マイクロラーニングの効果的な取り入れ方

マイクロラーニングとはどんな学習方法なのか
マイクロラーニングとは、小さなコンテンツで作られたプログラムを習得する、短時間の学習スタイルのことです。定められた明確な定義はなく、Web上の記事・音声・講義の動画視聴・クイズ形式など、形態は多種多様です。また、「短時間の学習」とあいまいに表しましたが、情報をリサーチする限り、最長でも10分程度で、多くは1分~5分前後のようです。
普及が進んでいるeラーニングは、1回60分程度のプログラムで構成されています。しかし、現代社会ではこの60分を捻出するのが難しいものです。特に会社の規定などでやむを得ず勉強する場合、学習内容に興味が持てなかったりします。また、先に述べたように、最近ではテレワークの導入で、自宅のプライベートスペースで業務をする方も増えました。業務の一環として学習をする場合、テレワークの延長で、プライベートスペースで行われることが多いかと思います。そうするとなかなかスイッチが入らず、勉強時間の確保も一層難しくなります。これまでのように長い学習時間を確保するのは、物理的にも、メンタル的にも大きなハードルとなり、なかなか思うように学習が進まないという状況を生み出しがちです。そこで、私たちの生活の変化に沿った、学習者が取り組みやすいように変化したのがマイクロラーニングなのです。
社会人でも知識向上やスキルアップのための勉強は欠かせません。マイクロラーニングは今の社会にぴったりな学習方法のひとつです。働き方・生活スタイルが変わり、みな時間に追われる生活をしているからです。終身雇用が信頼できない社会情勢下、副業を解禁する企業も増えました。また、労働者も副業から収入を得るために、時間をどうやってひねり出すか、効率の良さ・時間術などが不変的なテーマとして認識されています。
コロナウイルス感染拡大の影響で労働環境も激変しました。テレワークやフレックス制の導入、雇用形態の変化など、今までの働き方が淘汰され、出社の必要性さえ問われています。テレワーク・リモートワークという言葉が浸透し、首都圏の会社に在籍しながら、田舎に住む人も増加しています。
このようにワークライフバランスは変化し、私たちは今まで以上に時間の効率的な使い方を探求しています。企業だけではなく老若男女個人共通の課題です。このような社会の流れからも、マイクロラーニングは現代社会に適切な学習方法なのです。
マイクロラーニング活用のメリット
メリットは学びを提供する側、学習者側両方にあります。
学びを提供する側にとってのメリット5つ
コストが抑えられる
教育には時間がかかりますし、時間は企業にとって人件費に直結します。人材育成は企業の成長にかかわる根幹部分ですから内容の削減が難しいです。しかし、それにかかわる場所と時間についてはコストを削ることは可能です。
マイクロラーニングとしてコンテンツを活用することで、講師の拘束時間や外注費などが削減されます。また、会場を手配している場合はレンタル費用も抑えることができるのです。
学習の進捗状況を把握・管理できる
時間が短いことで学習者のハードルが下がります。それに伴い、モチベーションが維持しやすい環境になり、少しずつですが確実に育成が進みます。また、コンテンツを学習管理システム化(LMS-LearningManegementSystem)すると管理者の運用がスムーズになります。学習者の進捗状況をシステム上で確認し、個別にフォローするなど、コミュニケーションも促進されます。
LMSは、教材・学習進捗・理解度などを運用する上で必要な情報を管理できます。専門の会社に外注することになりますが、学習者数が多かったり、運用に明るくない場合は加入したほうがよろしいかと思います。
コンテンツを共有でき、財産になる
マイクロラーニングのコンテンツは一度作れば長期間活用できる財産になります。 また、他業務と差別化された教育システムとして集約されていれば、担当者が変わっても内容の漏れがなく、同じ内容を同じように運用できます。見直しや修正も根幹からぶれることなく、最小限の手間とコストでメンテナンスすることができるのです。
制作のハードルが低い
新たに教材を制作するとしても、短時間なので取り組みやすいと言うメリットがあります。ぶれない軸としっかりした構成があれば、完成したコンテンツから順次運用スタートできる、取り掛かりやすい場合もあるでしょう。従来のeラーニング形式のような60分程度のコンテンツを作るのとでは、制作側のハードルがぐっと下がります。
内容の統一化、講師の質による理解や進捗の差が減少
どうしても、講師によって内容や進め方、伝え方にばらつきがあるものです。その点、マイクロラーニングの共通コンテンツを使用すると、学習者の理解にばらつきが少なくなります。
以上5つのメリットを書きましたが、注意点も述べておきます。
業種や内容によって、マイクロコンテンツが不向きな場合もあります。学習者が思案しなければいけないようなもの、読解に時間がかかるもの、論理的思考が必要なものなどは応用が難しいでしょう。さらに、受講者のやる気と集中力が著しく向上している場合、短時間でのプログラムはかえって肩透かしをくらったような気持ちになるでしょう。マイクロという名前の通り、細かい単位で分解できるコンテンツが向いているといえます。
学習者のメリット3つ
優先順位がつけやすく、フレキシブルに時間を活用できる
ビジネス書「7つの習慣」(スティーブン・R・コヴィー著 キングベアー出版)の第三の習慣~大きな石を入れるという理論が有名です。
“自分がやりたいこと・重要事項”を優先してスケジュールに組み込み、それ以外の時間に“やるべきこと”を組み立てていく、という人生を最大化できる時間の使い方です。マイクロラーニングは、あなたが本当にやりたいこと・重要なことを優先しながらも、“やるべきこと”を学習できる抜群のツールです。
短時間で反復すると習得が早く、定着しやすい
学生の頃、英単語を繰り返して覚えたように、反復によって学習が定着し、深まっていきます。短時間だからこそ繰り返すことが可能なのです。もちろん、長時間のコンテンツも繰り返して学習することは可能ですが、短時間の方が心理的ハードルは低いのではないでしょうか。
自由な場所で学習できる
ネットさえつながれば仕事ができると、若者が都会から田舎に移住したという話がTVで取り上げられるようになりました。マイクロラーニングも同様で、ネット環境があればどこでも学習することが可能です。学習提供者・講師から離れていても自分の采配で勉強ができます。
以上、学習者にとってのメリットを3つ述べました。
この学習方法が注目されるようになって間もないため、長期的な効果についてはまだ研究が進んでいないようです。しかし、しっかりとコンテンツを取り入れ、自分の知識と統合させることによって、学習効果は無限大だと推定します。
マイクロラーニングが活用できる場面
コンテンツが5分前後とすると、生活の中にどれだけ当てはめることができるでしょうか?社会人・学生どちらにも様々なシーンが考えられます。社会人の場合、電車での移動中、始業前、アポイントまでの空き時間、ランチの待ち時間、休憩中、思考を変えたいとき、お風呂の後、寝る前の自由時間など。
学生の場合は、社会人になる準備としても活用できそうです。具体的な活用シーンとしては①新入社員教育②管理職研修③技術・スキルの継承④語学学習⑤試験対策での要点確認⑥趣味における知識獲得、など。
活用シーンをイメージできたでしょうか?筆者自身もYouTubeを繰り返し閲覧して学習しています。動画が長いと欲しい情報にたどり着くまで時間がかかり、ちょっとしたストレスを感じます。このような時に希望するのは、コンテンツ名が明確で、困っていることがすぐに解決できるイメージが持てるものであってほしい、ということです。長すぎず、簡潔にまとめられたコンテンツで構成されたチャンネルなら、即チャンネル登録してしまいます!筆者自身のちょっとした事例でしたが、YouTubeも立派なマイクロラーニングのコンテンツですね。
マイクロラーニングはどう作る?
先にも述べましたが、マイクロラーニングのコンテンツ形式は、テキスト・音声・動画など一様ではありません。しかし、5Gというワードをよく聞くことからも、今以上に動画が生活の中に浸透していくでしょう。
ということで、動画でのコンテンツ作成をメインにご紹介させていただきます。基本的な流れは使用ツールが違っても1から5まで同様です。まとめにモチベーションが上がる名言がありますので、どうぞ最後までお読みください。
次のような流れで進めていきましょう。
- 学習の目的・ゴールの設定
- 学習対象者のリサーチ
- 全体的なカリキュラムの設計
- 学習項目の明確化
- シナリオ作成
- 制作
学習の目的・ゴールの設定
コンテンツ制作には明確な目標・ゴールの設定が必要です。ゆるぎない柱がなければ、コンテンツ制作自体が路頭に迷う可能性があります。予算を無駄にしないためにも、時間をかけてしっかりと話し合い、設定することが大切です。
5W1H(Who・When・Where・What・Why・How)の考えで整理するのはいかがでしょう。
- Who(誰が?)…誰が学習対象者なのか?
- When(いつ?)…いつから運用するのか?いつまで作り終えるのか?
- Where(どこで?)…対象者はどこで学習すると想定されるか?
- What(何を?)…学習者が得られる知識やスキルは何?
- Why(なぜ?)…なぜコンテンツを作るのか?会社にとってどう役立つのか?
- How(どうやって)…どうやって利用するのか?
現状と学習対象者のリサーチ
提供者が現状と学習者をしっかりと把握する必要があります。現場ではどのような問題があるのか?どんなことに困っているのか?学習の必要性を感じているのか?適切な環境か?など多方面からの考察が必要です。直接ヒアリングしてみることも効果的です。リサーチすることで、コンテンツ制作の大きなヒントになるでしょうし、ないがしろにできない部分です。
全体的なカリキュラムの設計
コンテンツの骨組みづくりをします。目的を果たすために大枠を設計し、これに続き細かいコンテンツ制作が進みます。制作作業を進めるための羅針盤となりますし、学習者にとっては目次のような役割になります。制作中は特に閲覧しやすい場所に設置し、随時確認しながら進行します。
学習項目の明確化
設計の後に細分化します。それぞれのコンテンツごと、わかりやすい題名を付けます。マイクロコンテンツなので、かなり細かい分類になるでしょう。それぞれのコンテンツごとにもゴールを設定します。制作フローを作ると時間が有効に使えるでしょう。
シナリオ作成
シナリオには共通の型を使用すると効率的です。お勧めするのはPREP法で、情報伝達の上で周知の方法です。
- P…Point→結論
- R…Reason→その結論になる理由
- E…Example→具体例・事例
- P…Point→再度結論(要約まとめ)
この流れでノウハウ・情報をまとめていきましょう。
結論が明確に伝えられて、説得力が増す方法です。また制作スタッフが多い場合や、ビジュアルに変化をつけたい場合などは簡単な絵コンテでイメージを共有する方法もあります。
制作
シナリオを元に取り掛かります。制作時の環境により、方法はたくさんあると思いますが、お勧めの方法はZoom(Web会議システム)とパワーポイントを使う方法です。
- パワーポイントで文字情報を作成
- Zoomにアクセスし、レコーディング機能で講座を撮影
- パワーポイントを画面共有しながら、音声情報として口頭でコンテンツを説明
- データをダウンロードし、カット・トリミング・編集する
- 必要に応じてテロップを入れる(パワーポイントでの情報に不足がある場合など)
- 複数のスタッフで確認して完成
- 完成したコンテンツデータは構成ごと分類して格納する
ビデオカメラで撮影する方法もありますが、編集作業にある程度の知識や技術が必要です。そのことを考えると、上記の方法が効率良く、撮影にかかる時間やスタッフ数が少なくすませられるでしょう。また、講師役もパワーポイントというカンペがあるので落ち着いて話せるのもメリットです。制作にかかわる部分は、予算があれば外注するのもひとつの手です。時間に迫られている場合や制作できるスタッフがいない場合は検討してください。
また、コンテンツが細かい分、多大な数量のコンテンツを管理することになります。提供者側、学習者共にコンテンツの使用方法をしっかりと確認して運用する必要があります。
コンテンツを高度に運用したい場合はLMS運用会社への依頼を検討しましょう。複数ありますので、数社見積もりを取り、検討してみてはいかがでしょう。ほとんどの場合、運用だけでなく制作段階から相談に乗ってもらえるようですので、まるごとお任せしてしまう場合もあるかもしれません。予算は勉強者の人数によって変わります。月数万円から100万円単位まで必要となる場合もあります。すでにたくさんの企業や大学で利用されています。
まとめ
あなたにとって、知識を取り入れることはどんな意味がありますか?
- 知識を習得した喜びを味わいたい
- 知識をお金に変えたい(仕事等)
- 知識で生活を良くしたい
など、様々な意味があると思います。また、考えたこともないという人もいるでしょう。マイクロラーニングは注目されて間もない学習方法ですが、今の時代に合った柔軟な手法ですので、あなたの学びを後押しするツールになるでしょう。
最後に、あなたの更なる成長を祈ってマイクロラーニングにぴったりの名言をご紹介します。
「小さいことを積み重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道だ」イチロー(イチロー262のメッセージ ぴあ)
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