1つの視点のみで撮影される動画ではなく、360度の角度から風景や物を映し出す映像のことを360度動画と言います。別名「全天球動画」や「パノラマ動画」とも呼ばれることがあります。
一般的に人間が見渡せる視野は180度~200度と言われていますが、360度カメラを使うことによって、人間が見られない角度の映像までカバーできます。360度動画は大きく分けて3つに分類されていますので、それぞれの特徴を覚えておくようにしましょう。
プラネタリウムで使用されることが多く、360度の映像を1枚に収めたおさめた円形の魚眼画像です。およそ2000ピクセル(2Kドーム)から3000ピクセル(3Kドーム)の解像度が一般的ですが、今後はカメラや編集ソフトの性能が上がっていくにつれて4K動画や8K動画も当たり前に出てくると言われています。
日本語では正距円筒図法やパノラマ形式と言い、最も使用頻度の高い形式です。周りの風景を球面から平面に変換し、風景動画によく使われます。水平に360度、頭上から足元までの垂直180度すべての範囲を1枚におさめる形式となっています。世界地図のメルカトル図法のように緯度と経度が直行する形で平面に展開したものとイメージすると分かりやすいです。
3DCGのマッピングに良く使われる、立方体の一部分から周囲を見渡したような映像です。サイコロを分解したように正六面体のスクリーン6面のイメージで、その中心から映像を見たときに360度に見えるという仕組みになっています。
いずれも動画内の中心に視点があり、上下左右360度を見渡せる仕組みになっています。通常の動画にプラスアルファ、視点を変えられる構造ということを覚えておきましょう。その分、動画の幅を広げたり、動画の活用範囲も増えて来るでしょう。そのため今後は企業での導入だけでなく、個人として活動しているユーチューバーでも360度動画をコンテンツにした動画が増えてくることが想定されます。
よく混同されがちなのが360度動画とVR動画です。実際に再生してみても一見同じような動画になっていて、細かく説明できるという人はなかなかいないのではないでしょうか。
360度動画は「現実の動画」、VR「仮想現実」と言われ、そもそも違いがありますが、混同されがちです。ここで両者の違いを抑えておきましょう。
360度の視点から動画を視聴できるという点では全く同じものとなっていますが、違いは「視点」です。360度動画は、正面から上下左右を見渡せるものですが、その視点は撮影者の位置に固定されています。対してVRの視点は固定されていないため、視聴者が自由に視点を動かすことができます。自分が映像を見ている端末を下に下げれば、動画内の映像も下に下がるという、視点の固定がないという特徴を持っています。ある視点をもとに360度見られるものが360度動画、視点を関係なく360度見られるものがVR動画と言えます。この「視点」が固定されているかどうかが、視聴体験にとって重要なのです。
また、もう1つ大きな違いとしてVRは「仮想現実」として映像の中に自身が入り込んだような錯覚を持たせるために専用のVRゴーグルが必要となっているという点です。動画を撮影する側だけでなく、視聴者側でもVRに対応するためのゴーグルやサングラスなどの準備が必要となりますので、注意が必要です。
VR動画のほうがよりその場にいる空気感を味わうことができますが、動画そのもののデータ容量は大きく、視聴者側でも見るための機材を準備しなければいけない、少し手間のかかるものとなっています。体験としては面白いものですが、360度動画ほど気軽に見ることはできないのが現実です。
360度動画は、その場にいなくても「臨場感」を味わうことができます。例えば、賃貸物件の室内の映像を動画にすることによって、実際に足を運ぶことなくその場の空気を感じることができるというのがメリットです。
会社の商品やサービスを360度動画にすることによって、今までの1視点からの動画では伝えられなかった細部までを、360度視点で伝えることができるようになるのです。
YouTubeやFacebookなど、各SNSでも360度動画が投稿されるケースも増えていますので、幅広い視聴者層を増やすために活用することもできるでしょう。
360度動画を活用する企業も増加しています。例えば、自社製品の展示会、説明会での活用などがよく見られるパターンです。実際に会場を設営するための準備費やスタッフの人件費などをカットできることに加え、来場者も時間の短縮や交通費の削減などにもつながります。
なによりも大きいのは、動画という形で残りますので、好きな時に好きな場所でいつでも見られるという点です。特に近年は新型コロナウィルスの影響によって、ウィズコロナというキーワードが今後ますます重要視されてくるのは明白です。それに伴い、360度動画の需要が高まってくることも予想されます。
360度動画を作るためには、360度カメラで撮影をおこなうことが必須です。以前は、物珍しいというようなアイテムでしたが、最近では販売されている光景も珍しくなくなってきました。
360度カメラは「全天球カメラ」「半天球カメラ」の大きく分けて2種類に分類されます。撮影したいものに応じて、どちらかを選択する必要があります。
まず全天球カメラは前後に1枚ずつの計2枚のカメラを搭載して全方向をカバーします。そして半天球カメラは1枚のレンズで水平方向の360度撮影できますが、地球儀で例えると上半分しか撮影できません。上下左右の360度を撮影したい場合には、全天球カメラを選択しましょう。また、360度動画をアップロードするには、パソコンやスマートフォンに専用のアプリケーションやソフトをインストールして編集をおこなう必要があります。
パソコンで編集する際は、Adobe社のAdobe Premiere Pro(サブスクリプション型)がオススメです。テキストやBGMの挿入ができたり、2つのオブジェクトの縁が合うようにつなげるステッチングの修正など、すべてにおいて高い精度のソフトです。他にはApple社の『Final Cut Pro」やCyberLync社の「PowerDirector」も360度動画が編集できるソフトとして有名です。
スマートフォンで編集する際にはIOS、Android両方で使える「VeeR Editor」や「V360」がオススメです。テキストやBGMの挿入などが可能となっていますが、編集作業自体に時間がかかるため、作業効率を求めるのであればパソコンで編集すると良いでしょう。
また、いくら編集ソフトの性能が良くてもパソコンのスペックが追い付いていなければ編集作業、360度動画への変換作業に数時間、場合によっては数日かかってしまうこともあります。動画編集の基本的な部分ですが、パソコンのスペックはIntel core i7、メモリ16GB以上、グラフィックボードも搭載されているもので行うことが好ましいです。長時間で高画質の動画であればスマートフォンでは処理しきれないことがありますので、注意してください。
それではここでは、360度動画の実例を紹介します。お好きな方向にドラッグまたはスクロールして見てみてください。
地上約450メートルにある展望回廊ですが、クリアな視界の眺めを提供できるように窓ふきが行われます。ゴンドラに乗った作業員が展望回廊の窓627枚を磨く作業を、360度見ることができます。本来は見ることのできない作業ですが、それを360度動画にすることによってより臨場感が伝わってきます。
作業員が窓を拭いている作業はもちろん、カメラを上に向けると透き通った空、カメラを下に向けると450メートル下の地上を見ることもできます。
東京スカイツリーの中から窓を拭く様子を見ることはできても、窓の外からの景色は通常見ることはできません。360度カメラだからこそできる動画と言えるでしょう。普段は絶対に見ることができない映像を見られるというのも360度動画の良さです。
住宅内の映像を360度動画にしたケースです。最近では不動産業者が360度動画として撮影して、ホームページに掲載することによって賃貸物件の内覧を自宅でおこない、契約を完結できるような事例も増えてきました。玄関、リビング、トイレやバスルームなど360度で移動して映し出すことができるので、実際に足を運んで内覧しているようにも感じられます。
これまでは、従業員が物件を案内するために現場に出向いて1件づつ案内する必要がありましたが、360度動画を活用すれば、もうその必要はありません。お客さんとしても時間がなくても好きなタイミングで内覧ができます。これから益々不動産業界では360度動画が導入されることが想定されます。
新型コロナウィルスの影響により、お客様を直接案内することが難しくなる会社が出てきたことによって、不動産会社によっては回避策としてホームページ上の物件をできる限り360度動画にしていこうという動きも見られます。
360度撮影しながらジェットコースターに乗った動画です。VRと違い視点が1つだからこそ、かえって実際に乗っているかのような臨場感を味わうことができます。
まだまだ一部の映像しかありませんが、今後は新たに登場するアトラクションを360度動画で事前体験できるという機会も増えてきそうです。動画内で上下左右の視野が広がることによって、また上下左右カメラを移動することによって、実際に乗っているかのような疑似体験をしたり、カメラを後ろに向けることによって、乗っている人のリアクションを楽しむということもできます。ジェットコースターが苦手な方でも、動画であれば楽しむことができるのではないでしょうか。
企業のサービスとして活用されることが多かった360度動画ですが、このようなアトラクションでも導入され始めると、新しいコンテンツとして注目を集めるかもしれません。
360度動画について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。不動産会社の物件内覧や、自動車メーカーの展示会、など企業でもすでに導入されていますが、さらに、一般の動画投稿者からも360度動画の投稿が増えてくることが想定されます。これまでは企業のサービスとして活用されるケースが大半でしたが、最近では個人のユーチューバー単位で360度動画をアップロードされています。
通常の動画に比べると動画自体の容量が大きくなることで、編集に掛かる時間も増えてしまいますので、使用しているパソコンに相性の良い編集ソフトを選ぶことも重要です。もし興味を持たれた方は、視聴するだけでなくぜひ撮影にもトライしてみてはいかがでしょうか。
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