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インナーブランディング(Inner branding)とは「インターナルブランディング(Internal branding)」や「インターナルマーケティング(Internal marketing)」とも呼ばれ、社内の従業員に向けて行われるブランディングのことです。
近年、その対象が商品やサービスが顧客に届くまでに関わるすべての人へと広がってきています。具体的には、派遣社員・パートタイマー・商品を運送してくれる業者・小売してくれる業者・株主などで、これらの人たちに企業ブランドの価値・サービス・企業理念・経営方針などをより深く知ってもらうための啓蒙活動を行うのです。
インナーブランディングとは何かをより深く理解するために、その目的・アウターブランディングとの違い・インナーブランディングが注目される背景について解説します。
インナーブランディングは、従業員にブランドの目指すビジョンや方針を理解してもらい、それに沿った行動を取ってもらうことによって顧客に提供できるサービスを向上させるのを目的として行います。
アウターブランディングで築き上げた顧客が抱いているブランドイメージと、インナーブランディングで築いた従業員が抱いているブランドイメージが合致すると、そのブランドイメージに近づくよう従業員の意識や行動に変化が表れてくるためです。
インナーブランディングの目的を達成するためには、まず従業員に次の3つを理解してもらうことが重要です。
従業員がこの3つに共感してくれることで、意識が変わり始め、やがて行動の変化にもつながっていくでしょう。
インナーブランディングとアウターブランディングの大きな違いは、収益に直接結びつくかどうかという点です。企業がアウターブランディングには積極的に取り組んだものの、インナーブランディングには消極的だった背景にはこのことがあるといえるでしょう。
しかし、アウターブランディングにどれだけ予算をかけても、従業員が顧客の求めているブランドイメージ通りの行動をしてくれなければ、企業の求めるブランディングの成果を挙げることはできないのです。
この意味でインナーブランディングとアウターブランディングは表裏一体であるため、同時進行で行うのが望ましいと言えるでしょう。
インナーブランディングが注目される背景は次の3つです。
2017年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口 平成29年推計」によると、労働者として働く年齢層の「生産年齢人口(15〜64歳)」は、1995年には8,726万人でしたが、その後少しずつ減少を続け2015年には7,728万人となっています。
企業はすでに労働力を確保するため人材獲得や育成に力を注いでいますが、インナーブランディングを行うことでES(従業員満足度)や従業員エンゲージメントが向上するため、人材確保や離職防止に役立つでしょう。
2019年4月から開始された働き方改革では、多様な働き方を選択できる社会の実現を目標とし、さまざまな施策が行われています。これにより女性の社会進出・外国人労働者の受け入れ・シニア労働者の受け入れなどが進みましたが、これまでの画一的な労働環境や人事施策では、ESや従業員エンゲージメントの向上にはつながりにくくなってきているのです。
多様な働き方を選択できるようにする一方で、従業員がその企業の一員であるという帰属意識を持って仕事に前向きに取り組んでもらうためにもインナーブランディングは重要視されています。
2019年に総務省統計局が発表した「労働力調査」の結果によると、転職者数は351万人と過去最多を記録しています。また「より良い条件の仕事を探すため」に転職した人の数も127万人と過去最多となりました。
終身雇用制度は当たり前ではなくなり、転職市場が活発化している時代においては優秀な従業員とのエンゲージメントが企業において課題となっているため、インナーブランディングに注目が集まっているのです。
インナーブランディングとアウターブランディングを同時進行で行うのが現代の企業にとって必要なことですが、インナーブランディングを行うメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。5つご紹介します。
ブランド力の高い企業は顧客から信頼され、価格競争にも巻き込まれにくくなるためビジネスを有利に進めることができます。
商品やサービスの質を高めるのはもちろんですが、アウターブランディングで広告宣伝やSNSマーケティングなどを行い、インナーブランディングでカスタマーサービス部門が顧客に対してブランドイメージに合った対応を行うことで、ブランド力が高まり企業価値の向上にもつながるでしょう。
インナーブランディングにおいて、従業員に対し企業の持つビジョンや方向性をしっかりと示すことで、従業員はそれぞれ自社の商品やサービスに対して愛着を持つようになるため、ES(従業員満足度)や従業員エンゲージメントが向上しやすくなります。
従業員にとっては自分の仕事が企業の成果にどのように貢献しているのかが明確化するため、仕事に誇りを持ち、主体的に考え行動できるようになるのです。
インナーブランディングを行うと企業のビジョンや方向性に共感する人が新卒採用でも中途採用でも集まりやすくなるため、優秀な人材を確保しやすくなります。
また、そのような従業員は採用した後もやりがいを見つけて仕事に取り組むため、離職率の低下や定着率の向上に貢献してくれるでしょう。
インナーブランディングを行うことで、従業員の意識が自発的・主体的な方向へと変化していき業務を効率化することができます。
これは、インナーブランディングを行うことで、行動の指針が明確化しているため従業員は判断に迷いにくくなったり、業務に課題があっても自主的に改善に取り組むようになったりするためです。
インナーブランディングとアウターブランディングをバランスよく行うことによって、顧客の期待に企業の商品やサービスが応えられるようになっていくためCS(顧客満足度)が向上します。
顧客満足度が上がることで、さらに従業員の意識も変化するためインナーブランディングが加速するでしょう。
インナーブランディング動画とは、企業におけるブランドの理念・ブランドの目指すビジョン・ブランドの価値を映像化したもので、「ブランドエッセンスビデオ」と呼ばれる場合もあります。
インナーブランディング動画を制作するメリットは次の2つです。
動画で伝えることのできる情報量を数値化してみました。
ブランドは形として目に見えるものではないため、言葉だけで表現しようとすると細かなニュアンスまでは伝わりにくく、従業員によって理解の差が生まれがちです。
しかし、動画では映像や音声を用いることで伝えられる情報量が文字情報よりはるかに多くなるため、共通のイメージを持ってもらいやすくなるだけではなく、感情を動かしブランドの理念やビジョンに共感してもらいやすくなります。
また、動画はストーリー性をもたせて具体的に内容を想像させることができるため従業員の記憶にもより残りやすくなるのです。
インナーブランディング動画は一度制作してしまえば人数や回数の制限なく視聴することができるため、すべての従業員に共通したメッセージを届けやすくなります。動画制作に初期費用がかかったとしても、費用対効果は高いと言えるでしょう。
企業におけるブランドの理念やビジョンを伝えやすくするインナーブランディング動画ですが、制作するコツを3つご紹介します。
インナーブランディング動画を制作する際は、企業におけるブランドの理念・ビジョン・ブランドの価値をできるだけ共感できる言葉に置き換えて伝えましょう。
具体的には、理念・ビジョン・ブランドの価値を淡々と伝えるのではなく、それが生まれた背景や想いを併せて伝えることで、より従業員の感情を動かし共感してもらいやすくなります。
アウターブランディングにおける広告戦略と似ていますが、インナーブランディング動画においても訴求したい内容を明確化しておくことは重要です。
事前にコンセプトを立てて、それに沿った動画内容とすることで従業員に内容がストレートに伝わるでしょう。
インナーブランディング動画においては、企業が社会において果たす役割やビジョンを達成して実現したいことなどを盛り込むと、従業員が視聴後に使命感や誇りを持って仕事に取り組めるようになります。
顧客からの感謝のメッセージなどを盛り込むのもいい方法の1つです。
インナーブランディング動画を制作する時の注意点を2つご紹介します。
企業の理念やビジョンがどれだけ素晴らしくても、従業員に「社内向けだからと予算を削減して作った」「クオリティに妥協した」といった感想をもたれる動画を制作したのでは、かえって会社に対する失望を招きインナーブランディングにつながりません。
このようなことにならないためにも、コンテンツや動画の見せ方を工夫し、従業員の想像を超えるような意外性のある動画を制作することが重要です。
インナーブランディングは経営者が従業員に押し付けるものではないため、一方的な想いを動画でぶつけるのは避けた方が良いでしょう。
インナーブランディング動画の活用事例を2つご紹介します。
印象的なキャッチコピーをピアノの美しいソロに乗せて始まる西武鉄道株式会社のインナーブランディング動画は、会社で実際に働く人たちがどのようにお客様の願いを具体的にかなえてきたのかをメッセージとして順番に伝えていく内容となっています。
経営層の人たちではなく、同じ従業員が強いメッセージを発することで、広く共感を得られる内容となっています。
蔦屋書店・Tポイントカード・図書館など、幅広い事業を手掛けるカルチュア・コンビニエンス・クラブのインナーブランディング動画です。
幅広い事業を行うことにより企業の方針が見えづらくなっているのを「私たちは目指しています。世界一の企画会社を」というキャッチコピーで明確化し、お客様・仲間・自分自身をHAPPYにする企画を生み出せる会社になろうと呼び掛けているため、従業員の共感を得られる内容になっているといえるでしょう。
インナーブランディングは社内に向けて行われるブランディングのことを指し、企業においてはアウターブランディングとともに行うのが望ましいといえますが、動画を活用することで伝えられる情報が多くなるため、より従業員の共感を得やすくなることがわかりました。
この記事を参考にして、ぜひ自分の会社に合ったかたちでインナーブランディング動画を制作してみてください。
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