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基礎からわかるデザイン思考!マーケティングへの活用方法も解説!

カラフルな紙で作られた電球
情報やモノが溢れかえる現代において、ヒット商品を生み出すということは困難を極めます。消費者が現状でも充分なほど満足しているので、新しいものを受け入れられる必要が無くなってしまったのです。 そんな現代にフィットした考え方として、「デザイン思考」という言葉が良く聞かれるようになりました。事実、デザイン思考を上手く使用すれば、現代人が持つニーズを深く把握し、本当にユーザーが求めている商品を生み出せる可能性が高いです。
今回はそんなデザイン思考について、基本的な概要から実際のステップ、成功事例まで紹介しています。是非ご覧ください。

デザイン思考とは

付箋と鉛筆を持つ手

デザイン思考とは、デザイナーをはじめとしたクリエイターが持つ思考方法や仕事のプロセスを基に、ビジネスにおいて現状知りえないような課題や問題点を洗い出し、最も有効な解決方法を考える思考方法です。

日本において「デザイン」というは、「設計」や「意匠」という意味で使用されることが多いですが、デザイン思考における「デザイン」という言葉は、さらに広義的な「創意工夫」を意味しています。

アメリカのデザインコンサルティング会社である「IDEO」が体系化した思考方法であり、モノが溢れ、人々が本当に欲しいものにしか興味を持たなくなった現代にフィットした考え方です。

デザイン思考の重要なステップ

階段を登る女性

デザイン思考は、5つの重要なステップによって構成されています。ステップといっても、必ず段階的に行われるわけではありません。複数のステップが同時に行われたり、あるステップを繰り返し行うこともあるのです。課題解決のために、5つの重要なステップを効果的に行うことが、デザイン思考では重要になってきます。

デザイン思考における5つの重要なステップは以下の通りです。

  1. 共感
  2. 問題提起
  3. アイデア創出
  4. 試作
  5. テスト

詳しく見ていきましょう。

1.共感

1つ目のステップは共感になります。

デザイン思考では、あくまでユーザーの視点でニーズを捉えることが重要です。まずは、ターゲットを絞り、商品やサービスを使用するユーザーを絞り込んだ上で、ユーザー視点でのニーズを考えていきます。

共感のステップを効果的にするコツは、開発側の考えを徹底的に排除することです。

ついつい開発側の視点で「こうした方が売れるだろう」と考えてしまう部分も出てきてしまうのですが、そういった部分についても冷静になり、ユーザー目線での考えを徹底することが大切になってきます。

ユーザーの思考を深堀し、ユーザー自身も気が付いていないような潜在的なニーズまで考えることが出来れば、他のステップを効果的に行うことができるでしょう。

2.問題提起

共感のステップで考えたユーザー目線の潜在的なニーズを基に、問題点や課題点を明確化していきます。

問題提起をしっかりと行うことで、後述のステップで生み出されるものの完成度が変わってくるので、しっかりと行いたいステップです。

問題点や課題点を明確化した結果、そもそも想定していたユーザーが間違っているという結論に至ることもあり、そういった場合は再度共感をやり直す必要があります。

共感と問題提起を繰り返し行うことで、チーム全員の認識を統一した上で、明確なゴールを定めることが可能です。

3.アイデア創出

アイデア創出は、共感と問題提起のステップで明確化された問題点や課題点をクリアするアイデアを考えるステップです。

基本的には、ブレインストーミングと呼ばれる会議手法を利用し、肯定的な思考で会議を行っていきます。アイデアをなるべく多く提示することが重要で、実現でできるかどうかは加味せずに、なるべく具体的なアイデアを出すようにしましょう。

基本的に、今後の試作段階でアイデアの良し悪しは分かるので、発散されたアイデアに対しては、たとえ粗野に感じた場合でもポジティブに捉えることが大切です。

4.試作

アイデア創出のステップで出たアイデアを基に、試作を行っていきます。試作をすることでより具体的に概要が見えてくるので、必要のない部分や、より大きな効果を生み出すための改善策などを明確化することが可能です。

試作で行き詰まったら再度アイデア創出のステップを行い、トライ&エラーによってプロトタイプの完成度を高めていきます。

5.テスト

試作が練り上がったら、ターゲットに向けて検証・改善を繰り返し、最終的なゴールを目指します。

ユーザーからは様々なフィードバックが返ってきますが、中には重要ではないことも含まれている可能性があるので、優先順位を付けて検証し、ブラッシュアップしていくことが重要です。検証・改善を徹底的に行うことで、最終的なゴールにたどり着くことができます。

以上のように、デザイン思考では共感からテストまでのステップを経ることで、新たなビジネスモデルを創出していくことになるわけです。

デザイン思考の重要なフレームワーク

太陽を手のフレームに収める様子

昨今では、デザイン思考を行う上で活用できるフレームワークがいくつか生み出されています。

フレームワークを使用することで、思考やプロセスを可視化することができ、より効率的な事業構築が可能です。詳しく見ていきましょう。

エンパシーマップ

エンパシーマップは、ユーザーの感情や行動などを図式化することで、ニーズを明確化することができるフレームワークです。ユーザーの思考や行動を客観的に眺めることができるので、メンバー全員のイメージを統一化することができます。

MVPキャンバス

「MVPキャンバス」は、仮説・テストのステップにおいて有用なフレームワークです。MVPとは「Minimum Viable Product」の略で、「最小限の機能を持った商品」を意味します。

本格的にテストを行う前に、アイデア創出のステップで生まれたアイデアを用いたMVPを使用して検証を行うことで、検証時間や費用的なコストを削減する事が可能です。

「MVPキャンバス」では、MVPによって何を検証し、どのようなデータを明確化するために使用されるフレームワークで、MVPによる検証をサポートしてくれます。

事業環境マップ

「事業環境マップ」を使用することで、自社の商品やサービスを取り巻く外部環境を把握することができます。

デザイン思考でプロダクトを考える際の市場のニーズを捉えるのに活用できるほか、リリース後における外部環境の変化を図式化することもできるため、リリース後に再度検証を行いたい場合にも有用です。

デザイン思考をマーケティングに活用するには

茶色いボードに書き込む男性

デザイン思考はプロダクトだけでなく、広報やマーケティングとも親和性が高いです。

特に、共感ステップの思考方法は重要で、顧客に嫌悪感を与えずにマーケティング対象の魅了を伝えるためには、ユーザー目線で潜在的なニーズを考える必要があります。

顧客がどのような目線でマーケティング対象を見ているのかを考え(共感)、現状の問題点を明確化し(問題提起)、問題解消のためのアイデアを考え(アイデア創出)、試作・検証を繰り返すことで、より効果的なマーケティングが可能になるはずです。

デザイン思考を活用した成功事例

ノートパソコンの前でガッツポーズする男性

デザイン思考について分かったところで、実際にデザイン思考を活用して成功した事例を紹介していきます。

デザイン思考は多くのクリエイティブな製品やサービスの開発で活用されており、事実デザイン思考を有効に活用した企業では、革新的な大ヒット商品が生み出されているのです。詳しく見ていきましょう。

iPod【Apple】

デザイン思考によって生み出された商品として最も代表的なものが、Apple社が開発した「iPod」です。

共感のステップにおいて、競合他社の分析とユーザーがどのように音楽を聴いているのかを徹底的に観察することで、MP3プレーヤーを使用しているユーザーの多くが、パソコンでCDから音楽データを吸い出し、プレーヤーに移すことが手間であると感じていることが分かりました。

さらに、聞きたい音楽は場面や気分によって頻繁に変化するということも分かり、ユーザーのニーズから、「アーティスト」ごとに整理されたUIやマウスのように操作できるスクロールホイール、iTunesの自動同期システムが開発されたのです。

「iPod」はわずか11か月の開発期間でローンチされましたが、その間に100例以上の試作品が開発され、検証・改善が行われてきました。徹底的にユーザーに寄り添った結果大ヒットに至った、デザイン思考の成功例といえるでしょう。

Keep the Change Program【バンク・オブ・アメリカ】

アメリカの銀行であるバンク・オブ・アメリカでも、デザイン思考を使用して革新的なシステムを生み出しています。

当時、バンク・オブ・アメリカは、デザイン思考を体系化した企業であるIDEOをコンサルタントに迎え、変化の少ない金融業界に革新的なサービスで一石を投じようとしていました。

IDEOは共感のステップにおいて全米の様々な世帯を観察し、ニーズを追求しました、結果、「家計を管理しているのは多くの場合母親である」ことと「家計簿を付ける際に端数を切り上げている」ことが分かりました。端数を切り上げることにより、計算を楽にするだけでなく、想定外の支出をカバーしていたのです。

バンク・オブ・アメリカとIDEOは、上記の家計簿の付け方からヒントを得て、「口座に紐づいたデビットカードを使用すると支払額の引き落としが端数を切り上げて行われ、差額分は自動的に貯金される」というサービスを生み出しました。

「Keep the Change Program」と名づけられた上記のシステムは結果的に大成功し、最終的には新規顧客の60%がこのプログラムに登録するに至り、さらに預金額は20億ドルにも達したのです。金融業界の常識を基に考えず、あくまでユーザー目線でサービスを考えたことで生まれた、革新的なシステムといえます。

金の食パン【セブン&アイ・ホールディングス】

日本でも、デザイン思考を取り入れた成功例が存在します。「金の食パン」はセブンイレブンのプライベートブランドとして開発され、ヒットした商品です。

元々、食パンは大手パンメーカーの独壇場であり、プライベートブランドが進出するのは難しいと考えられていました。また、消費者の目線でも、日常的に食べる食パンに高級なものは必要ないと考えられていたのです。

しかし、「金の食パン」の開発メンバーは、ユーザーの潜在的なニーズに、高品質な商品を求める流れが生まれ始めていると考え、品質にこだわった高級食パンの販売に踏み切りました。

結果的に「金の食パン」はヒットし、セブンイレブンのプライベートブランドの価値をさらに向上させたわけです。現在でこそ高級な食パンはブームになっていますが、「金の食パン」の発売はブーム到来よりもかなり前の事であり、ブームの先駆けになったといっても過言ではないでしょう。

表面的にユーザー目線を捉えるだけでなく、潜在的なニーズについても深堀して考えた結果、ヒット商品が生み出された高齢であるといえるでしょう。

デザイン思考を取り入れる前に読んでおきたい書籍やサイト

最後に、デザイン思考を取り入れる前に読んでおきたい書籍やサイトを紹介します。

デザイン思考の導入はチーム単位での意識改革が必要になるので、導入前にしっかりと把握しておきましょう。

ティム・ブラウン【デザイン思考が世界を変える】

ティム・ブラウン【デザイン思考が世界を変える】

世の中にデザイン思考が広まるきっかけになった書籍であり、基本的な概念や、デザイン思考をビジネスに取り入れるということに考えついた背景などが記されています。デザイン思考に対する理解度をより深めるために、まず読んでおきたい書籍です。

小学館【まんがでわかるデザイン思考】

小学館【まんがでわかるデザイン思考】

デザイン思考についてストーリー形式で理解できる、入門としておすすめな一冊です。漫画を読む感覚でデザイン思考について理解することができるので、活字が苦手という人にも良いでしょう。

デザイン思考で仕事をするとどのようになるのかを簡単にイメージできる、チームへの共有にも便利な一冊となっています。

まとめ

ひらめきが手のひらの中にある様子

デザイン思考の概要や使いやすいフレームワーク、具体的な成功事例などを紹介してきました。

デザイン思考が身に付くと今回紹介したステップを自由に行き来できるようになり、より宣戦されたプロダクトを行うことができるようになります。成功事例を参考にしつつ、今までの考え方に囚われずに、あくまで顧客視点になることが重要です。

モノが溢れた現在では、ヒット商品を生み出すのがどんどん難しくなってきています。デザイン思考でユーザーのニーズを針のように捉え、ピンポイントに刺さるようなプロダクトを生み出しましょう。

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