパクトのある動画を制作することができます。
漫画動画の制作には、主に次の4つの工程があります。
それぞれの工程について詳しく解説していきます。
まずは動画の脚本の作成です。漫画動画では内容が重要視される傾向があるため、脚本の作成は最も力を入れるべき工程でもあります。
脚本の作成は、大まかなあらすじを考える、キャラクターの設定を決める、詳細な肉付けをする、といった手順で行われます。漫画家がイラストを作成しやすいように、ストーリーだけでなくキャラクターの表情や背景など細かい部分まで書くことがポイントです。
次に脚本をもとに漫画を描いていきます。イラストはブランディングに大きく関わる部分なので、チャンネルのテーマに沿った作風の漫画家を選びましょう。
また、漫画動画のイラストは、細かく描きこまれたイラストよりもシンプルでわかりやすいイラストのほうが好まれる傾向にあります。イラスト作成は、Adobe IllustratorやCLIP STUDIO PAINTといった、ペイントソフトを使用するのが一般的です。YouTubeに投稿するためにはパソコンにイラストを取り込む必要があるため、基本はデジタルで描きます。細かい描きこみは必要なくとも、液タブや板タブがあるほうが好ましいでしょう。
漫画ができあがったら、イラストや脚本に合わせて声を当てていきます。漫画動画では、イラストのうまさよりも声優の演技力が重要視されるため、声優は慎重に選びましょう。
また、演技力だけでなく、チャンネルの雰囲気に合った声質かどうかも見極める必要があります。加えて、視聴者にストレスなく動画を見てもらうために、マイクやオーディオインターフェースの型番、ノイズの有無などもチェックしましょう。
最後に動画を編集します。漫画動画の編集では、効果音やBGM、テロップの挿入をメインに行います。
漫画動画の制作で求められる動画編集スキルはそこまで高くはありませんが、声とイラストのタイミングがずれてしまうと一気に見づらくなってしまうので注意しましょう。
漫画動画の作り方について解説しましたが、実際に投稿して多くの人に見てもらえるYouTube漫画動画を作るためには、いくつかのポイントがあります。
ここでは、YouTube漫画動画を作る際のポイントを3つご紹介します。
漫画動画に限った話ではありませんが、チャンネルのコンセプトやターゲット層を設定し、それに沿った動画を制作しましょう。
再生回数を安定的に伸ばすためには、固定ファンを作る必要があります。投稿される動画の系統が日によって変わると、単発で再生回数が伸びることはあっても、チャンネル自体を伸ばすことは難しいです。固定ファンを増やしチャンネルを伸ばすためには「20~30代の女性をターゲットとした恋愛系の漫画を投稿する」「10~20代の若年層をターゲットにコント動画を投稿する」のように、チャンネルのペルソナとコンセプトを設定しましょう。
画面に動きがないと、動画の途中で視聴者に飽きられてしまいます。イラストの視点を移動させたり、エフェクトを加えたりして、画面に動きを加えるようにしましょう。
最近では、セリフに合わせて口元を動かしたり人物だけを動かしたりといった、一部にアニメーションを取り入れた漫画動画も増えています。このとき注意が必要なのが、イラストを動かすためには、イラスト作成を依頼する際にどのように動きを加えたいのかをあらかじめ伝えておく必要がある点です。例えば、背景は動かさず人物だけを動かしたい場合は、背景と人物を別々に描いてもらう必要があります。動画編集の段階になってから「ここでイラストを動かしたかったな」とならないように、脚本を作成する時点で完成形をイメージしておきましょう。
視聴者に快適に動画を視聴してもらうためには、動画のクオリティもある程度高くないといけません。そして、動画のクオリティを大きく左右するのが、脚本とナレーションです。間延びしたストーリーや棒読み感の強いナレーションは視聴者を飽きさせてしまい、最後まで動画を見てもらえなくなってしまいます。
また、漫画動画を広告に活用する場合、クオリティが低いと怪しいと思われてしまいかねません。もちろん、イラストや動画編集もクオリティが高いに越したことはありませんが、動画のクオリティを高め、ファンを増やすために、まずは脚本や声優にこだわることをおすすめします。
漫画動画は人気のジャンルである一方「胡散臭い」「内容が不快」などの理由から嫌われてしまいやすいジャンルでもあります。視聴者を不快にさせないYouTube漫画動画にするためには、内容を誇張しすぎないということが大切です。
漫画動画でありがちなのが、実際の内容よりも誇張したタイトルやサムネイルを設定する、いわゆる「タイトル詐欺、サムネ詐欺」です。たしかに、魅力的で目を引くタイトルやサムネイルを設定すれば、動画をクリックしてもらいやすいです。
しかし、誇張しすぎたタイトルやサムネイルは「いざ再生してみたら期待していた内容と全然違った」と視聴者にがっかり感を与えてしまい、嫌われる原因となってしまいます。また、漫画動画の広告を制作する際も、商材の効果やメリットを誇張しすぎてしまうと、結果的に会社の信用を落とすことになってしまうので、気を付けましょう。
漫画動画の制作は工程が多く、さまざまなジャンルのスキルが必要です。そのため、一人で脚本から編集までを行うのは困難なので、たいていのチャンネルでは工程ごとに外注しています。
漫画動画制作の外注先としては、主に動画制作会社とフリーランスの2つがあります。
まずは、漫画動画制作を得意としている動画制作会社に依頼する方法です。
動画制作会社に依頼すれば、脚本から編集まで一手に依頼できることが多いので、フリーランスに比べ、担当者を探す手間が少なくなります。
次に、フリーランスの脚本家、漫画家、声優、動画編集者にそれぞれ依頼する方法です。
フリーランスの外注費用は、単価によって決まります。脚本家や声優は文字単価、漫画家は1枚ごとに単価が設定されていることが多いですが、その値段は人によって差があります。人気のある人を採用すればクオリティの高い仕上がりを期待できますが、人気が高ければ高いほど単価も上がるでしょう。予算があまりない場合は、クラウドワークスやランサーズといったクラウドソーシングサービスでワーカーを探すことをおすすめします。
漫画動画の効果やメリットについてわかったところで、YouTube漫画動画の実例をご紹介します。当記事でご紹介するのは、漫画動画を投稿しているYouTubeチャンネルの中から、特に人気のあるYouTubeチャンネルと、代表的な動画です。
以下のチャンネルは、いずれもYouTube上で高い再生回数を誇っているクオリティの高い漫画動画をリリースしています。
それぞれ見てきましょう。
フェルミ研究所は、漫画動画のパイオニアと呼べるYouTubeチャンネルで、一貫してクオリティの高い漫画動画を制作しています。動画の内容は最初のアニメーション以外は基本的に漫画のコマを切り替えていく方式になっており、漫画動画の基本と呼べるものになっているのが特徴です。
特筆すべきは脚本力の高さで、日常においてふと気になることや雑学などを綿密なストーリーで紹介しています。動画の要点に直結するような内容ではなく、読み物としてしっかりと物語が構成されているところは参考にしたい点です。 イラストもキャラクターのバランスに破綻がなく高いクオリティを維持しており、漫画動画を制作する際にまずお手本にしたいチャンネルといえるでしょう。
漫画動画の発展系といえる動画を制作しているのが、テイコウペンギンのチャンネルです。基本的な場面転換は漫画のコマ送りに近いものの、アニメーションを随所に取り入れているのが特徴で、可愛らしく線のくっきりとしたキャラクターが細かく動く姿は見る人に癒しを与えてくれます。ストーリーも秀逸で、素朴な疑問や少々空想的な内容まで、要点を先に伝えて物語で膨らませるという方式で解説しており、イメージがしやすいものになっているのが特徴です。
テイコウペンギンの動画と同じようなクオリティの動画を制作するには、それなりの予算がかかりますが、漫画動画の新たなかたちとして、参考にしたい動画チャンネルといえるでしょう。
多数のバーチャルライバーが所属している大手事務所の「にじさんじ」が公式で運営しているYouTubeチャンネルです。にじさんじのバーチャルライバーは、基本的に「YouTube Live」を利用してゲーム実況や雑談、番組企画などを生配信しており、1本の動画の時間が長いという特徴があります。結果的にすべての動画を追うのが難しくなっており、ファンがダイジェスト的に見どころを切り抜いて編集した「切り抜き動画」が多数投稿されています。上記の動画は、公式が制作した切り抜き動画に漫画を加えたものです。
バーチャルライバーは基本的にそこまでキャラクターを動かすことができない都合上、動画というよりラジオ的な要素が強くなっています。上記の動画は、切り抜き動画に漫画を加えたことで、ライバーの音声から予測される動きなどをより自由に表現することができるようになっており、事務所に所属するライバーの魅力をより引き出すことに成功しているといえるでしょう。音声や文章といった情報に漫画が加わることで、より情報が鮮明になることがわかる好例といえます。
YouTube漫画動画は、手軽に視聴でき、内容が多様であることから人気のジャンルの一つといえます。そのため、比較的再生回数が伸びやすい動画ジャンルではありますが、チャンネルのコンセプトやペルソナをしっかり設定したり、画面に動きを加えたりして視聴者が飽きないように工夫することがポイントです。そうすることで、動画の再生回数やチャンネルをを伸ばせるでしょう。
また、誇張したタイトルやサムネイルを設定した動画やクオリティの低い動画は、視聴者を飽きさせてしまったり不快感を与えてしまったりするため、注意しましょう。漫画動画は脚本、イラスト制作、声優、動画編集の4つの工程を踏んで制作します。それぞれ専門性の高い作業であり、一人ですべてこなすのは困難なため、動画制作会社やフリーランスに外注するとよいでしょう。
WEBでのお問い合わせはこちら