目次
パーソナライズド動画とは、個々のターゲット顧客に向けてカスタマイズされた動画です。具体的には、ターゲット顧客の属性(氏名・年齢・性別・年収・購買行動など)に合わせて、動画にテキストや画像、音声を差し込み最適化したものです。
動画広告のように一定数のターゲット顧客に対して包括的に訴求するものではなく、個人に向けられているため、ターゲット顧客が「自分事」と感じて最後まで視聴しやすいのが特徴でしょう。2010年ごろに欧米で活用が始まったパーソナライズド動画は、日本でも提供する会社が増加し続け、さらなる市場の拡大が見込まれています。
パーソナライズド動画が注目されるようになった背景には、ネット環境の整備と生活スタイルの変化があります。近年では、スマートフォンが普及して誰でも気軽に動画を見ることが可能になりました。
5Gの普及によって動画再生時に起きる、読み込み速度が遅い、再生が途切れるなどのストレスも解消され、より高画質な動画をストレスなく楽しめるようになりました。企業がマーケティング活動において、パーソナライズド動画を活用するようになった理由といえるでしょう。
YouTubeやTikTokを代表とする動画のプラットフォームが成長したことで、消費者が日常的に動画を見る習慣ができたことや、新型コロナウイルスの流行で銀行や保険会社などの営業スタイルが非対面式のスタイルにシフトしたことも、パーソナライズド動画の普及を後押ししました。
アドビ社が2019年7月に発表した調査結果によると、日本の消費者の約6割が「実店舗かオンラインかを問わず、パーソナライズされたエクスペリエンスを期待している」と回答しています。日本が最もコンピューターによる自動化を好むことが判明しました。
パーソナライズド動画は、オンライン上で顧客の属性や興味関心、行動履歴に合わせてパーソナライズされた動画を制作し、自動で配信する仕組みです。
ベースとなる動画と複数の動画・音声・テキストを用意し、顧客の属性に合った素材を組み合わせた動画を制作します。「自分事」と感じる最適化された動画を配信するのです。
パーソナライズド動画を活用するメリットを5つご紹介します。
パーソナライズド動画を活用すると、クリック率・コンバージョン率の向上が見込めるでしょう。
人間は、多様な情報のなかから自分にとって重要なものを選択して注意を向ける選択的注意という認知機能をもっています。また、視覚に対して働く心理的効果をカラーバス効果、聴覚に対して働く心理的効果をカクテルパーティ効果といいます。
動画は視覚・聴覚両方に訴えることができる媒体であり、パーソナライズド動画は個人を対象としているため、自分にとって重要なものと認識されやすいです。カラーバス効果とカクテルパーティ効果が働きやすくなります。
そのため、ターゲット顧客はパーソナライズド動画の内容を自分事として捉えて興味・関心をもち、クリック率やコンバージョン率の向上につながるのです。
パーソナライズド動画は、複雑な商品やサービスの説明に適しています。
1971年にアメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」では、話し手が聴き手に与える影響は「言語情報」「聴覚情報」「視覚情報」の3つから構成されるとしています。
それぞれの影響力の割合は、以下のとおりです。
メラビアンの法則をもとに考えると、パーソナライズド動画は言語情報・聴覚情報・視覚情報のすべてを含むことがわかります。特に視覚情報を多く取り入れることができる媒体のため、複雑な商品やサービスについても理解しやすいです。
例えば、ターゲット顧客によって自分の売りたい商品やサービスのオプション・見積内容が異なる場合、表やグラフなどを用いることで、わかりやすく表現できるでしょう。
また、動画という媒体はテキスト+画像と比較して約5,000倍、1分間の動画は一般的なWebページの3,600ページ分の情報量を表現できるとされています。複雑な商品やサービスに対して、パーソナライズド動画の効果が高いことがわかるでしょう。
パーソナライズド動画を活用すると、コスト削減につながります。パーソナライズド動画を制作することで削減できるコストは、以下の2つです。
問い合わせ業務や見込み客育成においては、各ターゲット顧客に対して商品やサービスについて同じ説明を繰り返す必要があります。時間と人材を必要とする業務のため、コストに頭を悩ませる企業もあるでしょう。
パーソナライズド動画を制作することで、商品やサービスについての説明やよくある質問を一つにまとめることができます。問い合わせ業務の対応や見込み客育成にかかる時間の削減につながるでしょう。
従来型の動画広告などを制作する場合、商品やサービスに合わせて複数のパターンを制作する必要があるため、コストが膨らむことが多いです。
しかし、パーソナライズド動画は、いくつかのテキスト・音声・画像をテンプレートとして用意して組み合わせることで動画のベースが完成します。一部変更する場合もありますが、比較的少ないコストでターゲット顧客にアピールすることが可能です。
パーソナライズド動画は、非対面での販売・接客に応用できます。
例えば、ターゲット顧客に時間の制約がある場合、対面してじっくり商品やサービスの魅力を説明するのは難しいでしょう。ターゲット顧客に時間がない場合でも、ターゲット顧客とSNSやメールなどでつながっていれば、パーソナライズド動画のリンクを貼り付けて送付できます。個々の好きなタイミングで視聴してもらえるでしょう。
ターゲット顧客にとっても、時間の制約というデメリットを受けずに、商品やサービスの説明を受けられます。パーソナライズド動画を活用することは、双方にとってメリットが大きいといえるでしょう。
パーソナライズド動画は、各企業における今後のマーケティング戦略に活用できます。
パーソナライズド動画では、ターゲット顧客の動画視聴状況を詳しく分析可能です。具体的には、クリック行動・入力情報などからターゲット顧客の興味関心・ニーズ・嗜好などを顧客情報として分析できます。動画視聴時の離脱したポイントがわかれば、より訴求力の高いパーソナライズド動画の制作につなげられるでしょう。
パーソナライズド動画が活用されている場面は、以下のとおりです。
パーソナライズド動画は、既存顧客へのCRM施策として活用されています。CRMとはCustomer Relationship Managementの頭文字を取った略語で「顧客関係管理」や「顧客管理」などと訳されます。
高度経済成長期やバブル期のように、右肩上がりの新規顧客獲得が難しくなった今、各企業は自社のもつ既存顧客をいかに競合他社に流出させないかに力を注ぐようになりました。そのため、自社の既存顧客とより良好な関係を構築するための営業マネジメント手法である、CRM施策に注目が集まるようになったのです。
CRM施策を行うことでターゲット顧客が求めるニーズや価値を最大化すれば、企業はさらに大きな成果や利益を得られるようになります。例えば、既存顧客とSNSやメールでつながっている場合、パーソナライズド動画も再生できるLPへのリンクを貼り付けて送付し、誘導する方法が最も効果が期待できるでしょう。
パーソナライズド動画は、新規顧客へのキャンペーンとして活用されています。
SNS上の新規顧客にパーソナライズド動画を配信することで、興味を引くことができます。Webサイトへの遷移や問い合わせの増加を見込めるでしょう。また、新規顧客には商品やサービスの詳しい説明や問い合わせへの回答が必須といえますが、パーソナライズド動画を配信することで、説明などの手間を一定数省くことも可能になります。
多数の新規顧客に向けてアピールする動画広告と比較しても訴求効果は高いです。効率的に新規顧客を獲得したい場合は、パーソナライズド動画を活用してはいかがでしょうか。
パーソナライズド動画は、営業支援ツールとしても活用できます。
例えば、ターゲット顧客と対面して商品やサービスの説明を行う場合でも、事前にパーソナライズド動画を視聴してもらうとよいでしょう。ターゲット顧客自身が質問したい事項をイメージでき、動画以外で知りたい内容を把握できます。
パーソナライズド動画を活用することで、営業担当者が売りたい商品やサービスを効率よくターゲット顧客に理解してもらえます。営業にかかる時間や手間を削減できるでしょう。
パーソナライズド動画は、契約更新やアップセルとしても活用可能です。契約更新のタイミングに合わせて、契約内容の確認や最適なプランの提案をパーソナライズド動画で視聴してもらうことで、アップセルなどが期待できます。
例えば、保険の契約更新のタイミングで地震保険などの付帯保険を提案する、お子さまが車の免許を取得した時点でアップセルの保険を訴求するなどができるでしょう。
パーソナライズド動画は、顧客のアフターサポートやコスト削減にも活用できます。顧客が抱える困りごとやよくある質問を事前にリサーチして、パーソナライズド動画で説明する、解決するための具体的な方法を紹介するとよいでしょう。
顧客の疑問を事前に解消できるため、アフターサポートの負担を軽減し人的コストも削減できます。顧客のアフターサポートを効率化することで、販売促進などにリソースを最適化できるでしょう。
パーソナライズド動画を使用したマーケティングでは、ターゲット顧客数に応じた大量の動画を制作・配信する必要があります。動画制作・配信サービスを活用するとよいでしょう。
パーソナライズド動画の動画制作・配信サービスでできることはサービスによって異なりますが、大きく以下のとおりです。
リスティング広告を作成し、運用しながらデータを収集して、分析結果をもとに広告を再度配信をする流れに似ています。パーソナライズド動画を制作するにあたって企業内で事前に準備する必要があるのは、ターゲット顧客の属性情報やWeb閲覧履歴などの顧客データです。
おすすめのパーソナライズド動画制作・配信サービスを3つご紹介します。
PRISMは、株式会社クリエ・ジャパンが提供するパーソナライズド動画生成エンジンです。
ターゲット顧客の興味・関心に合わせて動画の内容を変化させる「インタラクティブ機能」や、特許第6147776号の「Mpeg動画ファイル生成方式」による、端末に依存しない正確な表示を実現し、ほかの動画制作・配信サービスと差別化されています。
活用できるデータは幅広く、Web閲覧履歴・契約履歴・診断履歴・顧客属性・購買履歴があります。SNSやメールの動画生成・配信も可能で、自社でパーソナライズド動画制作と配信を行いたい企業に適しているでしょう。
One Dougaは、法人向け動画配信サービスです。
一人ひとり異なる内容の動画を生成するバリアブル動画生成技術を用いています。ベース動画に素材(テキスト・画像・音声)を自動で合成する「自動動画合成エンジン」と、パーツ動画を自由に組み合わせて1本の動画を生成する「動画結合機能」によって、ユーザー属性や行動履歴に合わせた動画の出し分けを可能にしている点が特徴です。
専用チームが導入から運用までワンストップでサポートしてくれるので、まずはホームページから入門資料をダウンロードしましょう。
livepassはパーソナライズド動画生成サービス「livepass Catch」を提供する会社です。
パーソナライズド動画を配信する場合、レンダリング(動画の事前生成)が必要なのが一般的です。livepass Catchではリアルタイム生成が可能なので、大量の配信を一気に行うことができます。
豊富なテンプレートがあるので、比較的簡単に質の高い動画制作が可能です。まずは、ホームページからサービスに関して問い合わせをしてみましょう。
最後に、パーソナライズド動画を活用したマーケティングの具体的な事例をご紹介します。
チューリッヒ保険が、自動車事故の解決までの流れを説明するために制作したパーソナライズド動画です。最初にターゲット顧客の名前を呼びかけ、お見舞いの言葉を伝えることで、安心感をもてるように配慮されています。
専任担当者がつくこと、保険金や修理の話なども動画でわかりやすく解説していることが特徴です。パーソナライズド動画での不明点は最後の画面から問い合わせができるので、顧客にとって非常に親切な作りといえるでしょう。
イギリスのお菓子・飲料メーカーのキャドバリー社が制作したパーソナライズド動画です。海外マーケットのシェア拡大のために制作されました。
動画内にはFacebookからターゲット顧客の写真や名前が取り込まれ、動画内容が自分事として感じられるように工夫されています。
WebBureau Movie(ウェブビューロー ムービー)が制作した、信託銀行が顧客に資産運用状況を説明するパーソナライズド動画です。
動画内で顧客名・運用プラン・運用結果などがインタラクティブに行われ、顧客一人ひとりに最適化したOne to Oneコミュニケーションを実現しています。アニメーションや図・表を使ったわかりやすい動画になっています。
LULUMOVが提供する、野球チーム編のパーソナライズド動画です。ファンの誕生日に野球選手がメッセージを送る企画動画で、最初にファンの名前を呼ぶことで親近感や特別感を演出しています。
動画内でのメッセージのほかに、選手が投げたボールや直筆のサインのプレゼントや、選手のインタビュー動画があるなど、非常に充実した内容になっています。
LULUMOVが提供する、ファッション編のパーソナライズド動画です。動画の冒頭で顧客のポイント残高を伝えて購買意欲を喚起しています。顧客におすすめの夏のファッションを紹介しながら、セット購入での割引を訴求しお得感を伝えています。
セールス感が強くならないように、58秒と短くまとめられている点が特徴でしょう。ポイントの有効期限を伝えることで、失効するともったいないという心理を引き出した効果的な動画になっています。
レッドオーシャンの美容業界では、経営の重要指標である新規リピート率が2〜3割と非常に低い状態でした。美容室Ameriでは、新規顧客の来店日や施術メニュー、担当スタイリストの情報を組み合わせて、担当スタイリストからのオリジナルメッセージ動画を配信しています。
顧客と良好なコミュニケーションを取り関係性を深めることで、高い新規リピート率を実現した事例です。
リコージャパンが、セミナー集客のためにDMとパーソナライズド動画を組み合わせて高い集客効果を実現した動画です。
セミナー参加の見込み客に最適化した内容とQRコードが記載されたDMを作成し、見込み顧客にDMのQRコードを読み込んでもらうことで「PRIZM」で生成された個別動画を視聴してもらえます。過去7回のセミナー申し込み率5.1%から14%へと大幅アップに成功した好例です。
引用元:PRIZM実績紹介|note
パーソナライズド動画の活用方法は、新規顧客へのキャンペーンや既存顧客へのCRM対策など非常に幅広いです。従来の動画広告と比較して、ターゲット顧客に「自分事」と思わせる心理効果があるため、日本でも少しずつ普及が進んでいます。
パーソナライズド動画を自動生成できる動画制作・配信サービスを利用すれば、新しいマーケティング手法はますます企業にとって身近なものとなるでしょう。
ぜひ本記事を参考に、自分の売りたい商品やサービスをパーソナライズド動画で積極的にアピールしてください。
WEBでのお問い合わせはこちら