ライブコマースとは、その言葉からもイメージできるように「ライブ」と「eコマース」を掛け合わせた言葉です。それぞれの意味の通り、ライブ配信をしながらネットショッピングができる動画配信を指します。
ライブコマースでは、ショップスタッフやインフルエンサーがライブ配信で商品の解説や実際にデモンストレーションをしながら商品の訴求をします。ユーザーはライブ配信者に直接チャットをしてダイレクトにコミュニケーションを取りながら、商品の検討から購入までその場でできるのです。
特に中国では既に市場規模が広がっており、インフルエンサーが1日で約410億円の売り上げを上げたほどです。(※)
今までの動画マーケティングとの大きな違いは、2つあります。
YouTubeなどの動画配信サービスを利用したマーケティングの場合、一方的に商品の魅力を伝えることや、配信者が想定するターゲットの悩みについてコンテンツを作る形になります。
その場合ターゲットへの訴求はできるものの、ターゲット外のユーザーへの訴求や実際のニーズを汲み取れない場合があります。しかしライブコマースでは生でユーザーのニーズを聞き出すこともできるのです。
また、配信者とユーザーがコミュニケーションを取れるので、ユーザーが生の買い物体験を味わうことができるのです。その点においてただの動画配信では味わえない満足感がある点も大きな違いです。
ライブコマースのメリットをまとめると
このようにライブ配信ならではの強みがあり、試してみないとわからない商品をライブで見せることで、ユーザーからの信頼を得ることができます。また、ユーザーとコミュニケーションを取ることでニーズの深掘りができたり、ユーザーの不安解消ができ、購入率を上げることができます。
一方でライブコマースのデメリットは
ライブコマースの大きなデメリットは、閲覧者が少なければ費用対効果が非常に悪いことです。ライブ配信をするために告知やインフルエンサーの起用に費用がかかります。
また、ライブコマースの場合、ユーザーとの生での繋がりを持てなければ効果が無いので、準備に非常に時間がかかるのです。動画自体はアーカイブに残すことは可能ですが、生配信ならではのデメリットは多いので、アーカイブの視聴は効果が薄いと言えるでしょう。生配信性成功のためにも、入念な準備が必要になります。
※参考:中国「ライブコマース」は世界の10年先をゆく、業界の構造と利益配分率も詳解
ライブコマースが注目されている理由は大きく3つあります。
簡単にまとめると、スマートフォンやSNS・EC物流の発達により、いつでもどこでも情報をキャッチし商品を購入できるようになっていることが背景にあります。そして、2020年の新型コロナウィルスによる巣篭もり需要で、ライブコマースに追い風が吹いているのです。
ではそれぞれ細かく見ていきましょう。
経済産業省による調査によると、2019年の国内B2CのEC市場は、物販系分野で10兆515億円、伸び率が前年比の約8%で、毎年伸びています。また、C2CのEC市場も1兆7,407億円で9.5%の伸び率で、市場規模は拡大しています。(※1)
併せて動画配信市場も毎年2桁成長をしており、一般財団法人デジタルコンテンツ協会の『動画配信市場調査レポート2020』によると2024年には動画配信市場が3,440億円を越すと予想されています。(※2)
そのような中で、ライブ配信アプリや動画配信とEコマースを繋げるインタラクティブ動画技術の普及もあり、ライブ配信市場の成長も見込まれているのです。既に中国ではライブコマース事業が急成長しており、流通額が総額14兆円を超えるほどの普及をしているのです。
ライブコマースのメリットの一つは、全国へ市場を広げられることです。ライブコマースのメイン商材は物販になりますが、物販は基本的には店頭販売がメインになりますよね。しかし、SNSやEコマースの普及で全国どこでも買い物ができるようになったため、商圏が大きく広がっているのです。そして、ライブコマースでは物販のデメリットである「実際に見てみないとわからない、使ってみないとわからない」という問題が解消しやすい利点があります。
収録動画でなく、ライブ配信をすることで、ユーザーの要望を聞きながら使ってみたり、加工が一切ない生配信ならではの信頼感を全国に広げることができるのです。
さらにライブコマースが注目される理由が5Gの普及です。現在の配信技術ではどうしても時間のラグがあったり、ライブ動画では画像が荒く商品の良さが伝えきれないケースが多いです。しかし5Gの普及で、時間のラグが一切ない環境で、よりクリアな映像で商品の魅力を伝えることができるのです。
時間のラグがなく映像がクリアであれば、実店舗で商品を見て接客を受けるような感覚で、どこにいてもお買い物ができるのです。
(※1)参考:令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)
(※2)参考:『動画配信市場調査レポート2020』発刊について
ライブコマースの大きなデメリットとして、多くのユーザーが見てくれなければ費用対効果が薄いことが挙げられます。ライブコマースの場合はインフルエンサーを起用したり、インタラクティブな環境を構築するための費用もかかります。そのため、より多くのユーザーにライブを視聴をしてもらって購入をしてもらわなければ効果が薄いのです。
そこで重要なポイントが告知です。告知をしっかりできていなければユーザーが配信に集まってきません。ここではライブコマースの告知の方法に関してお話をしていきます。
メインとなるのは企業のWebサイトやSNSでの告知になります。ライブ配信のURLを貼り付けユーザーに参加を促します。直前での告知ではなく事前に何度も繰り返して告知を行い、ユーザーへの認知を図る必要があります。
より多くのユーザーにリーチするために、ライブコマースをする企業はYouTubeやInstagramなどの動画閲覧者が多いプラットフォーム上での告知を優先して行うようにしましょう。外部メディアを利用する際は、自社製品のターゲット層が閲覧するメディアを選定することが重要になります。
2つ目の方法は、ライブ配信者のSNSやYouTubeでの告知です。ライブコマースは企業がインフルエンサーを起用して配信をするケースが多いです。
そこで、インフルエンサーのYouTubeやSNSで告知の発信をしてもらいます。インフルエンサーの影響力が集客のポイントになるので、企業は自社製品のターゲット層とインフルエンサーのフォワーがマッチしているかを事前に必ず精査する必要があります。ターゲット層が合っていなかったり、インフルエンサーと告知方法について了解を取っていないと、効果が薄くなってしまう場合があるので注意をしましょう。
ライブ配信後の対応も重要になってきます。おそらくライブコマースの初動は想定以上に良くはないでしょう。結局はリピーターや口コミで広がりがなければ、今後の視聴者が伸びないのです。
そこで重要なポイントは
このポイントが重要です。ライブコマースでは告知が重要になるので、ユーザーがわかりやすい周期で配信をする必要があります。
また、アーカイブを残しておくことで後から訪問したユーザーにライブ感を伝えることもできます。アーカイブを企業やインフルエンサーのInstagramストーリーズにあげるなどをして、事後告知をしても良いでしょう。
ライブコマースをするためには配信プラットフォームが必要になってきます。ライブコマースとライブ配信の違いは、ライブ配信画面から購入までシームレスで簡単にできるところです。
単純にライブ配信を行い、概要欄から企業のECサイトのURLに移ってもらってオンライン購入をしてもらうだけであれば、動画配信環境やZoomなどのアプリがあれば問題はありません。
しかしその場合、ライブ配信画面からECサイト画面に移ることで離脱率が上がったり、ユーザーが購入に至るまでのストレスになりCVRが落ちる可能性があるのです。
そこで、ユーザーがライブを見ながらそのまま購入まで辿り着けるようにライブコマース配信プラットフォームを利用するのが得策です。ここではいくつかおすすめのライブ配信プラットフォームを紹介します。
楽天にショップを持っている方であればこれを使う手はないでしょう。
楽天ライブの特徴は
通常のライブ配信機能として利用できることはもちろん、楽天市場と連携をすることでユーザーがライブ配信を見ながら楽天でお買い物をすることができるのです。スマホがあれば無料で誰でもできるので、個人でも参入しやすい点においてメリットが大きいです。
TAGsAPIは三越伊勢丹やBEAMSなどの大手小売企業でも採用されているライブコマースプラットフォームです。
TAGsAPIの特徴は
通常ライブコマース機能を実装する場合、新たに開発環境を作る必要がありますが、TAGsAPIでは既存のECサイトにコードを加えるだけでライブコマース機能をつけることができるため手軽です。また、大規模配信にも対応可能。カスタマイズもできるので、企業のECサイトに合わせた柔軟性も魅力です。ライブコマースを導入したとしても、ユーザービリティを落とすこともありません。
大手物販系の企業で取り入れられており、撮影のサポートまでしっかりしてくれる実績もあります。自社ECサイトを持っている場合は積極的に取り入れても良いでしょう。
自社でライブコマースプラットフォームを作るのであればライブゲートを利用しましょう。
ライブゲートの特徴は
既存のライブコマースアプリでは、データ管理や安全面の部分で大手企業では扱えない部分もあるでしょう。そこでライブゲートなら、自社の目的に合わせてライブコマースプラットフォームを作ることができます。
オープンなライブコマースからクローズドなライブコマースまで、様々な要件に対応でき、販売までしっかりサポートしてくれます。値段も150万円からとアプリ開発にしてはリーズナブルで、企業であれば着手しやすい値段になっています。
ライブコマースは中国では上記の通り、1時間で数億円の売り上げをあげるケースがありますが、国内ではどうなのでしょうか。まだ国内ではライブコマースがまだ普及をしていない状態ですが、着々と成果を出している企業もあります。ここではいくつかライブコマースの成功事例を紹介していきます。
大手セレクトショップのBEAMSが2020年3月にライブコマースを実施しました。その結果、1時間の配信で6,000人強の視聴者と100万円弱の売り上げを上げることができています。
客単価の高いBEAMSでは、実店舗では1時間で6,000人の来客を呼ぶことは難しいですし、いくら単価が高くても、1時間で100万年売り上げるのは至難の技です。ライブ映像にすることで商品の質感などの顧客ニーズに細部まで応えることができた点においても大きな効果がありました。
アーカイブはこちら
https://cdn1.beams.co.jp/special/live/?live_id=4jdXymTp1ukNCvB77B0N
土屋鞄製作所はインスタライブを活用してランドセルの選び方やケアの仕方などを配信しました。ランドセルは高単価商材で、実物をみて購入をするケースが多い中、外出自粛で実物が見れない顧客のためにインスタライブを活用してニーズに応えるようにしました。
告知方法としては、事前にインスタストーリーズやコメントで質問の受付をすることで認知とユーザー参加を促すことをしていました。
資生堂が自社のビューティーコンサルタントを活用して、化粧品の接客販売を開始しました。
このような多方面での取り組みで、巣ごもり需要の中化粧品の販売訴求をしています。
各百貨店のプラットフォームを利用したライブコマースでは、ビューティーコンサルタントが商品を説明しながら、ユーザーの質問に対して接客をしていきます。視聴者は質問をしたり、他のユーザーの接客を聞きながら商品への理解を深めることができるのです。
その他にも、芸能人やインフルエンサーを招待して独自のオンラインイベントの開催も行なっており、ライブコマース事業への力の入れようがわかります。
阪急百貨店のオンラインサイトで実施したライブコマースの様子はこちら
https://web.hh-online.jp/hankyu-beauty/special.html?fkey=hb_special_shiseido_live
EC市場と動画配信市場が成長している中、ライブコマースの市場は今後も国内でも追い風になってくるでしょう。
この記事の内容をまとめると
今後各企業は店頭だけでなく、SNSやライブ配信の活用をして商圏を広げていく必要があります。また個人の発信力が強い時代では、企業とインフルエンサーの繋がりも大切にしていくことが重要です。
この記事を参考にライブコマースへの取り組みの参考にしてみてください。
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