企業が自社のCM効果を測定することには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。5つご紹介します。
消費者行動モデルとは、ターゲット顧客が商品やサービスをCMやWeb広告などで認識してから購入・利用に至るまでの過程をモデル化して整理したもので、以前はAIDMA(アイドマ)モデルやAISAS(アイサス)モデルが多く用いられてきました。
AIDMAモデルでは、ターゲット顧客は注目(Attention)→興味(Interest)→欲求(Desire)→記憶(Memory)→行動(Action)という過程を経て購入・利用に至ります。
またAISASモデルでは、ターゲット顧客は注意(Attention)→ 関心(Interest)→ 検索(Search)→行動(Action)→意見共有(Share)という過程を経て購入・利用に至るのです。
しかし、SNSの登場で情報共有・拡散という概念が強く意識されるようになったため、近年はSIPS(シップス)モデルがよく用いられるようになりました。
SIPSモデルでは、ターゲット顧客は共感(Sympathize)→確認(Identify→参加(Participate)→共有・拡散(Share&Spread)という過程を経て購入・利用に至りますが、今までの消費者行動モデルには存在しなかったのが「共感(Sympathize)」です。
SIPSモデルでは、この共感が情報の入り口となるため、テレビCMが数多くのターゲット顧客に共感されているかどうかをデータ化するだけでも運用改善につなげることができます。
具体的には、CM効果の測定としてSNSでどのくらい話題になっているのかや拡散されているのかを数値化すれば、CMがどのくらい購買行動の入り口としての役割を果たしているのかがわかるというわけです。
2021年現在、広告媒体はテレビCMだけではなく、ラジオ広告・新聞広告・雑誌広告・YouTubeの動画広告・リスティング広告・SNS広告など、その選択肢が増加してきています。
そのため、自社の商品やサービスにどの広告媒体が適しているのかをデータを基に分析し、費用対効果を考慮したり改善を繰り返したりしながら運用していくのが一般的となっています。
インターネット広告の場合はそれぞれの媒体におけるデータ収集や分析ツールが充実していて、最初から運用改善しやすい環境が整えられていましたが、テレビCMの場合はCM出稿情報やターゲット顧客のCM視聴データの収集ができなかったため、CM効果の測定をすること自体が難しい環境でした。
しかし、近年においては全国のCM出稿情報が収集できるようになり、インターネット接続機能を持つスマートテレビの普及からCM視聴データの収集も容易にできるようになったため、CM出稿情報とスマートテレビの視聴ログを組み合わせることで全国のCM視聴実態をデータ化し、安定した分析を行うことが可能となったのです。
これらのことから商品やサービスを広告展開する際、どの広告媒体を選択するのが自社の商品やサービスにとって望ましいのかが、以前と比べて正確に比較検討しやすくなったといえるでしょう。
今まで習慣的にテレビCMに出稿していた場合でも、それが本当に効果を挙げているのかを検討したり、自社の広告戦略と考え併せてより効果の高い出稿方法に改善したりできるようになったということです。
クロスメディアとは、1つの商品やサービスについてさまざまな媒体を用いて広告宣伝活動を行い、相乗効果を高めていく広告戦略を指します。
クロスメディアに使用できる媒体は、テレビCM・ラジオCM・新聞広告・雑誌広告のマスコミ四媒体広告、ダイレクトメール・フリーペーパー・イベント出展などのニッチメディア、リスティング広告・動画広告・SNS広告などのインターネット広告ですが、これらの相乗効果を高めるためにはデータ分析と継続的な改善が欠かせません。
CM効果を測定し、正確なデータを基にクロスメディア展開を行えば、よりターゲット顧客に合った形で広告を届けられるため、積極的な購買行動へもつながりやすくなるでしょう。
CMのクリエイティブではさまざまな表現が用いられますが、CM効果を測定することでどのようなクリエイティブがターゲット顧客の感情に働きかけ、購買行動へとつながったのかを可視化することができます。
例えば、トレンドを取り入れた表現のクリエイティブがターゲット顧客に目新しさを感じさせ売上に貢献する場合もあれば、定番のクリエイティブがターゲット顧客の信頼感を高めて売上に貢献する場合もあるでしょう。
CM効果を測定すると、売上に貢献するクリエイティブだけを選択し、それを効率的に運用できるようになります。
CM制作にかかる費用や出稿費用は、クリックするごとに課金されるCPC課金方式や1000回広告が表示されるごとに課金されるCPM課金方式を取るインターネット広告と比較すると、かなり大きいといえるでしょう。
CM効果を測定することで、ターゲット顧客の購買行動へとつなげられなかった場合、どのように広告戦略を改善すればよいのかを素早く把握することができるため、広告運用を常に最適化でき費用対効果を高められます。
CM効果を測定する方法というと最初に視聴率を思い浮かべがちですが、それ以外にも実はさまざまな観点から効果を測定することができます。
視聴率を使用したGRPとGAPという指標についても後の項目で触れますが、最初に視聴率を測る以外の方法を3つご紹介します。
CM効果を測定する方法の1つとして、自社のWebサイトへの流入数を計測するという方法があります。具体的には、テレビCMが放送された後に企業名や商品・サービスの名前をキーワードとして検索された数がどのくらい増加したのかを計測するのです。
例えば、Webサイトの分析によく使用されるGoogleアナリティクスを用いると、Webサイトへの時間帯別アクセス数を調べたり、コンバージョン率などの別の指標と組み合わせて分析したりできるため、CM効果が可視化しやすいでしょう。
商品やサービスを購入してくれたターゲット顧客に対してアンケートを行い、どのような広告媒体を見て商品を知ったのか、また購入を決断したのかを回答してもらうという測定方法も有効です。
継続的にアンケートを行うことで、過去のCM効果とどのような違いがあるのかを見極めることもできるでしょう。
テレビCMとして公開する前に候補作2つをWeb上で公開し、ABテストを行うという測定方法もよいでしょう。
ABテストを行って結果が良かった方をテレビCMとして放送することで、費用対効果も高めることができます。
前項でCM効果の測定方法について3つお伝えしましたが、現在テレビCMの効果を測定する際によく用いられる指標が「GRP」と「GAP」です。
それぞれの概要と違い、また望ましい分析方法やおすすめツールについてもご紹介します。
GRP(Gross Rating Point)とは、放送局が地域・契約時間・希望時間帯を絞り込んで流す「スポットCM」の効果を測定するために用いる指標です。「延べ視聴率」と訳され、次の式で求めることができます。
GRP=テレビ番組の平均視聴率×CM本数
例えば、テレビ番組において平均視聴率が12%の時に5本のCMを流したとすると、12×5=60GRPになるということです。
GRPの数値が高いほど多くの視聴者の目に触れたということにはなりますが、ただテレビをつけているだけで画面は見ていない可能性があったり、CMのターゲット層ではない人が見ていたりする可能性があります。
そのため、CMを流す時間帯や頻度を決めるための指標にはなりますが、売上に直結する指標ということにはなりません。
GAP(Gross Attention Point)とは、センサーカメラによる顔認識技術を活用し、テレビCMを誰が見ているのか、画面を見ているのかを毎秒単位で識別する測定方法で「延べ注視量」と訳されます。2015年に株式会社デジタルインテリジェンスにより、GRPの課題とする部分を補うために提唱されました。
GAPでは1秒間の画面注視を1GAPとして算出するため、累積することで何人の視聴者がどのくらいの時間画面を注視していたのかを知ることができるのです。
GAPは新しい指標のためまだ確立された測定方法とはいえませんが、GRPとの組み合わせによってCM効果の測定に役立つでしょう。
近年テレビCMだけを用いて商品やサービスのPRを行っている企業は少なくなり、媒体の種類の違いはあってもインターネット広告やSNSを利用した発信を組み合わせて行う場合が多くなりました。そのため、GRPやGAPを用いてテレビCMの効果を単体で分析するというのは、マーケティング担当者としてはあまり望ましい姿勢とは言えません。
例えば、テレビCMを見て商品やサービスを知ったターゲット顧客であっても、SNS広告やネットの口コミ情報などを参考にして最終的に購入を決断するといったように、複数の広告媒体が購買行動に影響を与えることが増加してきています。
このことから、GRPやGAPを使用して分析を行う際は他の媒体がターゲット顧客に影響を及ぼしていることも考慮し、横断的に全体を見渡して分析を行うのがよいでしょう。
これまでご紹介した方法でもCM効果の測定をすること自体は可能ですが、手間と時間がかかってしまうため、GRPやGAPの考え方を取り入れながら工数を削減できる、専用のCM効果測定ツールを使用するのがおすすめです。
CM効果測定ツールにはCM効果測定に特化したツールとクロスメディア展開を考慮してインターネット広告の影響も要因として分析できる統合分析ツールの2種類が存在するため、企業の広告戦略に合わせて使い分けることができます。
それぞれのおすすめツールをご紹介します。
TVISION INSIGHTSは、テレビを誰がどのように視聴したかという指標を「視聴質」と捉え、視聴者の自宅に独自に開発した人体認識アルゴリズムを組み込んだセンサーと機器を設置してVI値(テレビの前にどのくらい人がいるかを示す滞在度)とAI値(テレビの前にいる人がどのくらいテレビを注視しているかの注視度)を1秒ごとに計測し、効果の高いCM枠を検出したり、クリエイティブの質を検証したりできる分析ツールです。
TVISION INSIGHTSでは、GRPやGAPの考え方を基にさらに細分化して詳細に分析できるため、Webマーケティングで行うような精度でCM効果を分析したい人におすすめです。
ADVAは、テレビCMを中心に広告のプランニング・制作・出稿から分析までをトータルにサポートしてくれるツールで、テレビCMだけではなくSNSマーケティングなどの間接的な要因も含めて、広告効果を正確に測ることができます。データサイエンスに基づいた定量的な判断で、その企業の広告戦略に応じた成果を最大化することができるのです。
ADVAは現在クロスメディア展開を考えているため、それらのデータを横断的に分析して今後の広告戦略に活かしたい場合や、CMクリエイティブの制作も含めた相談に応じてほしい場合におすすめです。
テレビCMの効果測定を正確に行うことは今までは難しいことでしたが、センサーや機器の技術的な発達やGRP・GAPといった新しい指標の開発により、インターネット広告に近い精度で広告効果を分析できるようになりつつあることがわかりました。
テレビCMをインターネット広告と同じように分析できれば費用対効果を高めることができるため、各企業でもよりクロスメディア展開や広告出稿に積極的になることができるでしょう。
この記事を参考にして、ぜひCMの正確な効果測定に取り組み、自社の広告戦略の改善に役立ててみてください。
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